「全部入り」が人気のノートPC、秋冬モデルの売れ筋を探る

特集

2005/12/13 01:45

 一口にノートPCと言っても種類はさまざま。今年に入って勢いを増してきたAV機能満載のハイスペック大型ノートや安価ながらきっちりとまとまったエントリーモデル、さらに、携帯性に一層磨きがかかったモバイルノートなど、バリエーションがずいぶんと広がってきた。そのノートPCも、そろそろ秋冬モデルの趨勢が判明してくるころ。そこで、「BCNランキング」に見る年末商戦序盤のノートPC売れ筋動向をまとめた。

 一口にノートPCと言っても種類はさまざま。今年に入って勢いを増してきたAV機能満載のハイスペック大型ノートや安価ながらきっちりとまとまったエントリーモデル、さらに、携帯性に一層磨きがかかったモバイルノートなど、バリエーションがずいぶんと広がってきた。そのノートPCも、そろそろ秋冬モデルの趨勢が判明してくるころ。そこで、「BCNランキング」に見る年末商戦序盤のノートPC売れ筋動向をまとめた。

●1位NECと2位富士通、スペックの差はわずかでもシェアでは大差

 年末商戦序盤の11月、「BCNランキング」で集計したノートPCの機種別・メーカー別の販売台数シェアでは、まず機種別の1位がNEC「LaVie L LL750/DD」で販売台数シェアは11.2%、2位が富士通「FMV-BIBLO(NB50M)」で5.8%、3位が東芝「dynabook TX TX650LS」で4.6%という結果になった。いずれも店頭価格で15万円を切るレベルのマシンだ。

 これら3機種は発売直後の9月時点で差はほとんどなかったものの、以後徐々に差が開き、11月現在、1位と2位ではほぼダブルスコアの大差がついている。しかし、上位2機種間ではスペック的に極端な差はない。いずれもCPUはCeleron M 1.40GHzで標準メモリは512MB。ディスプレイサイズが15型、光学式ドライブはDVDマルチドライブのDVD-R/+R 2層書き込み対応。フロッピーディスクドライブを内蔵している点も共通している。



 違いと言えば、「LaVie L LL750/DD」が、100GBのHDDを搭載して「FMV-BIBLO NB50M」の80GBより20GB大きく、さらに無線LAN機能を搭載している、ということぐらいだ。機能の差を反映して、価格はNECの「LaVie L LL750/DD」のほうが若干高め。特にNECのマシンのほうがお得感が強いというわけでもない。また、店頭で2台の画面を見比べても、NECのほうが若干鮮やかに見えるものの、決定的な差があるとは言いがたい。にもかかわらず、なぜこれだけの差になっているのかが気になるところだ。



●人気の秘密は、バランスよく一通りそろっているという「全部入り」感覚

 これについてNECでは「お客様のニーズにマッチしたマシンを安価に提供できていることが大きい。NECブランドの安心感や、サポートが好評なことも要因」(広報部)と分析している。実際に店頭やカタログでも雑誌「日経パソコン」で2回連続「サポートランキング総合No.1」を獲得した、という実績を前面に出してアピール。安心感の醸成にも成功しているようだ。

 販売店では「LaVie L LL750/DDは、バランスがいいマシン。フロッピーディスク、光学マルチドライブ、メモリカードスロット、無線LANと、とりあえず必要になりそうなものはすべてそろっている。それでいて価格もこなれてきた。初心者だけでなく幅広い層に人気があり、勧めやすい機種」との声が聞かれた。ハードウェアを一切買い足さなくても、一般的な利用には十分なマシン、というところが売れている要因と言そうだ。

 3位の東芝「dynabook TX TX650LS」もほぼ同スペック。しかし、フロッピーディスクドライブは内蔵ではなく、USB接続のものが標準で付属する。上位3機種の中だけで比べると、29mmときょう体が薄く、重さも3.0kgと最軽量で、バッテリ駆動時間も2.5時間と一番長い。15万円以下の低価格マシンの中ではコンパクトにまとまったマシンとなっている。上位2機種に比べ、移動して使うという要素も考慮に入れるなら、この「dynabook TX TX650LS」が選択肢として浮上してくることになるだろう。

●モバイルマシンにも光学式ドライブ搭載が標準に

 続いて、11位から20位までのマシンを見てみよう。ここでいくつかモバイルマシンが登場する。仮に、重さ2kg未満でバッテリ駆動時間が6時間以上というラインを引いてみると、まず15位に重量が1.25kgで6.5時間のソニー「VAIO type T VGN-TX50B/B」が顔を出す。「VAIO type T」は、液晶部天面にカーボン素材を使用して薄さと軽さを実現したモデルである。それよりもさらに軽く、標準バッテリでの長時間駆動を達成しているのが、17位の松下電器「Let's note LIGHT W4」。重量1.199kgで8時間駆動を実現したマシンだ。また、重量は2.23kgとややオーバーするものの、6時間バッテリで駆動できる19位のアップル「iBook G4-1330」は次点というところか。とはいえ、海外メーカーで上位20位内にランクインしているのはアップルだけだ。



 ところで、「Let's note」には光学式ドライブがない代わりに約999gと超軽量の「R4」というモデルもあるが、シェア0.9%で27位とやや下位にランクされている。逆に20位内にランクインしたモバイルマシンはいずれも光学式ドライブを備えた、いわゆる2スピンドルのモデルばかり。軽くバッテリでの長時間駆動を要求するモバイルマシンであっても、いまや光学式ドライブ搭載は標準となっているようだ。

 ディスプレイサイズでは、上位10位内ではソニーの「VAIO type F(VGN-FS22B)」だけがワイド液晶だったが、11位から20位では半数がワイド液晶を搭載している。テレビ機能搭載モデルが増えてきたこともあり、各社とも06年春夏の新モデルに向けてはワイド液晶搭載に力を入れてくることが予想されている。価格的がこなれてくれば「ワイド化」の波はさらに拡大しそうだ。

●メーカー別でもNEC・富士通・東芝の三つ巴でのシェア争い

 次に、ノートPCのメーカー別販売台数シェアの推移を今年6月から11月までで見てみると、上位3社が展開するシェア争いの激しさがよくわかる。9月の新製品発売で一時、富士通がトップに躍り出たものの、その後NECが逆転。さらに東芝が2位か3位で争いに加わる、という図式だ。もともと、1989年発売の「DynaBook J-3100 SS001」で世界で初めてノートPCなるものを世に送り出したのが東芝。PC分野ではノートに専念しているだけに独特の存在感がある。これに4位のソニー、5位のシャープと続く。「VAIO」「Mebius」の両シリーズのポジションはこのあたりを定位置に落ち着いている。


 いま売れているノートPCは、モバイル用途で持ち運ぶ必要性はあまりなく、使わないときに簡単に片付けられて安価な15型モニタのオールインワンタイプ。何かに突出して高機能ということではなく、オールラウンドで広い用途に使えるバランスのよさが売れ筋の条件だ。しかし、これらのマシンではAV機能はほとんど期待できない。ノートPCでテレビ機能やDVDレコーダー機能を楽しみたいなら、AV機能満載のハイスペックなノートPCを検討するべきだろう。また、日常的に持ち歩くとなると、重さやバッテリ駆動時間は必ずチェックしておきたいところ。ノートPCをこれから購入するなら、まずはじめにAV機能が必要かどうか、日常的に持ち歩くかどうかを考えた上で、用途に応じて機種を絞り込んだほうが選びやすいだろう。(フリーライター・中村光宏)


*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など18社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。