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最新「インバウンド」を読み解く、拡大する「外需」消費の行方(前編)

オピニオン

2018/01/29 17:00

 インバウンド(訪日外国人旅行)市場は成長し続けている。2015年の「爆買い」ブームの反動で不安視される時期もあったが、常態化しただけとの見方が強い。「外需」が国内に持ち込まれて内需を刺激するインバウンドビジネスは「モノからコト」へと変容し、売れ筋はめまぐるしく移り変わりながら、小売業にスピーディな戦略変更を迫る。インバウンドの最前線を追った。(BCN・南雲 亮平)


 日本政府観光局(JNTO)の発表では、2017年の訪日外国人旅行者数が前年比119.3%の約2869万人、消費額(速報)は同117.8%の4兆4161億円と、ともに過去最高を記録した(図1)。航空路線の拡充やクルーズ船の寄港数の増加、査証要件の緩和などが成長を後押しした。
 

 好調な推移を背景に、政府は目標を大きく修正。20年には4000万人、その10年後の30年には6000万人に設定した。20年といえば東京五輪がすぐに思い浮かぶが、国土交通省 観光庁 観光戦略課の高椙裕氏は「スポーツイベントを大きく意識はしていない。むしろイベントの有無で数字が上下してしまうことがないよう、安定した成長を目指していく」と話す。

数字から読み解く、インバウンドの内訳

 17年の訪日外客数は、主要20か国で過去最高を記録した。国籍別のシェアグラフ(図2)では、東アジアが7割以上を占め、国籍別のトップは中国の735.6万人(前年比115.4%)、次いで韓国の714.0万人(140.3%)、3位は台湾の456.4万人(109.5%)だった。

 成長をけん引した要因は多岐に渡るが、高椙氏は具体例として「各国のSNSで影響力のあるインフルエンサーを日本に招いて情報発信をしてもらったり、人気YouTuberを起用した動画を制作して配信したりと、海外の消費者に直接アプローチした」と、SNSを使った誘導策を紹介する。
 

左から、国土交通省 観光庁 観光戦略課 観光経済調査室の赤井久宣室長、
同課の髙椙裕氏、観光戦略課係長(兼)免税制度推進チームの樋口泰三氏

 成長が目立つ韓国については「最も単純な理由は、距離が近いから。交通手段が多様になり、往来の難易度が下がったことで意識的にも近くなっている。国内旅行の感覚で訪れる方も増えてきた」と分析する。

 訪日外客数に連動して、消費動向も変化した。17年の1人あたりの旅行支出額(推計)は、15万3921円(98.7%)と前年を割り込んだ。しかし、訪日外客数の増加に引っ張られるかたちで、全体の消費額は過去最高を記録している。

 国籍・地域別の消費額のグラフ(図3)では、客数トップの中国が1兆6946億円で全体の4割近くを占めて首位、次いで台湾が5744億円、韓国が5126億円と続く。客数のシェアグラフ(図2)と比べて、2位と3位が逆転していることがわかる。チェックしたいのは、消費費目の違いだ。

 国籍・地域別の消費金額の費目別構成比(図4)によると、韓国は買い物よりも単価の安い飲食や娯楽サービスの構成比が他国よりも高いため、訪日客数と消費額の順位の逆転が起きている。
 

 全体でみると、消費金額の費目別構成比は買物代が37.1%と最も比率は高く、次いで宿泊費の28.2%、飲食費の20.1%と続く。前年からは、宿泊費の構成比が1.1ポイント増加しており、買物代が1.0ポイント減少。モノからコトへと変わりゆく様子が垣間みえる。

「爆買い」の反動から回復基調、ラオックスの次なる狙いとは

 インバウンドの急激な変化に最も経営を左右された企業といえば総合免税店のラオックスだろう。「爆買い」ブームで全国に素早く出店して爆発的に成長し、その後の反動で苦しさも体験した羅怡文社長は「確かにつらい時期はあった」と打ち明ける。
 

ラオックスの羅怡文社長

 「しかし、爆買いの特需があった15年に整備したインフラは今後、必ず生かせる。ブームが去ってから減少しつつあった顧客数は、17年後半に増加傾向に転じている。インバウンド需要は今ようやく常態化したと考えており、東京五輪の有無に関わらず、今後もさらに伸びる」と予測する。確かに、ラオックスの「月次報告」をみれば、レジ通過数が17年7月から6か月連続で前年を上回っている。新店と閉店を差し引いた昨年の店舗数の増減は1店だけの増加であることも「回復への手ごたえにつながっている」(羅社長)という。

 ラオックスは、インバウンドの「モノからコト」の変化に敏感に対応した。それを象徴するのが17年7月にオープンした、レジャー施設と免税店を融合させた大型複合商業施設「千葉ポートスクエア ポートタウン」だ。

 「都市部ではないので立地条件は最高とはいえないが、『モノ』と『コト』を組み合わせた実験的な店舗として、おおむね成功している。平日のランチタイムには300人の女性客などでレストランが賑わうなど、インバウンドだけでなく地域に密着したコト消費の可能性を感じた。人種や国籍、地域を問わず、誰でも楽しめる飲食にビジネスチャンスがあるとみている」と羅社長は語る。

 同施設では言葉に頼らない「ノンバーバルパフォーマンス『ギア-GEAR-』East Version」も上演している。言葉の壁を越えて理解できるショーそのものが、ラオックスのコト消費の方向性を示す。「中長期的に免税による売上構成比は半分にしたい」と、羅社長はインバウンドのさらなる成長を描きつつも、免税だけに頼らない経営基盤づくりに挑んでいる。

※2018年1月31日掲載予定の後編に続く
※『BCN RETAIL REVIEW』2018年2月号から転載

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