【インターコムの進化論 独立系日の丸ソフト会社の歩みとこれから・5】 2000年代に突入し、インターコムは創業以来の軸である「通信」領域に、「セキュリティ」と「ユーティリティ」という新たな事業ドメインを追加して勢いを取り戻す。ハイペースで新製品をリリースしていく中で、2006年にインターコムの現在のビジネスの柱となる1本のプロダクトが誕生した。BtoB領域のIT資産管理・情報漏洩対策ツール「MaLion(マリオン)」である。

IT資産管理+情報漏洩対策ツール「MaLion(マリオン)」

 大規模な個人情報の漏洩事件が社会問題化したことを受け、03年に個人情報保護法が成立、05年に全面施行となった。それに伴って、情報漏洩対策、個人情報の取得と取り扱いについて厳しく制限がかかり、各企業は社員教育とシステムの両面での対策を余儀なくされた。MaLionが発売されたのはその翌年であるが、ここには戦略があった。

 個人情報保護法への対策で、全面施行日までに多くの企業がプライバシーマークを取得するとともに、ITベンダーが提供する情報漏洩対策システムを導入した。これまでパソコンのセキュリティ対策といえば、ウイルス対策ソフト、ようやくスパイウェア対策ソフトが出てきた程度だったところに情報セキュリティという新しい概念が定着し、市場は活況を呈したが、新しいシステムの導入は現場のユーザーにとってハードルが高かった。

 情報セキュリティの定義や新しい法律の解釈が定まらない中で、ITベンダーやコンサル会社、そしてメディアがリスクをあおり、社内の管理部門では「あれも駄目」「これも危ない」という話になった。その結果、パソコンの活用にやたらと縛りが増えて不自由になり、動作も重くなってしまった。過剰な対策と制限によって、ホワイトカラーの生産性が著しく落ちてしまったのである。

 そこでインターコムは、05年に向けて一段落した市場とユーザーの反応を見極めた上で、必要な情報セキュリティ対策は、IT資産管理も含めて全て標準機能として搭載し、追加費用がかからないオールインワンのシステムというアプローチでMaLionを“後出しで”リリースした。市場も大企業は一巡したとはいえ、中堅・中小企業でまだまだこれからという状況でもあった。

 そして、このMaLionが、情報セキュリティとIT資産管理を軸にして、「日本版SOX法」(Ver.2)、「(東日本大震災後の)節電」(Ver.3.20)、「オープンソース、IaaS対応」(Ver.5)、「働き方改革」(Ver.6)などと、時代の要求に合わせた機能を取り込みながら息の長いプロダクトへと成長していく。
 
どこで働いていても、勤務状況が「MaLion」に集約される

 同時期の07年にもう一つ、現在のインターコムを形作る上で象徴的なサービスをリリースしている。それが、リモートコントロールソフト「LAPLINK ASP」、つまり企業向けのクラウド展開である。ASPサービスとしては、2000年初頭にBtoBtoCモデルのパソコンユーザー向けインターネットセキュリティサービスを開始しているが、ソフト自体は海外製品のOEMであり、LAPLINK ASPは初の自社製品によるASPサービス(SaaS)であった。

 また、コンシューマー向けセキュリティのASPサービスは、結果として大きなビジネスに成長したが、開発元の問題もありこの数年後にクローズを余儀なくされた。つまりインターコムの現在のクラウドビジネスは、ここからの足し算となっている。その後、12年にMaLionのクラウド版、13年に「Web給金帳」のクラウド版をリリースするなど、既存プロダクトのクラウド展開を推し進めていくことになる。

 このクラウド・サブスクリプションモデルのビジネスが、今ではインターコムの売り上げを支えるに至っているが、「ものになるまでに時間はかかった」と高橋啓介会長兼社長CEOは振り返る。その間に売り上げを支えていたのが、「まいと~くFAX」「FALCON」「Biware」など、インターコム初期の00年以前に登場し、国内のレガシーシステムを支えてきたパッケージソフト群であった。

 「オンプレの売り上げがあるから並行してクラウドが育てられる。クラウドビジネスは売り上げが出るまで2~3年かかるので、ほとんどのベンチャーは体力がもたないし、ファンドで資金を集めるので自分がやりたいことができない」と、高橋会長は日の丸パッケージソフト会社として37年間荒波を乗り越えてきたプライドをのぞかせる。

 クラウドビジネスを本格化した背景には、コンシューマー向けパソコンソフト市場の低迷もあった。スマートフォンの登場によって個人の普段使いのコンピューターがパソコンではなくなり、ビジネス向け以外のいわゆるショップの店頭に並んでいたパッケージソフトはどんどん失速していった。そこで、インターコムもユーティリティを中心としたコンシューマー向けのビジネスからは撤退し、現在はビジネス領域に専念している。

 企業向けのサービスに完全に集中したことで、新たに顧客や全国の販売パートナーを意識したサポートビジネスや保守サービス体制も確立。「新しいスタイルが固まった」(高橋会長)インターコムは今、成長期以来の充実期を迎えている。