日本のeスポーツ業界を問う

オピニオン

2017/05/25 20:00

 ワールドワイドでのゲーミング市場は、2016年に910億ドル(約10兆円)規模に達し、世界的な盛り上がりとなった。そして22年には、eスポーツがアジア競技大会のメダル種目になることが発表され、話題となっている。しかし、この大会に日本が出場できるかが危ぶまれている。日本のゲーミング市場を拡大させるチャンスを、みすみす逃していいのか。

<POINT>

(1)成長するゲーミング市場
(2)eスポーツがアジア競技大会のメダル種目に
(3)大会に参加できない日本の現状

成長続くゲーミング市場、メーカーがブランドショップ展開

 米国の調査会社Superdataが無料で配布するゲーミング市場のレポートによると、16年の世界市場は910億ドル規模に達した。成長を続ける市場は、ASUSやDELLといった自社ブランドを持つ企業のブランドショップでの展開やキャンペーンなどで、日本でも市場の拡大が見込まれている。活況を呈するゲーミング市場に、17年4月、あるニュースが舞い込んできた。
 

デルが2016年12月に東京・秋葉原駅前にオープンしたゲーミングPC「ALIENWARE」の旗艦店

eスポーツがメダル種目に、アリババとOCAが協力

 アジアオリンピック評議会(OCA)が、22年に中国・杭州で開催される第19回アジア競技大会で、Electronic Sports(eスポーツ)を公式スポーツ種目に採用する意向を示したのだ。OCAはこの計画を、中国の電子商取引大手アリババグループなどが15年に設立したアリスポーツと協力関係を結んで推進していく考えだ。
 

OCAとアリスポーツが2017年4月、eスポーツをアジア競技大会の公式メダル種目にするために提携

 eスポーツとは、シューティングゲームやスポーツゲームなど、デジタルゲームを使用した競技。参加するプレイヤーは、一定のルールに従ってゲームをプレイし、野球のように得点を競い合ったり、ボクシングのように対戦したりする。

 アジア競技大会は、アジア地域を対象にした国際総合競技大会で、原則4年ごとに開催される。22年の開催国である中国では、大手民間企業がeスポーツを強力にバックアップして盛り上がりをみせているのに対して、26年に開催される第20回大会の開催地(愛知・名古屋)に決まった日本は、現時点ではeスポーツの競技に参加できない。ゲーミング市場を拡大するチャンスともいえるこの機会を、みすみす逃すおそれもあるのだ。

3つの団体が併存、危ぶまれる日本選手の参加

 OCAの憲章では、ある競技に選手を派遣するためには、国内でその競技を統括する唯一の団体が必要だと定められている。ところが、日本にはeスポーツを後押しする団体が、「一般社団法人 e-sports 促進機構」「一般社団法人 日本eスポーツ協会」「日本eスポーツ連盟」といったように複数に分散しているため、選手を派遣できない状況にある。

 団体に関する規約は、他の大会にもあてはまる。OCAが主催するアジア インドア・マーシャルアーツゲームズ(AIMAG)では、07年に中国・マカオで開催された第2回大会(旧アジアインドアゲームズ)から、eスポーツを正式種目として採用しているが、第4回(2013 /仁川)も含め、日本にはeスポーツに選手を派遣した実績が一度もない。

 また、17年9月にトルクメニスタン・アシガバットで開催される第5回大会では、e-sportsのデモンストレーションが行われ、種目には、サッカーゲームの「FIFA 2017」を使った対戦や、プレイヤーが2つのチームに分かれて対戦する「マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ(MOBA)」、クリア時間を競う「リアルタイムアタック(RTA)」などを採用する。団体を一つに定めていないため、この大会にも日本は選手を派遣できない見込みだ。
 

東京・秋葉原の「e-sports square AKIHABARA」で
2017年3月に開催されたゲーミングブランド「ASUS ROG」の新製品発表会

 eスポーツが正式種目に組み入れられることで、話題性が高まり、ゲーミング市場はいま以上に注目を集めるようになるだろう。日本選手が参加すればさらに盛り上がることは間違いないが、eスポーツ関連団体を一つにできなければ、スタート時点に立つことすらできない。(BCN・南雲 亮平)