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<KeyPerson>全携協 竹岡哲朗会長、携帯ショップの女性が「日本のICT」を支える

インタビュー

2016/09/26 18:00

 ロボットやAI(人工知能)、ビッグデータの活用など「日本再興戦略2016」では2020年の日本の青写真が描かれている。「携帯ショップで働く女性が日本のICTを支える」と語る全国携帯電話販売代理店協会(全携協)の竹岡哲朗会長は、販売の最前線が抱える「苦情」という課題に真正面から取り組む。「女性が活躍する社会」の実現の試金石にもなっている。
 
取材・文/細田 立圭志
写真/大星 直樹



全国携帯電話販売代理店協会の竹岡哲朗会長

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2020年の「ICT立国」に向けた課題とは

―― 全国のキャリアショップ約8300店のうち、約7000店を組織化する、とても大きな協会ですね。

竹岡 あくまでもキャリアさんの販売代理店の集まりなので、われわれが個々のショップに直接指示を出したりするわけではありません。2016年7月現在、会員社数は131社で店舗数は6944店舗。全国8279店のキャリアショップの84%を占めます。設立は14年12月15日で、最初は12社、3634店舗(43%)からスタートしました。わずか1年半で急速に会員数と店舗数が増えました。

携帯電話の販売代理店は、家電量販店のインショップや併売店を含めると全国に約1万5000店あるといわれています。郵便局が全国に約2万5000局、コンビニエンスストアが約5万店なので、全国をカバーするインフラネットワークのひとつといえます。

―― 協会ではどのようなことに取り組んでいますか。

竹岡 協会が掲げているのは2点です。一つが販売の最前線で働くスタッフに寄せられるクレームの縮減です。もうひとつが、従業員満足度(ES)の向上です。政府は2020年までに日本を世界に冠たるICT(情報通信技術)立国にしようという目標に掲げています。そのためには、日本の消費者が等しくスマートフォン(スマホ)やタブレットに習熟しなければなりません。その際の消費者とのコンタクトポイントが、ショップの販売員なのです。日本のICTの基盤を支えていると自負しています。しかし、現場では寄せられる苦情が高止まりしているという課題があります。

スマホになって国民生活センターに寄せられる苦情や相談が年間約2万件まで増えて、なかなか減らない。消費者にとってスマホは、従来のガラケーとはまったく違う手のひらに乗るPC、「モバイルコンピュータ」なのです。操作が難しく感じるのは当然ですよね。ショップのスタッフにとっても説明や契約までの手続きに要する時間と顧客からの苦情が飛躍的に増えているのです。きちんと説明しても「店頭で十分な説明を受けなかった」とか「店頭が混んでいて説明が不十分だった」などの声が出てしまいます。現状を少しでも改善するために、政府などに意思表示ができる組織として、協会を設立する必要があったのです。
 

女性の活躍する社会目指し、クレーム縮減とES向上

―― 苦情は現場で働く販売員にとってかなりの負担ですね。

竹岡 安倍首相は「管理職の3割を女性にすべきだ」といっていますが、全国のキャリアショップ約8300店の3割が、既に女性店長の店なんですよ。店長は責任者なので、国の目標を既に達成しているわけです。ICTの核となるスマホやタブレットなどの使い方をわかりやすく、きめ細かく説明するには、女性ならではのきめ細やかな配慮や親切な対応が求められているのでしょう。

しかも、量販店の売り場も含む1万5000店舗で働く人口は12万人いて、その7割が女性なのです。女性が活躍する社会をリードしていくためにも、クレームの縮減は必須です。協会では「サービス向上委員会」を設けて、約2800店からクレーム事例を収集するシステムを構築しました。共通サーバーに情報が上がり、キャリアにも改善提案をフィードバックできる取り組みで、うまく機能しはじめています。

―― 従業員満足度(ES)の向上はどうでしょう。

竹岡 クレームの縮減とES向上の二つはリンクしています。苦情の少ない店は仕事の効率がはかどるので営業成績が上がります。またESのよい店は、若い社員がのびのびと働いているので、たくさんのお客様で賑わい、さらに売り上げが伸びるという好循環を生みます。逆に、苦情が多いとオペレーションの効率は下がります。ショップ経営にとって、二つの改善は重要なのです。協会では「定着率向上委員会」を設けて、正社員化率を高める取り組みも実施しています。昔の携帯ショップと違って、今では多くのショップで正社員化が進んでいます。安定して働いてもらうことで、スペシャリストに近いモバイル端末の販売員として、能力の高い人材の確保が求められているのです。

・<MVNOの普及も後押し契約数「2億」目指す>に続く

 
■プロフィール
1951年1月19日生まれ、大阪府出身。74年4月住友商事入社、98年7月ジュピターゴルフネットワーク社長、2000年7月住友商事映像メディア事業部長、03年1月ジュピター・プログラミング社長、06年4月住友商事理事、07年7月SCメディアコム社長、09年4月住友商事理事ネットワーク事業本部長、09年6月ディーガイア社外取締役、11年6月同社副社長執行役員、13年4月同社社長執行役員、15年1月一般社団法人全国携帯電話販売代理店協会会長(現任)。15年6月ティーガイア会長、16年6月同社顧問(現任)

・【動画】トップに聞く『協会の夢』
 
◇取材を終えて

全携協の竹岡哲朗会長は全国の携帯ショップの役割について「日本のICTの基盤を支えるコンシェルジュ」と語る。これまでは顧客とキャリアの板ばさみの中、両者からのストレスが販売代理店に集中しても個社ごとで対応するしかなかった。協会の役割は顧客、ショップ、キャリアの3者がうまく循環する仕組みを構築すること。MVNOが当初のネット販売からリアル店舗を再評価する動きもある。協会の取り組みは、業界の枠を超えたあらゆる方面から注目される。(至)
 
※『BCN RETAIL REVIEW』2016年10月号から転載