Go To トラベル事業の一時停止を求める声が大きくなっている。既に、札幌市と大阪市を目的地にした旅行はGo To トラベル事業から一時的に除外されているが、さらに広い範囲で事業を一旦止めるべきだ、との意見が増えてきた。政府も一時中止を検討しているとの報道もある。背景にあるのは、無症状で元気な陽性者が動き回ることで、感染を広げているのではないか、という仮説だ。しかし、本当に旅行が感染拡大の大きな要因なのか。そもそも、仮に無症状の陽性者が旅行したとしても、発症しない人からの感染リスクは本当に高いのか。
旅行を終えた人が大勢発症していれば、それはそれで大問題になるだろうが、実際はそうなっていない。観光庁の集計では、10月末までに延べ3976万人がGo To トラベルを使ったが、旅行に伴う感染者は148人だったことが分かっている。実に27万分の1の確率だ。多少の漏れはあるかもしれないが、Go Toに感染拡大の要因を結び付けるのには無理がある。
Go To トラベルについては、利用できる人はいいが利用できない人もたくさんいて不公平だという声もある。一面では確かにその通りだが、事業の目的は、旅行者への補助ではない。壊滅的な被害を受けた、旅行にかかわる仕事をしている人たちを救うためだ。旅行者が実際に旅行することで、雇用や施設の維持ができる。
政府の予算に加えて旅行者も負担をするため、支援の効果も大きくなる。だからこそのGo Toなのだ。現状でさえ、ホテルや旅館、運輸業、土産物店など、何とか食いつないでいる状態。メリットの多いGo To 停止で壊滅的な状態に逆戻りしかねない。旅は続けよう。ただし、感染対策には、より気を付けながら。(BCN・道越一郎)