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イケア、「IKEA Tokyo-Bay」の自動ロボット倉庫を公開 世界で2店舗目、首都圏の小物物流を集約

経営戦略

2022/11/24 19:05

 イケア・ジャパンは11月24日、IKEA Tokyo-Bay(千葉県船橋市)の倉庫内で同日稼働した自動倉庫型ピッキングシステム「オートストア」を報道陣に公開した。首都圏4店舗(IKEA新三郷、IKEA Tokyo-Bay、IKEA立川、IKEA港北)の商圏における雑貨や小物配送のピックアップ・配送業務を集約。従来、店内で従業員が行っていたピッキング作業を自動化することで、時間換算で約8倍の作業効率がアップするという。オートストアの導入はイケアのグローバルでもクロアチアに続き2店舗目となる。

報道陣に公開されたIKEA Tokyo-Bayの自動倉庫型ピッキングシステム「オートストア」

首都圏を一つのマーケットに

 イケア・ジャパンは国内9カ所のイケアストア(大型店舗)、3カ所の都心型店舗(原宿、渋谷、新宿)、カスタマーサポートセンターを展開。2017年にECサイト「IKEAオンラインストア」をオープンしたほか、IKEAアプリの配信、国内各地での「商品受取センター」の拡大、IKEAポップアップストアの展開など、顧客とのタッチポイントを増やしている。

 特にコロナ禍でECの注文が増加。伸び率は非公表ながらイケア・ジャパンの売上高の18%をECが占めるという。そうした中で首都圏を一つのマーケット「One Tokyo Market」として捉え、店舗間のロジスティクスの効率化やECとリアル店舗のオムニチャネル化の加速が求められていた。
 
「One Tokyo Market」の一翼を担う
「IKEA Tokyo-Bay(千葉県船橋市)」

 そもそもイケアの大型店は、ショールームと物流センターを一体化したつくりになっていてECと相性がいい。2階で実際の部屋やシーンに見立てた空間の中で商品を提案。来店客はその空間を歩きながら欲しい商品をチェックしたり、ピックアップしたりする。そして大型商品は1階の倉庫と一体化した棚からピックアップして会計する。ECの注文品は、従業員が顧客と同様に店内でピックアップしていた。

 自動倉庫型ピッキングシステム「オートストア」を導入することで、雑貨や小物商品における従業員のピッキング業務をロボットに任せられるとともに、店舗別に分散していたピッキング業務を一カ所に集約するという一挙両得が狙えるわけだ。

小物商品の約8割のピッキング作業を自動化

 オートストアは1階の顧客用倉庫スペースと柵で隔てられた場所にある。幅37×奥行き14×高さ7メートルの建屋の中に、「BIN」と呼ぶ小型ケース1万1400個が縦14段に並んで格納されている。BINの1個に一つの商品アイテムが入っており、合わせて約4000種の商品を格納する。これは合計9500アイテムの42%を占める規模。小物商品に絞れば、8割がオートストアにより自動化されるという。
 
オートストアは1階の顧客用倉庫スペースと柵を設けて隔てられた場所(写真手前)にある
 
オートストアがある自動倉庫

 格子状に組まれた14段のフレームの最上段を25台のピッキングロボットが、AIによる操作で縦横無尽に動き回っている。ロボットは顧客からの注文に従ってBINを上下に動かしながらBINごとピックアップしたり、中にはクレーンゲームのように特定のBINだけをピックアップしたりするなど、それぞれの役割を担う。
 
1万1400個のBINと呼ばれる小型ケースの中に商品が入っている。
約4000種類に及ぶ

 ロボットでピックアップしたBINは最終的に1階の下段に降ろされて、オートストアの作業台に順次送られていく。従業員は送られてくるBINから、モニターに表示された個数だけをピックアップ。バーコードで紐づけしながら配送用のボックスに入れていくだけだ。ピッキングするために店内を歩き回る必要はまったくなくなった。
 
オートストアのモニターを見ながら個数を確認。
BINから商品を取り出す
 
商品のバーコードを読み込む
 
商品を配送用のボックスに入れる

 なお、無人のオートストア庫内は酸素を吸着するフィルターが設けられており、酸素濃度は約13%に抑えられている。「ライターの火も付かない」ほどに、酸素を低減することで火災事故を防ぐ。店舗運営の電力は100%再生可能エネルギーで賄われているというのも、サステナビリティを経営理念の一つに掲げるイケアらしさが光る。

 イケアは2024年に北関東初となる「IKEA前橋(仮称)」を北関東自動車道前橋南インターチェンジ近くの場所にオープンすると発表している。この店舗もOne Tokyo Marketの中に組み入れられる。

 なお、オートストアの導入でピッキング作業が自動化されることによる人員削減は行わないという。より付加価値の高い業務に従事することでサービスの満足度を高める考えだ。(BCN・細田 立圭志)
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