「行動支援ポータル」を目指す――中嶋新社長が語る「goo」の戦略とは

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2008/08/20 20:18

 ユーザー獲得に向け激しい競争が続くインターネットのポータルサイト。そんななか、ポータルサイト「goo」を運営するNTTレゾナントは検索サービスを軸に新たな取り組みに乗り出している。「goo」は、月間12億ページビューを誇る国内第2位のポータルサイト。NTTレゾナントでは今後、どのような戦略で利用者の拡大を図っていくのか。今年6月に就任した中嶋孝夫新社長に聴いた。


●「行動支援」を核にサービスを展開

 ――新社長として今後、「goo」でどんな事業戦略を展開していくのか

「今、インターネットは作り手ではなく、ユーザーが作る時代になっている。いかにユーザーに良いサービスを提供するかが重要だ。そのなかで当社は『行動支援ポータル』という考えをサービスの核にしている。これはユーザーの情報行動、コミュニケーションを支援するサービスのこと。どんなに技術が進化しても人が持つ知識を伝えるとはできない。また、今は昔のように家族が集まっていろんなことを相談したり、年配の人から教えてもらうことが少なくなった。そうした個人個人が持つ知識を集めた“集合知”を提供することはネットなら可能だ。ここを主力にサービスを展開し、他のポータルと差異化を図りたいと思っている」


中嶋社長が言う「集合知」を具体化しているのが00年から提供しているコミュニティサービス「教えて!goo」だ。これは生活のなかでのちょっとした疑問や、1人で解決できなかった悩みなどの質問と、その回答を参加するユーザー同士がやり取りするなどして解決するサービス。解決した質問はサイトに蓄積されて、ユーザーがいつでも検索・閲覧することができる。


 ――「教えて!goo」の特徴は

「私は『検索』とは『解決すること』だと思っている。『教えて!goo』はユーザー1人ひとりが持っている知識や経験値でお互いの問題を解決するサービス。だから“究極の検索”と言えるだろう。他のサイトも同じようなサービスを行っているが、当社のサービスは質問総数が350万件以上もあり、ユーザーの満足度も88%と非常に高い。利用も確実に伸びている」

●ブログの客観評価サービスで他社との差異化を図る

一方、「コミュニケーション」で力を入れているのがブログだ。ただ、ブログサービスはポータルサイトを運営する競合他社も提供しており、違いを打ち出しにくい。そこで、NTTレゾナントでは独自の取り組みを始めた。ユーザーが自分のブログの特徴を客観的に見ることができる「ブログ通信簿」がそれだ。


これはブログの記事から性別や年齢を推定し、「主張度」「気楽度」「マメ度」「影響度」を5段階で表示するサービス。「主張度」は個人の考え、「気楽度」は記事中の肯定表現、「マメ度」は更新頻度、「影響度」はリンクがそれぞれ高いほど数字が大きくなる。今年7月から実験で開始した。

 ――「ブログ通信簿」を始めた狙いは

「ブログを作っている人やこれからしようと思っている人の手助けになることを考えて始めたサービスだ。開始後の1週間で50万人以上が利用しており、手応えを感じている。サービスに対しても『良かった』『嬉しい』といったユーザーの感想が寄せられおり、反応も上々だ。当社としてはこうしたサービスを通じてユーザーがネット上でよりよいコミュニケーションができるように支援していきたいと思っている」

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●ケータイだけでなく、あらゆる情報端末でサービスを提供

 ――収益面での見通しは

 「基本は広告だ。ただ、広告自体も従来のバナーや検索連動型から変化していく時期にあると思っている。今後は動画を使った広告が増えていくだろう。そのなかで、当社は行動支援サービスと組み合わせて、例えば消費者が求める情報に沿った広告を展開することができる。また、顧客の意図を知りたい企業にマーケティングの場を提供することも可能だ。NTTレゾナントはNTTグループではネットビジネスで新たな収益機会を生み出すのがミッションで、こうした自社の特長を生かして広告で一定のシェアを取るつもりだ」

 ――PC以外でのサービス展開は

「身近で最も利用されているケータイは、当社の行動支援サービスが非常に有効な機器だと思っていて、今後は力を入れていく。『教えて!goo』などのサービスはもちろん、ケータイで撮った写真をPCのサイトにアップして共有し、PC、ケータイで見るといったPCとケータイの連動サービスや、落ち込んでいる時に『元気をつけたい』と検索すると自分がいる場所の近くで上映している、ノリのいい映画を紹介するなどといったケータイ独自のサービスも考えている」

 ――7月にはNTTドコモが第三者割当増資で出資したが、ケータイ向けサービスはドコモだけに提供するのか

「NTTドコモは当社の株主となったが、ケータイ向けのサービスはドコモだけに提供するというわけではない。当社のサービスを多くのユーザーに使ってもらうことが重要だ。そういう意味では要望があれば、ドコモ以外の企業にも提供するつもりだ。また、ケータイだけでなくあらゆる情報端末でサービス利用できるようにしたいと考えている」

●数年後には海外向けのサービス展開も視野に

 ――今後どんなサービスを考えているのか

「『新しい結合』がキーワードになる。これは、すでにあるインターネットのサービスとサービスが結びついて新たなサービスを生み出していくといことだ。具体的なものはまだないが、発明しなくてもタネはたくさんあり、それを発掘しなければならないと思っている。一方で、我々はNTTが開発した他社にはない、極めて精度の高い日本語の分析技術を持っている。『ブログ通信簿』でも利用している。今後もこの技術を核に日本語にこだわってユーザーに役立つサービスを開発していくつもりだ」

「今、インターネットビジネスは踊り場にある。しかし、否定的な意味ではなく、次のステージに移る“助走”の段階ということだ。そういう意味では当社も今はまだ仕込みの時期だが、3-5年後には海外向けにもサービスを展開したいと考えている。その際、欧米のサービスで良いものがあればジョイントもする。日本企業の海外進出が加速するなかで、現地社員で日本に関心を持つ人が増えており、「goo」はそうした人たちが日本を知る入り口になっている。だから、海外でも支持される素地はあると思っている」(BCN・米山淳)