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販売台数は縮小しつつ、販売金額が伸びているスピーカー市場

 家庭で使うスピーカーといえば、今やバータイプのサラウンドシステムが主流。テレビに接続して迫力ある音を楽しむかたわら、スマートフォンなどを無線で接続し、音楽再生用のスピーカーとして楽しむ用途も広がっている。一方、アンプに接続して使用する、従来タイプのスピーカー市場は、販売台数の前年割れが続くものの、平均単価が上昇し販売金額は伸びている。

販売台数は縮小続くも
販売金額は伸びているスピーカー

 スピーカー市場のこの1年を振り返ると、コロナ禍で巣ごもり需要が旺盛だった昨年でも前年割れが継続。販売台数は、ほぼ一貫して数%から10数%のマイナスで推移した。台数の点では特需の恩恵は受けられなかったようだ。しかし販売金額は、おおむね10%から20%の間で伸びる月が多かった。タイプ別の構成比では、一般的なステレオ2本組のスピーカーが3割前後と最も多く、1本売りのフロントスピーカーが25%前後で続くという市場構造だった。しかし、このところ伸びているのがサブウーファー。10月ではステレオ2本組のスピーカーと並ぶ構成比まで拡大した。
 

 メーカー別シェアでは、ヤマハDENONブランドを擁するディーアンドエムホールディングス(以下、ディーアンドエム)が1、2位を争っている。この10月ではヤマハが29.8%でトップ、ディーアンドエムが28.0%で2位だった。ヤマハの売れ筋は2本組のステレオスピーカー「NS-BP200(BP)」。平均単価8000円台(税抜き、以下同)と手ごろな価格ながらピアノブラックの落ち着きのあるコンパクトスピーカーだ。一方、ディーアンドエムの売れ筋はサブウーファーの「DSW-37-K」。平均単価は1万6000円台とそこそこの価格だが、サブウーファーが売れ筋トップなのが興味深い。

 現在、急激にシェアを伸ばし上位2社に急接近しているのがソニーだ。同社の売れ筋は、細身で背の高い1本売りの「SS-CS3」。フロア置きに適した本格スピーカーながら平均単価1万1000円前後の人気商品だ。しかし、シェアを押し上げている製品は別にある。SAシリーズだ。特に同社のサウンドバーなどに接続して使用するサブウーファー「SA-SW5」は、平均単価7万円程度と高価な製品にも拘わらず売れいる。下位モデルの「SA-SW3」、リアスピーカーの「SA-RS3S」などとともに、同社のシェアを押しあげた立て役者だ。

 販売台数が縮小しつつ販売金額が拡大するという現象は、市場のニッチ化が進んでいるいることを示す。大量には売れないものの、単価が高く特徴のあるプレミアム製品が売れていく、という構造だ。サブウーファーが伸びているのもニッチ化の現れといっていいだろう。スピーカー市場は当面この傾向が続きそうだ。(BCN・道越一郎)