「MacBook Air」や「EeePC」が採用する記憶装置「SSD」とは?

特集

2008/02/15 16:50

 HDDに代わる新たな記憶装置としてフラッシュメモリを使ったSSD(Solid State Drive)に注目が集まっている。最近ではASUSTeK Computerの「EeePC」が4GBのSSDを採用し、アップルの薄型ノートPC「MacBook Air」でもSSDを搭載したモデルが選べるなど身近になってきた。そこで注目のSSDについてその特徴をまとめつつ、「BCNランキング」で最新の売れ筋を調べた。

●「OSの起動が早い」「壊れにくい」など、多くのメリット

 SSDはHDDと同じような記憶装置……といっても、その中身はまったく異なる。HDDの中には、データを記録する磁気ディスクやデータの読み書きを行うヘッドといった部品が入っており、それぞれをモーターで動かして情報をやり取りする。しかしSSDはデータを保存する半導体、フラッシュメモリが入っているだけ。データの読み書きにモーターやディスクといった物理的な仕掛けは必要ない。

 SSDの最大のメリットはスピード。HDDのようにディスクやヘッドを動かす必要がないので、データ読み込みの速度が速い。つまりOSやソフトの起動が高速になるのだ。また機械的な構造を持たないことで振動や衝撃に強く、故障しにくいことも大きな利点。さらに消費電力も小さい。一般的なHDDの消費電力はおおよそ30W(ワット)前後だが、SSDなら2W程で動かせる。

 そのほか、HDDの速度低下の原因ともなるデータの断片化が起きないのでデフラグ作業も不要。SSDは小型化が容易であり、消費電力が小さいこととあわせて、ノートPC向きの記憶装置だといえる。

 もちろんデメリットもある。中でも容量という点ではSSDはHDDに遠く及ばない。現在一般に流通しているSSDの容量は最大でも64GB、一方のHDDは1TB(1000GB)のモデルがある。また価格も、メーカーによって差はあるが、ノートPCのHDDと同じ大きさの2.5インチ、容量32GBのSSDで2万円から8万円前後のものまであり、非常に高価だ。

 またSSDは、フラッシュメモリの特性上、データを書き込む速度の方は「読み込み速度」ほど早くない。容量が大きくても、1つのファイルならそれほど速度に差はないが、OSの書き込みなど、細かいファイルを大量に書き込む場合にはHDDよりも時間がかかってしまう場合もある。


●売れ筋は2.5インチ、32GBモデル――ノートPCの内蔵HDD交換用で

 現在、各メーカーから発売されているSSDは、1GBから最大64GBまでのモデル。サイズ別では、デスクトップPCで使用されるHDDと同じ大きさの3.5インチ、一般のノートPCで使われる2.5インチ、小型のモバイルノートPCで使われる1.8インチと大きく分けて3種類だ。

 秋葉原のPCパーツ専門店「TSUKUMO eX.」では、「ビジネス用途やインターネット用途のノートPCなら容量32GBのSSDでも十分ということもあり、ノートPCの内蔵HDDを交換するために購入していくユーザーが多い」(高崎敬士 TSUKUMO eX. 副主任)という。また自作PCユーザーなどは、読み込み速度の早さという特徴を生かしてOSやソフトのみを保存する専用ドライブとして購入しているようだ。

 PCの自作などとは無縁の一般ユーザーにとって、SSDは容量も少なく価格も高い。しかし「HDDの進化と同じくSSDの進化も時間の問題。数年で容量が増えて価格も下がってくる。まずはノートPCの小型HDDから置き換えが進んでいくのではないか」(同)とみられている。

 それでは、SSDの売れ筋をみてみよう。1月のランキングでは、11製品中8製品が32GBモデル。高価ながら容量の大きいモデルに人気がある。サイズ別ではノートPC向けの2.5インチのモデルが6製品と最も多かった。


 1位を獲得したのは、SAMSUNGの「MCBOE32G8APR-0XA」で販売台数シェアは20.2%。容量は32GB、PCとはIDEで接続する。サイズは1.8インチ。2位と3位にはMtronの容量32GBのSSDが入った。2位「MSD-S3025032NA」は2.5インチ、3位の「MSD-S3035032NA」は3.5インチだ。PCとの接続はシリアルATAで行う。


 普及はまだまだこれからのSSDだが、データの転送速度や省電力性には大きな魅力がある。自分のPCをサクサク動かしたい、ノートPCのバッテリ持続時間を延ばしたいというユーザーはちょっと(?)出費を我慢してHDDからSSDに乗り換えてみてはどうだろうか。(BCN・岡本浩一)

*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など24社・2300を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで119品目を対象としています。