8月22日から24日までパシフィコ横浜で開かれていた「CEDEC2018」で、23日にGzブレインのマーケティングプロモーション局マーケティングセクションでアナリストを務める但木一真氏が、eスポーツ産業におけるスポンサーシップについて講演した。

Gzブレインの但木一真アナリスト

 但木氏によると、ブランディング専門会社のインターブランドが発表した2017年の企業ブランドランキング上位20社のうち、eスポーツのスポンサーシップ、またはeスポーツ事業に取り組んでいる比率は55%。GoogleやMicrosoft、コカ・コーラ、Amazonなど有名企業が名を連ねており、世界ではeスポーツをビジネスとして手がけるのは、あたりまえになりつつあるという。

 日本では、18年が「eスポーツ元年」と呼ばれ、さまざまな企業がeスポーツに注目し始めている。そのような状況のなか、「企業がeスポーツにスポンサーシップする」と話題になっている。では、普通のスポーツに対するスポンサーシップと、eスポーツへのスポンサーシップは一体何が違うのかについて、但木氏はまとめた。

 eスポーツはゲームを使った競技なので、高めた技術を競い合う大会がある。そして、そこに参加するチームや選手がいる。人が集まれば話題になるため、メディアが大会を取り上げる。eスポーツにおけるスポンサーシップの先は、大きく分けて「大会」「チーム・選手」「メディア」の三つに分類できるという。

 但木氏があげるeスポーツにスポンサーシップする企業のメリットは、大きく分けて二つ。自社のブランドを知ってもらうための「認知向上」と、自社の製品やサービスを購入してもらうという「販売促進」だ。

 まず、「認知向上」の具体的な特徴は三つ。eスポーツのファンの属性と、ブランド露出が増える可能性、グローバル進出の足がかりになる可能性だ。

 Gzブレインのデータによれば、17年におけるeスポーツのファンは250万人。内訳は、男性が約7割で女性が3割で、年齢別で20代が最も多く30代が続く。eスポーツのタイトルをプレイしているユーザーは69万人で、そのうち男性が約6割、女性は4割。年齢は、こちらも20代が最も多く次に30代という結果だ。
 
eスポーツファンの属性(左)とプレイヤーの属性

 ここで但木氏が促すのは、ゲームタイトルごとにファンの属性が異なっているということ。「あるデータでは、eスポーツの動画を見るユーザーの多くが一つのタイトルしか見ないという結果が出ている。それぞれのゲームタイトルにコミュニティがあり、ファンがいて、それぞれが個別に活動している。これらをざっくりまとめて、eスポーツと呼んでいる」という。

 例えば、PS4のシューティングゲーム「オーバーウォッチ」では、男性プレイヤーが9割で、20代が中心。一方、スマートフォンゲームの「シャドウバース」は、女性が2.5割で、10代に人気が高い。こういった属性を把握して、最適なスポンサーシップ先を探す必要がある。
 
タイトルごとにファンの属性が異なる

 また、現在のeスポーツファン層はエリートゲーマーやハードコアPCゲーマーだが、eスポーツが普及すれば、さらにカジュアルなゲーマーがeスポーツファンになる可能性もあるという。

 コンテンツが広く拡散される可能性もある。大会があれば、まずその大会自体がコンテンツになり、大会動画が動画配信サービスで配信される。その後、ウェブメディアで記事化されたり、SNSで拡散されたりする。「記事がSNSで話題になることもあれば、SNSの話題が記事になることもあり、相乗効果で盛り上がると、全国紙やテレビに取り上げられる機会が出てくるかもしれない」と但木氏は分析する。

 ほかにも、ストリーミングや生放送、アーカイブ形式の動画、Web番組などのコンテンツもあり、数ある動画のなかでスポンサーが露出する機会もある。

 グローバル進出について、但木氏は「現状、日本の大会だけで選手は食べていけない。今後は、そうなればいいなとは思うが、まだ日本のeスポーツは勃興の途中なので難しい。そうすると、選手は海外で活躍することになる。活躍すれば海外のメディアに取り上げられる可能性もあり、スポンサーは自分たちのブランドを海外に知ってもらうことにつながる」と説明する。

 「販促」の面では、ロイヤリティの高いユーザーに訴求できるという特徴がある。チームや選手のファンは、選手が配信する動画や参加する大会に足を運ぶ。タイトルのファンは大会の動画や配信動画を広くみるなど、タイトルとのコラボレーションで注意を引くことが期待できる。ゲーム全般のファンは、大規模な大会などの情報をメディアで知り、興味があればコンテンツを確認するため、好みにあわせたプロモーションが必要になるという。

 但木氏は、「アイデアの一つではあるが、自社の商品・サービスに『ゲーミング』と冠することで、ブランドに新たなイメージを付加し、新規顧客層を開拓できる可能性もある」と紹介する。製品を新たに開発することなく、新規の顧客層に訴求できるようになるため、実施難易度も比較的低い。
 
「ゲーミング×自社製品・サービス」のケースで新規顧客層に訴求するケースは増えているという

 さらに、但木氏はeスポーツがデジタルコンテンツであるという点を生かして、最新テクノロジーの実験場として活用することも提案した。VR/ARであれば、eスポーツのタイトルになるゲームがある。ビッグデータなら、最適な試合やトレーニング、大会の開催時期や開催場所なども割り出せる。

 なお、Gzブレインは2018年中にEスポーツ情報プラットフォーム『EスポーツDB』をローンチする予定とのことだ。(BCN・南雲 亮平)