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PayPayとNTTドコモのテーブルオーダー、新型コロナで飲食店の新常識になるか

 新型コロナウイルスによる飲食店でのキャッシュレス決済の普及とともに、注文時に店員ではなくテーブルにあるタブレット端末で操作するケースが増えている。PayPayNTTドコモがこのほど発表した「テーブルオーダー」は、中国ですでに浸透している「WeChat Pay」などのシステムと似ている。日本では、マクドナルドがいち早く導入しており、自分のスマートフォン(スマホ)でテーブルから注文するスタイルが、飲食店の新しい常識になりそうだ。

テーブルオーダーが日本で定着する日も早い?(写真はWeChat PayのレストランQRコードオーダー)

タッチパネルから非接触のセルフレジへ

 新型コロナにより飲食店や居酒屋のチェーン店で、店員ではなくテーブルから注文するスタイルを目にする場面が増えている。店員と客の直接会話で起きる飛沫感染を防ぐために、タブレット端末から注文する仕組みだ。印刷したメニューに触らずに済んだり、客の感染予防などのメリットがある。店にとっても、毎日多くの客と接する店員に、安心して働いてもらう効果もある。

 しかし、タブレット端末もメニューを選ぶときに指でタッチしなければならない。客が入れ替わるたびにアルコール消毒しているとはいえ、中には指でタッチするのをためらって、器用に指の関節などを使って注文する人も見かける。

 最近では、パネルに指が直接触れなくても、高感度センサーで指の動きに反応する非接触タイプもある。いわゆるタッチレスの「セルフレジ」で導入が進められている。例えば、くら寿司は10月に東京や大阪の2店舗で先行導入したり、ファーストキッチンが東京の1店舗でテスト導入したりしている。こちらは導入コストの兼ね合いもあり、まだ始まったばかりという感じである。
 
ファーストキッチンの非接触セルフレジ

自分のスマホならタッチしても安心

 そんな中、PayPayが10月30日に「PayPayテーブルオーダー」を発表したのに続き、NTTドコモは11月5日に「テーブルオーダー」を発表。いずれもスマホ決済アプリのPayPayやd払いの一つの機能として提供する。PayPayは「大阪おおきにアプリ事業」に登録する飲食店で10月30日から順次スタートしており、d払いは12月下旬から全国の飲食店約100店舗から開始する予定だ。

 なお、d払いのテーブルオーダー機能は、ショーケース・ギグの店内向けモバイル・テーブルオーダーサービス「SelfU(セルフ)」のプラットフォームを活用している。
 
10月30日からスタートした「PayPayテーブルオーダー」
 
12月下旬から開始予定のd払いのモバイルオーダー

 PayPayもd払いも注文の仕方はおおむね同じだ。テーブルや座席から来店客が自分のスマホにインストールしたPayPayやd払いアプリで、テーブルにある注文用QRコードを読み取る。すると自分のスマホにメニューが表示されるので、そこから注文したい料理をタッチする。注文だけでなく、決済も一気通貫で完了するのがテーブルオーダーの優位点といえる。注文から決済まで自分のスマホだけで完結するから、たとえタッチ操作があっても安心というわけだ。
 
PayPayテーブルオーダーの注文用QRコード

 テーブルオーダーでは、マクドナルドがすでに「モバイルオーダー」と一緒に「テーブルデリバリー」というサービスで導入している。マクドナルド公式アプリでテーブルにあるQRコードを読み取って注文すると、店員が商品を運んできてくれる。マクドナルドの場合、自社の店舗だけでの活用となるが、PayPayやd払いなら、中小規模の飲食店でも自らがシステム投資をすることなく同じようなサービスを提供することができる。
 
マクドナルド公式アプリに「モバイルオーダー」と一緒に「テーブルデリバリー」も搭載

新型コロナが日本のキャッシュレスの一歩先を前倒し

 PayPayやd払いのテーブルオーダーに似たサービスは、すでに中国ではテンセントのWeChat Payなどで日常的に使われている。WeChat Payの「レストランQRコードオーダー」というサービスは、日本では2018年から阪急阪神百貨店の阪急うめだ本店のレストラン5店舗などで、インバウンド向けサービスとして導入している。

 これは、中国からの旅行客が中国で日常的に使っている注文や決済方法を、日本のレストランでも同じように使えるようにしたサービス。新型コロナでインバウンドは激減したが、阪急うめだ本店では、今でも、このサービスが運用されているという。

 ところで、このレストランQRコードオーダーは、単に便利な注文・決済手段にとどまらないところがミソだ。テンセントは注文・決済をきっかけとして、そこから派生するマーケティングデータを店舗にフィードバックすることで、店舗と顧客のエンゲージメントの強化につなげている。

 快適な注文・決済体験を顧客に提供することで、顧客のショッピング体験のトランザクションをデータにして可視化することで、加盟店のマーケティングに活用して売り上げを最大化することをゴールに見据えているのだ。QRコードオーダーは、その入り口に過ぎない。

 ここでは詳細には触れないが、気になる方は次の記事を参照してほしい。

<関連記事>
日本のキャッシュレス化の次のステージを示す「WeChat Pay」
https://www.bcnretail.com/market/detail/20190717_128371.html

 PayPayやd払いのテーブルオーダーは、スモールスタートの地味な発表に映るかもしれない。少なくとも「PayPayジャンボ」や最大50%還元の「d払いお買い物ラリー」など派手な還元キャンペーンの陰にかすんでしまう。しかし、スーパーアプリ構想を掲げる日本のキャッシュレス決済プラットフォーマーの打ち手として見逃せないサービスだ。

 いずれにしても、少し先に見据えていた日本のテーブルオーダーの普及は、新型コロナで「非接触」がキーワードになったこともあり、想定より何年も前倒しになりそうだ。(BCN・細田 立圭志)