「今回の報告書は携帯電話の取引慣行の多岐にわたる問題に、厳しい指摘がされたものと考えている。総務省で内容を精査し、公正取引委員会と連携した上で、利用者の視点に立ってしかりと対応していきたい」

 菅義偉内閣官房長官は6月29日の記者会見で、前日に公取委が発表した大手キャリアの「4年縛り」が消費者の選択権を事実上奪い、独占禁止法上の問題になる恐れがあるとする報告書について、総務省と連携して対応するとコメントした。3キャリアに、政府の厳しい目が注がれている。
 
6月29日の会見で「4年縛り」についてコメントする菅内閣官房長官
(首相官邸HPより)

通信と端末のセット販売は景表法に抵触のおそれ

 総務省が6月6日に3キャリアに対して行政指導を行い、ソフトバンクについては価格拘束の是正を求めた。これに呼応するかたちで、公取委が報告書を公表。同委員会が2016年8月に公表した調査(前回調査)から、依然として改善されていない現状を厳しく指摘している。

 問題の根本には、通信と端末のセット販売が解消されていないことがある。前回調査で、端末価格の多くを毎月の通信料金から値引きするセット販売の見直しを指摘したものの、「依然として常態化している」と認識。キャリアからはその後、従来よりも安い3段階や4段階のプランが導入されたものの、「特定の端末購入などを条件とし、汎用的なプランでない」との判断を下した。セット販売が見直されていない結果、「通信料金単独では大幅に値下がりしていない」と総括している。

 また、通信と端末のセット販売は、景品表示法(景表法)上の問題になる恐れがあるとする。本体価格で端末を販売した実績がないことから、根拠のない価格からの値引き額や値引き率を強調する点に、消費者に他社よりも著しく安いと誤認させる問題があるという。

 かつて家電メーカーに今のオープン価格が導入されたとき、メーカーの定価と店頭の値引き後の価格の乖離が大きく、定価が根拠のない価格とみなされたのと同じロジックだ。ほかの事業者よりも有利なように消費者に誤認させる場合、景表法に抵触するおそれが生じるというわけだ。

SIMロック、2年縛り、4年縛り、解約料もコスト高の原因

 月々の料金を1500円割り引く「2年縛り」についても、契約期間中の契約解除料の9500円が、前回調査から変更されていないと指摘。2年を経過した後に契約解除料がかからないプランが導入されたが、それについても「消費者の実質的な選択肢として機能していない」と厳しい。

 KDDIとソフトバンクが実施している、4年で48回分の割賦払いにして一定期間が経過したら現行端末を下取りし、同じプランへの加入を条件に残り2年分(24回分)の残債を免除する「4年縛り」については、「一度4年縛りを契約すると、利用者のスイッチングコストが高まり、他社への乗り換えが実質的に困難」としている。

 この利用者が他社に乗り換える際にかかるスイッチングコストを高める行為については、さらに踏み込んでいる。SIMロック、2年縛り、4年縛り、解約にかかる費用は、単独でも独占禁止法上の問題になり得るばかりか、これらが組み合わされることで「競争者排除効果が累積的に増幅され、独禁法(私的独占、取引妨害等)上問題になるおそれが一層高まる」という強い表現で示している。

 これらの施策が、すべてスイッチングコストを高めるための施策とする公取委の見解をみると、根底にある通信と端末のセット販売の解消は避けられそうにないが、3キャリアはどう受け止めるのだろうか。

 「スイッチングコストを高めて利用者を不当に囲い込む行為に対して独禁法を厳正に執行していく」という報告書の表現からは、前回調査から変わっていない現状への公取委のいら立ちがにじみ出ている。(BCN・細田 立圭志)