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<KeyPerson>経産省の住田孝之審議官 「プレミアムフライデーが売り方・生活・働き方を変革する」

インタビュー

2017/02/24 12:30

 月末の金曜日は午後3時に仕事を切り上げる。2月24日からスタートした国民運動「プレミアムフライデー」を企画、立案したキーパーソンである経済産業省の住田孝之商務流通保安審議官を直撃。「モノ消費」から「コト消費」への変革を、国と経団連がタッグを組んで後押しする。小売業の売り方だけでなく、消費者のライフスタイルから働き方まで、大きく変わる転換点となるのか。

取材・文/細田 立圭志、写真/大星 直輝


プレミアムフライデーを企画、立案した住田孝之商務流通保安審議官

ブラックフライデーとは発想がまったく違う

―― 「プレミアムフライデー」の狙いをお聞かせください。

住田 着目しているのは「コト消費」です。単に安く買い物ができる日にするものではありません。いつもより、生活者の方がちょっと豊かに感じる日にしていただきたい。もちろん豊かさの感じ方は個人ごとに千差万別です。発泡酒ではなく、ちょっといいワインを飲むとか、いつものメンバーではない同窓会に参加するとか、スポーツや映画館に行く、ミュージアムに行く、親子の時間を大切にするでも、何でもいいのです。
 

プレミアムフライデーの共通ロゴ

 しかし、普段と違う日にするといっても、自分だけでそのロケーションをつくることはなかなか大変です。そこで月末の金曜日に「プレミアムフライデー」を設けて、流通を含む供給者側でコトをつくっていけば、生活者は参加しやすくなります。

―― 昨年末に日本でも米国の「ブラックフライデー」が実施されて話題になりました。「プレミアムフライデー」も同様の消費喚起策の一環に映りますが。

住田 発想がまったく違います。昨年の初めに、経済界の方々から『日本でもブラックフライデーをやりましょう』と提案されましたが、『それはやめましょう』と申し上げました。日本の消費者に安売りに走らせるのではなく、もっと豊かな満足感を得ていただくイベントにしたかったからです。

インバウンドも視野に 「月末の日本は楽しそう」

―― 流通側でコトを演出しようとすると、どうしても「ポイントがいつもより倍になる」といったバーゲン色が強くなります。流通側も相当な意識改革をしなくてはいけませんね。

住田 小売業の方々は対応が早い。そういうものも出てくると思います。しかし、プレミアムフライデーが一年に一度ではなく、毎月末の金曜日に行われる点がポイントです。半永久的に続くイベントになってほしいですね。そうすれば、お得感に頼らないイベントへと、自ら進化していきます。
 

年間を通じたロゴも作成。毎月実施することで「プレミアムフライデー」のステップアップを図っていく

 経団連等と一緒に「プレミアムフライデー推進協議会」を作りました。現時点では流通関係者が多いですが、文科系や芸術系、映画系、イベント系の方々も参加していただき、例えば、インパクトがあった、面白かったイベントを表彰する制度も作りたいと考えています。既にプロスポーツでは、金曜日の夕方の開催が予定されたり、観光業では2泊3日の旅行プランが組まれています。

―― 多くの生活者を動かすためには何が必要ですか。

住田 生活者の方が「なるほど」と思うコトを演出できれば、価格だけではない、もともと日本人に備わっていた健全で満足感を味わえる消費行動が取り戻されるでしょう。そうすれば「うちの町や学校でもやってみよう」という横展開が生まれます。その地域ならではの人材や資源を生かした伝統に基づく体験型イベントだっていいでしょう。ゆくゆくは「どうも月末の日本の金曜日は面白いらしいぞ」となれば、インバウンド需要も増えます。一歩も二歩も三歩も先をにらんで、ステップアップしていただきたいです。

 実は、こうした取り組みこそが、低迷する小売業の生産性やデフレからの脱却につながると確信しています。サプライ側とデマンド側の盛り上がりを同期させる難しさもありますが、一歩目がうまく踏み出せれば、あとは生活者の側から自然といろんなアイデアが出てくるのではないでしょうか。

―― 小売業で働く人たちは忙しくなりますね

住田 小売・サービス業の方々にとってはかき入れ時になりますね。たくさん稼いでください。そうすれば賃金にも反映されるでしょう。休みは月曜日など他の日にとっていただきたい。プレミアムフライデーをバレンタインデーのような日に定着させたい。今年の2月は、恵方巻き、バレンタインデー、プレミアムフライデーの3本立てですね。

・<「消費者の意識を変え、流通の生産性を上げる>に続く
 
■プロフィール

住田孝之(すみた・たかゆき)

1962年12月生。神奈川県出身。東京大学法学部卒業、ジョージタウン大学外交大学院修了。1985年4月通産省(現・経済産業省)入省。経済産業省経済産業政策局知的財産政策室長、産業技術環境局技術振興課長、商務情報政策局情報通信機器課長、日本機械輸出組合ブラッセル事務所長、資源エネルギー庁資源・燃料部長等を経て、2015年7月商務流通保安審議官に就任(現任)

・【動画】審議官が語る『施策の抱負』
 
◇取材を終えて

原稿執筆時は「プレミアムフライデー」実施の約1週間前。各社のリリースでは、スペルが違うが「フライ」にかけた「揚げ物食べ放題」など、想定されたバーゲン的要素が色濃い。また、ある大手家電量販店では通常、土曜日に向けて金曜日にまくチラシを、一日前倒しの木曜日にまく予定など、消費喚起に期待を寄せる。今後、流通全体で「コト消費」とは「どんなコト?」という研究がさかんに行われるようになれば、住田審議官が当初思い描いた、最初の一歩が踏み出せたことになる。大きな一歩につながるか注目だ。(至)
 
※『BCN RETAIL REVIEW』2017年3月号から転載

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