これまでゲーミングPC関連の企業は、各社独自の取り組みとして日本におけるeスポーツの普及拡大に向けた活動を行ってきた。それがここにきて、業界全体を挙げた動きになろうとしている。ターニングポイントとなったのは、2022年アジア競技大会でのeスポーツのメダル種目化だ。

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テーマ2 団体中心の現在の動き
アジア競技大会で公式種目に
業界を挙げた動きが加速

2022年代表派遣のためには、年内にも方針策定が必要

 eスポーツを普及・発展させようとする取り組み自体は、決して最近始まったものではないが、業界を挙げた動きが顕著になってきたのはここ数年のことだ。「2~3年前からようやく、『eスポーツ』という言葉が世の中で通じるようになってきた」と話す業界関係者は少なくない。
 
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東京・秋葉原の「e-sports square AKIHABARA」(ASUS仕様)

 直近の話題として注目されているのが、アジア・オリンピック評議会が主催する国際スポーツ競技会「アジア競技大会」で、22年に開催される中国・杭州大会のメダル種目としてeスポーツの採用が決まったことだ。
 
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日本AMD ストラテジック・アカウントセールス本部代理店事業部末崎秀昭マネージャー

 ただ、本紙6月号でも話題にした通り、大会に選手を派遣するためには、eスポーツの競技団体が日本オリンピック委員会(JOC)に加盟する必要があるが、現在日本には「日本eスポーツ協会」「e-sports促進機構」「日本eスポーツ連盟」と複数の団体があり、何らかの形で一本化を図らなければJOC加盟は認められない。
 
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サードウェーブ 早船淳司顧問

 設立の目的や経緯の違いから、現在はそれぞれが独自に活動を行っているが、各団体とも22年に向けて動く必要があることは認識しているという。アジア版五輪とも呼ばれるスポーツの祭典がeスポーツ人口拡大の追い風になるのは間違いないが、日本代表選手がそこにいなければ、国内への波及効果は極めて限定的なものになる。組織づくりや選手の選考などに必要なプロセスを考えると、年内には何らかの方針策定が求められるという。
 
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日本HP 森谷智行コンシューマー事業本部製品部プロダクトマネージャー

 今回の座談会では、国内PCゲーム市場活性化のためにも、業界全体のリーダーシップをとるポジションの必要性が指摘された。これまでもゲームソフトメーカー、PCや関連製品のメーカーなどがゲーム人口拡大に力を注いできたが、横の連携が十分でないために、活動が散発的なもので終わってしまうことも少なくなかった。業界の力を結集させるきっかけとしても、22年アジア競技大会は重要なイベントになりそうだ。

賞金額を上げても、人口が増えるとは限らない

 日本でeスポーツが盛り上がらない理由として、大会の賞金金額の上限が挙げられることも多い。ゲームメーカーが自社のタイトルで大会を主催した場合、賞金は景品表示法上の「景品類」にあたり、同法の規制により10万円が上限になるという見方だ。このほか、風営法上の規制や、賭博行為とみなされないための配慮など、法令との兼ね合いがあるために、海外のように優勝賞金が数百万~数千万円に上る大会が開きにくいという指摘がある。
 
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e-sports促進機構 白石恭一事務局長

 しかし、メーカーではない第三者がスポンサーとなり、10万円を超える賞金が出された大会は、国内でも数々の例がある。どのようなスキームで大会を開催するか、慎重に検討する必要はあるが、業界関係者は「賞金問題が国内eスポーツ不振の主要因とはいえない」と口を揃える。座談会では逆に「高額の賞金を掲げればeスポーツ人口が増えるかというと、そうではない」という指摘もあった。大会の規模を日本でも拡大していくには、知的スポーツとしてのゲームの普及を図り、世の中の認知を得ることが結局は早道であるようだ。(BCN・日高 彰)
 
7社5団体が議論 ゲーミングPC業界座談会 2017
開催日:2017年7月20日
場 所:BCNアカデミールーム
参加メーカー:日本AMD、日本エイサー、ASUS JAPAN、日本HP、サードウェーブ、デル、ユニットコム、SCARZ、DETONATOR、e-sports促進機構、日本eスポーツ協会、日本eスポーツ連盟(団体種別、50音順)

※『BCN RETAIL REVIEW』2017年9月号から転載