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トラベル・イート・イベント……官民挙げて需要を喚起する「Go To」が狙う40代以上の懐事情

 国が費用を一部補助することで需要を喚起し、旅行・観光関連業界を支援する「Go To トラベル」、飲食店と食材を供給する農林漁業者を支援する「Go To Eat」はお得な活用法を含め、SNSで大いに話題になった。トラベル、イートに続き、文化芸術やスポーツに関するイベントの需要喚起を目的とした経済産業省の「Go To イベントキャンペーン」が始まった矢先、決定事項ではない、Go To Eat プレミアム付き食事券の利用自粛の呼びかけなど、盛り上がりに水を差す動きが出てきた。

 Go To トラベル、Go To イートの主な利用者は40代以上で、金銭的にゆとりのある層と考えられる。根拠は、メットライフ生命保険が今年8月、全国の20~79歳の男女1万4000人を対象に実施した「老後に関する調査」の調査レポートだ。この調査で明らかになった、年代ごとの保有金融資産額、老後の備えに必要な金融資産額、その差額の平均値と中央値の差こそ、Go To キャンペーンが経済対策として効果が期待でき、若干の対象外を設けても継続が不可欠な理由だ。まずは調査データを紹介しよう。
 
Go To トラベルは国土交通省、Go To イートは農林水産省、
Go To イベントは経済産業省が実施している

全年代の保有金融資産の中央値は400万円、平均値は1158万円

 メットライフ生命保険が定点調査を始めた2018年以降、3回の調査を比較すると、金融資産(不動産・土地は含まない。貯蓄性保険・共済は含む)を「計画的に貯めている」「計画的ではないが少しずつ貯めている」をあわせ、老後に備えて金融資産を貯めている人は18年54.2%、19年56.4%、20年61.4%と、年々増加している。全ての年代で18年・19年調査よりも高く、とりわけ50代では18年比で10ポイント以上増加した。
 
金融資産を「貯めている」と回答した割合は過去最高の6割に達した

 老後への資金準備については、全ての年代で「老後の備えに必要な金融資産と自らが想定する金額」と「現在の保有金融資産額(金融資産のみ)」に差があり、年代や保有している金融資産額に関わらず、金融資産が不足しているという意識傾向がみられた。老後の備えに必要な金融資産は、中央値で2000万円、平均値で3007万円。不足額は中央値で1600万円、平均値で1850万円。

 19年調査と比較すると、現在の保有金融資産額はどの年代も増えたが、老後の備えに必要な金融資産と自らが想定する金額が、20代と60~70代で前年比200万円以上高く想定されたため、不足する金額も拡大している。
 
 
全ての年代で「老後の備えに必要な金融資産と自らが想定する金額」と
「現在の保有金融資産額」にギャップがある

 現在の保有金融資産は、中央値で400万円、平均値で1158万円。異常値は外しても平均値のほうが中央値より高く、20代から60~70代へ、年代が上がるほど、平均値が上がっていく。

 子どもがいる場合、最も支出がかさむと思われる、40代の平均保有金融資産額が855万円、不足額が2160万円。一見、大きく不足しているように見えるが、40歳なら65歳までの25年間に毎年100万円ずつ貯蓄すれば目標金額に到達する計算が成り立つ。今回の調査の老後の備えに必要な金融資産と自らが想定する金額の中央値である「2000万円」なら達成のハードルはさらに下がる。
 
 
新型コロナの影響で、どの年代も投資意欲が高まっている

 インターネット調査は、偏りのある結果となるといわれている。その点を差し引いてみる必要があるものの、40代、50代、60~70代なら、既に金融資産を300万円以上保有する層が少なからずいる実態が浮かび上がった。新型コロナの影響で、「不要不急」とされた一部のカテゴリで大きく経済活動が停滞した今こそ、こうした層に老後の備えとしてキープしている貯蓄を少し消費に回してもらい、経済を回すべきなのだ。Go To キャンペーンはそのための施策である。

 少なくとも、今回の記事で紹介したグラフに記載された各年代ごとの平均金融資産を超えている人は、自身が納得できるタイミングで、ぜひGo To キャンペーンを利用してみてはいかがだろうか。(BCN・嵯峨野 芙美)