販売増が続く液晶ディスプレイ市場、シェア争いは混沌

 PC本体の不振が続くなか、液晶ディスプレイの売れ行きは拡大している。家電量販店・ネットショップの実売データを集計する「BCNランキング」によると、販売台数は3年前の2倍近くまで拡大しているのだ。需要増でシェア争いは混沌とした様相を呈しはじめた。


 まず、過去3年の月別の市場動向をみるため、2015年6月の販売台数を「1.00」とした指数を算出した(図1)。その結果、1、3、12月に販売が伸びる季節変動をみせつつも、月を追うごとに指数は上昇。17年12月には「2.40」を記録し、直近の18年6月では「1.78」となっている。また、販売台数と相関するように、画面サイズの大型化も進んだが、17年7月の平均値である25.19インチをピークに、その後は大きな変化は現われていない。平均画面サイズは25インチ前後で落ち着く状況にある。
 

 市場が好調に推移するなか、メーカーの激しいシェア争いが続いている。2年前の16年6月以降から上位メーカーの動きをみると、6社が10~20%前後でひしめき合っている(図2)。そのなかで、常にトップシェアを争っているのがIOデータ機器とBenQの2社。IOデータ機器は総合力と豊富なラインアップ、BenQは廉価モデルからゲーミング向けまでを取り揃えている強みがある。ただ、最近はIOデータ機器のトップが続いており頭一つ抜け出た存在となったが、後続勢の追い上げも激しい。日本エイサー、ASUS、LGエレクトロニクス、マウスコンピューターが上位をうかがう状況で、いつ形勢が逆転してもおかしくない。

 市場が活況を呈している要因には、液晶ディスプレイの拡張利用とテレビの代替利用があげられる。前者では、PCによる動画編集やゲーム人口の増大で、ノートPCにおける外付け利用やマルチモニタ利用が進みつつある可能性が高い。一方、後者ではデザイン性の向上や解像度の高い製品が増えてきたことから、テレビではなく、比較的安く手に入る液晶ディスプレイで、家庭用ゲーム機やメディアストリーミング端末(Amazon Fire TVやChromecastなど)を利用するケースも少なくないだろう。言い換えると、液晶ディスプレイはPCとの関係性は深いものの、PCとはかかわらない新たな活用が進みつつあることを示している。こうした点から、しばらくは安定した需要増が続く見通しだ。(BCNアナリスト 山口渉)


*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。