スマートハウスが本格化の兆し まずは節電の提案で商品を拡販

特集

2012/02/07 10:52

 太陽光発電システムや家庭用蓄電池、デジタル機器、EV(電気自動車)などを一括管理する「スマートハウス」が、本格化の兆しをみせている。北米では、「エコ」を観点にスマートハウスの普及が進んでいるが、日本はまだこれから。それでも、東日本大震災の影響で「節電」をキーワードに省エネ家電が普及するなど、ユーザーのスマートハウスへの関心が高まりつつある。

「CES 2012」で高い関心 積極的な展示が相次ぐ



 今年1月10~13日に米ラスベガスで開催された世界最大規模のコンシューマエレクトロニクスの祭典「2012 International CES(CES 2012)」。白物家電やパソコン、薄型テレビスマートフォンタブレット端末など、最新技術を駆使したありとあらゆるIT・デジタル機器を披露するイベントだ。今年は、個別の製品だけでなく、家庭内の家電やデジタル機器をつなげて快適な生活を実現する「スマートハウス」「スマートホーム」をアピールする出展が目立っていた。

 東芝は、家電やデジタル機器がつながることでライフスタイルがどのように進化するのかを大々的にアピール。「Life Design Box」というコントロールタワーを中核にして、ネットワークにつながった家電やデジタル機器を時間や環境に応じて制御する。基本的には省エネモードで稼働して、太陽光発電システムでつくり出した電気を自動で消費する。デモンストレーションは、来場者で埋め尽くされていた。

東芝は「CES 2012」で「スマートホーム」をデモンストレーション

 パナソニックでも、高効率発電システム「HIT」シリーズの太陽光発電パネルや、家庭用蓄電システムの試作品を展示。また、エネルギーをつくり出す「創エネ」、蓄電池による「蓄エネ」、電力利用のムダを省く「省エネ」をカバーしている強みを生かし、技術やアイデアを社会に広く提言する環境事業「グリーンライフイノベーション」のコンセプトを説明しながら、神奈川県藤沢市の藤沢サスティナブルスマートタウンでの実証実験を紹介した。

 韓国サムスン電子は、太陽光パネルやホームマネジメントシステムなどの展示に加え、洗濯機をスマートフォンやタブレット端末でコントロールするデモンストレーションを実施。主力の「スマートテレビ」を中心としたデジタル機器同士の連携はもちろんだが、エコ関連製品の展示にも力を注いでいた。中国ハイアールは、テレビを前面に押し出した展示で「クラウド・リビング」というコンセプトを掲げ、テレビが家電やデジタル機器を制御する中核機器になると訴えていた。

ハイアールは「クラウド・リビング」をコンセプトにテレビを前面に出しながら家電を訴求

サムスンはスマートフォンで洗濯機を操作できることをアピール

 昨年10月のIT・エレクトロニクスの総合展「CEATEC Japan 2011」でも、日本メーカーを中心として「スマートハウス」をアピールする企業は多かった。エネルギーを賢く制御し、デジタル機器がつながることによる快適な暮らしを実現する「スマートハウス」のムーブメントは、着実に広がりつつある。

エコ家電+エネルギーシステム 家電量販店は組み合わせ提案



 家電量販店でも、「スマートハウス」への取り組みが進みつつある。その最たるものとして大きな話題を呼んだのは、ヤマダ電機による住宅メーカーのエス・バイ・エルの買収だ。昨年10月に、TOB(株式公開買い付け)が完了したことに伴って、「創エネ・省エネ・蓄エネ」という三つのエコを実現する「SMART HOUSING」の全国展開に着手した。現段階では、毎週全国で配布する3000万部のチラシでのアピールにとどまっているが、近い将来、ヤマダ電機の店舗敷地内にモデルハウスを設置し、取り組みを本格化する。グループ全体のスマートハウス関連事業の売上高は、初年度にあたる今年度(2012年3月期)は880億円、5年後の14年度(15年3月期)には3140億円を見込んでいる。

 ほかの家電量販店も、「節電」「エコ」を切り口に、太陽光発電システムや家庭用蓄電池、エコ家電などを組み合わせたかたちでの販売に積極的だ。「スマートハウス」そのものを売るまではいかないが、消費電力を節減する「スマートハウス」的な家を目指しているわけだ。

 日本では、家電や自動車、住宅メーカーなど約680社が、太陽光発電など自然エネルギーの電力を効率よく配分したり、自動的に節電したりする「HEMS(家庭内エネルギー管理システム)」と、家電やデジタル機器の接続方式の統一で合意。今年夏には、対応する製品群を発売する予定だ。「スマートハウス」が、現実のものになろうとしている。(佐相彰彦)

※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2012年2月6日付 vol.1418より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは