カドーの古賀宣行社長が語るcadoブランド立ち上げの背景

インタビュー

2018/02/26 17:00

 高性能とデザインの両立を実現する「カドー」は、元ソニーのエンジニアと元デザイン家電メーカーのデザイナーが組んで立ち上げた。高単価にも関わらず、徐々に人気を伸ばす背景には、妥協しない「こだわりの心」がある。創業者の古賀 宣行社長CEOに、カドーのこだわりを聞いた。

取材/道越 一郎 BCNチーフエグゼクティブアナリスト
文/南雲 亮平、写真/瀬之口 寿一

最高の技術とデザインを両立、豊かな空間をつくりだす
 

カドーの古賀 宣行社長CEO

空気を扱うワケ、オーディオから空清へ

道越 社名のカドーにはどのような思いが込められているのでしょうか。

古賀 今は、「カドー」の由来は華道、という説明をしています。生花や挿花などの総称で、花や草木だけでなく、空間全体を生かし、その空間を豊かにする文化です。当社は、空気を使って実現していきます。

道越 「今は」というと?

古賀 もともとは、フランス語で贈り物という意味の「cadeau」からきています。性能だけでなく、贈り物にもなりえる、多くの人に喜んでもらえるような家電をつくって世の中へ送り出すという、当社のコンセプトを表しています。コーポレートロゴには、「贈る」をキーワードにして、幸せを運ぶ「コウノトリ」を添えています。

道越 そもそも、なぜ空気清浄機や加湿器、除湿器など、空気をきれいにする製品を手掛け始めたのでしょうか。
 

古賀 前職で中国に赴任した際に、空気や水の汚さに驚きました。深センはそれほどでもないのですが、PM2.5などの影響で北京の辺りはひどかったです。呼吸や水分補給に不安を持ってしまいました。そこで、安心して吸える空気と、心置きなく飲める水を提供しよう、とひらめきました。

道越 それまで空気清浄機などを扱ったことはありましたか。

古賀 いえ、全くありません。前職はソニーでWALKMANを開発していました。でも、当時はカセットテープ式だったので、モーターをはじめとしたアナログの知識は持っています。

 偶然の出会いも後押しになりました。友人のツテで、日本で空清の研究をしている大学教授に会うことができたのです。空気に厳しい人で、「日本の空清はイマイチ。フィルターと風量をしっかりと整えるべき」と話していました。先生は自ら開発も行っており、試作品を体験させていただいたら「これはすごい」と圧倒されました。

道越 すぐに製品化を?

古賀 はい、最初は中国で展開しました。すると次第に人気になっていったので、次はグローバルブランドを立ち上げたいと考えました。品質に対して厳しい目を持つ日本の消費者に認めてもらえれば、世界でも通用する製品がつくれると思い、日本で挑戦をはじめました。

スモールイズビューティフルで、ヒットするデザインを生む

道越 空清などの家電だけで、なぜ会社を支えられるのでしょうか。

古賀 空気関連の家電だけでは厳しいです。当社は十数名の小規模で経営しているので、なんとか成り立っています。

道越 少数精鋭というわけですね。
 

コンパクトで美しいボディに、強力なファンと高性能フィルターを搭載した空気清浄機「LEAF 120」

古賀 というよりも、「スモールイズビューティフル」。経済学者シューマッハーの言葉で、物事には適切な限度があるという意味です。

 大企業では、よくも悪くもくっきりと分業しており、担当の仕事に集中することになる場合が多いです。デザイナーはひとつの製品のデザインを終えたら、売れ行きをみる間もなく次の仕事に取り掛かる、といった具合です。

 対して、われわれは、みんなで一緒に隅々まで検討して、全員で製品がしっかりと売れる状態までもっていきます。もちろん、デザイナーは売れるデザインをつくらなければいけません。

道越 カドーの製品の独特なデザインは、人気の一因にもなっているようです。

古賀 日本市場に参入する際に出会った、デザイナーの鈴木(現副社長)が中心になって考えています。デザインに妥協しない家電で有名なリアル・フリート(現アマダナ)を退職した時期に、ちょうど出会い、現在に至ります。

道越 製品が比較的高額な理由は、妥協していないからでしょうか。

古賀 その通りです。デザイン家電であっても、機能に妥協しない。それがブランド理念でもある「技術+美」。そこに、こだわりの心を掛け合わせたのが、「cado」ブランドです。
 

ソニーをスピンアウトした時点で古賀さんは、次に何をするか全く決めていたかったという

 素材や加工プロセス、デザインが特殊なので、型をつくるのが難しく、量産するにはハードルが高いのですが、金属ならではの加工はほかにない強みといえます。機能面では、日本はもちろんのこと、中国やアメリカといった海外の厳しい基準を満たしています。

 市場の平均価格よりも2~4倍程度高額な商材のため、日本で展開を始めたころは、大切に売ってくれる販売店にもっていきました。そこから話題になり、いまでは家電量販店だけでなく、東急ハンズやロフトでも売られています。目指すのは、オンリーワンです。

■プロフィール
1957年生まれ。80年に大学卒業後ソニーへ入社。メカ設計者として歴代WALKMANの開発に従事。2006年から中国・深センに赴任。10年にソニーを退社後、12年にエクレア(現カドー)の代表取締役に就任。現在、日本と深?を拠点に独自製品の開発を行う。
 
※『BCN RETAIL REVIEW』2017年3月号から転載