コンピュータゲームを使った競技「エレクトロニック・スポーツ(eスポーツ)」は、世界中で親しまれ、2022年にはアジア版五輪とも呼ばれる「アジア競技大会」で正式なメダル種目になる。将来的には五輪でのメダル種目化も視野に入っているが、暴力や戦争表現も鮮明に描かれるeスポーツを、多種多様な背景を持つ観客は受け入れられるだろうか。

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世界的な知名度の向上、五輪の種目化に影

 大会の会場に訪れる熱狂的なファンや、主に動画や生中継で観戦するライトファン、プレイヤーを含めた世界のeスポーツ人口は、2016年の時点で約2億2000万人に達した。12年の1億3400万人からは164.2%程度成長しており、17年末には3億3500万人に、20年にはメジャースポーツの規模に匹敵する5億人にまで増加する見込みだ。

 徐々に世界的な知名度が向上しているeスポーツは、22年に開催するアジア・オリンピック評議会(OCA)主催の国際スポーツ競技会「アジア競技大会」の中国・杭州大会で、メダル種目としての採用が決まっている。アジア版五輪とも呼ばれるスポーツの祭典が、競技人口や観客の増加につながることは間違いない。
 
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日本でも熱狂的なファンが増えつつある

 さらに、今年8月に実施した「ゲーミングPC業界座談会」では、参加者から「もし五輪の正式な種目にeスポーツが採用されれば、社会的な地位が向上し、世の中の認知度も飛躍的に高まるはず」との声があった。業界関係者やファンの間からも同様の意見が出ており、eスポーツの五輪メダル種目化を目指す雰囲気が生まれつつある。

 一方で、非差別や非暴力を前提におく五輪で、銃撃戦や戦車同士の撃ち合い、さらには殺傷シーンなどが含まれる場合もあるゲームを、五輪の競技として扱うのは難しいという反対意見もある。
 
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8月に開催されたサードウェーブデジノス主催のeスポーツ大会
「GALLERIA GAMEMASTER CUP」決勝戦の様子(スクリーンはWorld of Tanks) ※

 17年9月21日から24日まで開催された、コンピュータエンターテインメント協会(CESA)が主催する「東京ゲームショウ2017(TGS2017)」の基調講演では、「日本におけるeスポーツの可能性」をテーマに世界各国の有識者が議論を交わした。話題がeスポーツの五輪種目化に及ぶと、オランダの調査会社newzooでeスポーツ市場を中心に調査しているPieter Van Den Heuvel氏は「採用されれば知名度は上がるかもしれないが、ファンが本当に望んでいる大会にはならないかもしれない」とコメントした。
 
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TGS2017の基調講演では、Pieter Van Den Heuvel氏をはじめ、世界各国の有識者が議論を交わした

刺激的な人気タイトル、立ちはだかる倫理観の壁

 eスポーツで人気を集める主なタイトルは、社会的な認知度の比較的高い格闘ゲームを除き、以下の5タイトルだ。

 世界中のゲームメーカーの作品を7000以上取り扱うPCゲームのダウンロード販売プラットフォーム「Steam」で、17年10月現在プレイヤー数ランキング1位はサバイバルゲーム「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS(PUBG)」。同ランキングの上位に入る、テロ組織との戦いをテーマにした一人称シューティングゲーム「Counter-Strike(カウンターストライク)」、5人構成の2チームが互いの本拠点を狙ってプレイヤー同士が戦う「Dota 2」。このほか、会場に4万人以上集まり2700万人以上が視聴した大会もある「League of Legends」や、17年4月にプレイヤー数が3000万人を突破したシューティングゲーム「Overwatch(オーバーウォッチ)」がある。
 
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TGS2017で開催した「『PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS』FESTIVAL」

 どのタイトルも、自分の操作するキャラクターが手に持った銃や武器で、敵プレイヤーの操るキャラクターを倒すことが勝利へのカギになる。登場するキャラクターの人種や立場は多種多様で、さまざまな背景を持つ五輪の観客がどのように受け取るかは未知数だ。

 Pieter氏は「五輪の理念を尊重しながらeスポーツの大会を開けば、人気タイトルは採用されないだろう。そうなった場合に、果たして楽しめる大会になるだろうか」と、疑問を投げかける。「だれも楽しめないような大会になるくらいなら五輪では開催せず、従来通りの大会を工夫して成長させる方がいい、という判断も今後でてくるかもしれない」という。

 代わって候補にあがるタイトルは、サッカーやレースといった既存のスポーツを仮想化した作品になるため、現実の競技に比べて認知度が低いeスポーツの観客数には疑問が出てくる。

 誰が見ているかわからない点では、家電量販店も同様といえる。店頭でeスポーツ大会の映像を流せば、憧れを持った消費者が高単価なゲーミングPCを購入する可能性もあるが、暴力的なシーンは批判的な目で見られてしまうこともある。批判する側もされる側も、現実と仮想の区別をはっきりと付けられる大人ばかりではない点には、留意しなければならない。(BCN・南雲 亮平)


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