• ホーム
  • トレンド
  • エレコムの葉田順治会長が寄付した、出身地・熊野市「児童養護施設」が開所

エレコムの葉田順治会長が寄付した、出身地・熊野市「児童養護施設」が開所

経営戦略

2024/04/04 15:05

 エレコムの葉田順治取締役会長は、社会貢献活動の一環として東紀州エリアに児童養護施設(三重・熊野市)を建設するための活動「東紀州こどもの園」プロジェクトに寄付をしている。その児童養護施設の完成を祝う開所式が4月2日、開催された。

「東紀州こどもの園」プロジェクトによる
児童養護施設の開所を祝うテープカット。
右から2番目がエレコムの葉田順治取締役会長

世界的建築家の隈研吾氏が設計・デザイン

 「東紀州こどもの国」プロジェクトは、エレコムの葉田会長個人の着想から始まり、趣旨に賛同した人たちの善意の結集により実現したもの。児童養護施設の開所式には葉田会長をはじめ、同施設を設計した世界的建築家の隈研吾氏や三重県知事の一見勝之氏、熊野市長の河上敢二氏らが参加。テープカットが行われた。
 
隈研吾氏が設計・デザインした
児童養護施設

 児童養護施設の敷地面積は約2000平方メートル、延床面積は約800平方メートル。児童家庭支援センターも併設する。入所できるのは2~18歳までの4人で、既に2人の入所を予定している。2023年7月4日に着工し、24年4月2日の開所に至った。
 
誰でも利用できるプレイルーム

児童虐待があることに衝撃を受けたのがきっかけ

 葉田会長はあいさつの中で、行政や建設に携わった地元企業、隈氏など関係者に感謝の意を述べるとともに、施設が完成するまでの経緯に触れた。
 
あいさつをする
エレコムの葉田順治取締役会長

 熊野市の木本(きのもと)町出身の葉田会長は、約40年前に熊野市を出てエレコムを創業。約10年前から、三重県尾鷲市の自然林再生事業や志摩市の防潮・防風を目的にした森林づくり、丸山千枚田の保全活動などの社会貢献活動を継続してきた。

 また、17年には葉田財団を設立。児童養護施設への寄付活動や奨学金支援、メンタリングによる精神面のサポートなども行ってきた。

 今回のプロジェクトは、南牟婁郡御浜町の児童家庭支援センターを視察した際、東紀州のような地でも児童虐待があることを知り、衝撃を受けたのがきっかけだったという。

 あいさつで葉田会長は次のように語った。「私自身、これまでの活動から児童養護の知見はあったものの、話を聞いてびっくりしました。このとき思ったことが二つあります。一つは木造で建てたかったこと。そして木造建築といえば隈先生だと思い、お話したところ、快諾していただきました。もう一つは、閉鎖的な施設が多い中、子どもたちがのびのびと遊べるような開放的な空間にしたいと思いました。子どもたちが地域の宝として、しっかりと育まれるような施設になってほしいです」。

紀州の木材をふんだんに使った地産地消

 建築家の隈氏は「葉田会長から話を聞いたとき、夢のある地域の一つのモデルになるプロジェクトだなと思い、とても感激しました。建物のデザインは曲線を使って、まわりの山並みに馴染むようにしました。また軒はできるだけ低く抑えて、中はゆったりできる空間をとりました」と、緑に囲まれた環境に溶け込むようなデザインについて語った。
 
建物のコンセプトについて語る建築家の
隈研吾氏

 隈氏によると紀州の木材は、杉の色合いのよさだけでなく、強度もあるとのこと。見た目の美しさだけでなく、安心できる建物であることを強調した。また、垂木一本一本の高さや角度も異なり、3Dの曲面を描く難しい作業を請け負った地元職人の技術力の高さにも触れ、「世界に自慢できる建物ができました」と語った。

「子育て家庭を守る地域の砦に」

 三重県知事の一見勝之氏は祝辞の中で、「これまで東紀州に子どもを保護する施設はなく、津まで移動しなければなりませんでした。東紀州に施設ができたことで、子どもたちが遠くまで移動するストレスが解消されます。また、この施設は子育てで悩まれている地元の方が相談できる児童家庭支援センターも併設されています。子どもと子育て家庭を守る地元の砦になると思います」と語った。
 
祝辞を述べる三重県知事の
一見勝之氏

 熊野市長の河上敢二氏は「少子化が進む中で子どもは家族だけでなく地域の宝です。子どもたちを支援する施設をなんとしても早くつくらなければならないと思っていたところ、葉田会長の子どもたちに対する温かくて強い想い、多大な支援とイニシアチブで、しかも隈研吾さんのデザインでこのような施設ができたことに心から感謝を申し上げます」と祝辞を述べた。
 
熊野市長の
河上敢二氏

 「今日からが本当の始まりです」と葉田会長が話すように、やさしくて温かく、開放的なデザインの施設は、地域住民との交流を深めながら、子どもたちの自信を育み、成長を支援するための一歩を踏み出した。(BCN・細田 立圭志)