HTC児島社長が語るVR事業の方針、モバイルVRに今から布石

インタビュー

2017/10/27 18:01

 HTCの新たな事業軸として著しい成長を遂げているのがVRだ。「HTC Vive」はPCゲームプラットフォームSteamで約60%のシェアを占め、業界の牽引役になっている。この夏にはモバイルVRヘッドセット「HTC LINK」を発売し、VRのさらなる普及に向けて積極的に動いている。

取材/道越一郎 BCNチーフエグゼクティブアナリスト
文/大蔵 大輔、写真/松嶋 優子

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HTCの児島全克社長

道越 AR/VR事業は世界的にみても成長しつつあります。HTCはヘッドセットで大きなシェアを誇っていますが、直近の方針を教えてください。

児島 VRはデバイス以上に流通するコンテンツやソリューションが非常に重要です。ゲームだけが可能性ではありません。現在、開発者セミナーを順次開催しており、開発者やアプリケーションベンダーとともに、VRによってどのようなビジネスができるか模索しているところです。本当の意味で“使える”ものにしていく土台をつくっているところです。

道越 Microsoftが音頭をとっているMRに対してはいかがですか。ASUS、Acer、HP、Dell、LenovoなどがWindows Mixed Realityヘッドセットを発表するなかで、HTCが入っていないのは意外でした。

児島 MRに対してもHTCではずいぶん前から事業に取り組んでいます。時期や商品はまだ決まっていませんが、いずれおもしろいデバイスをご紹介できると思いますよ。
 

「MRデバイスもいずれ」と語る児島社長

道越 以前、KDDIとのコラボレーションで複数人でVR空間を共有できる「Linked-door」という試みをされていました。VRマルチコミュニケーションという視点が未来的で期待をもったのですが、実用化はまだまだ先になりそうですか。

児島 決して遠い未来の話ということではないと思います。モバイルであれば通信機能は搭載していますし、技術的には十分に可能です。通信とVRの組み合わせは、今後さまざまなコンテンツが登場してくるでしょう。

道越 モバイルVRでも新端末を発表されました。「HTC Vive」は価格や設置のハードルが高いですが、「HTC LINK」は「Vive」の半額程度で、ワイヤレスで動き回れる点は魅力的ですね。
 

HTC LINK

児島 次世代移動通信の5Gが出てくると、より大きなデータをインストールしたり、ストリーミングで再生したりできるようになります。そうなるとAR/VRのコンテンツが続々と出てくるはずです。「LINK」については将来を見据えた布石として、通信×VRを中心に今からノウハウを蓄積していきます。
 

HTC U11

独自のインターフェースやAIを搭載する最新鋭機

 端末両側面の下部に感圧センサーを備え、グリップすることであらゆるアプリの操作ができる「エッジセンス」を搭載。ユーザーの利用履歴を学習する独自AI「センス・コンパニオン」など、最先端テクノロジーが凝縮している。付属のイヤホンは、ユーザーの耳に合わせて音域・音量を自動でカスタマイズできる
 
■プロフィール
児島全克

1985年モトローラでMCA/JSMR無線機、FLEXページャ、3G携帯を商品開発後、同社CTOオフィスにて世界初のJava搭載携帯、SUPL搭載携帯、UWB搭載携帯、日本初3Gスマホなどを発表。2006年HTC NIPPONに移籍し日本向けスマホの商品企画・開発に携わり日本初Androidスマホ、日本初4Gスマホなどをリリースする。2017年より代表取締役社長に就任(現職)
 
◇取材を終えて

 歴代製品にWorld's fi rstの文字がずらりと並ぶHTCは、年季の入ったモバイラーにとってあこがれの存在。90年代後半に登場したWindows CE搭載のPDA「Kangaroo」や、ミニPCとも言えるWindowsMobile搭載のスマートフォン「Universal」、最近ではデュアルカメラ搭載の「One M8」などなど。今なお激しくとんがり続けるHTCの次の一手に期待したい。(柳)