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大手キャリアのスマホ販売で、公取委が独禁法違反行為の具体例を公表

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2016/08/26 18:00

 NTTドコモとKDDIソフトバンクの大手キャリア3社のスマートフォン(スマホ)の販売をめぐり、“市場の番人”の公正取引委員会(公取委)が新たな一手を打った。8月2日に「携帯電話市場における競争政策上の課題について」と題した報告書を公表し、独占禁止法違反のおそれがある行為の具体例を示した。


取材に応える公正取引委員会経済取引局経済調査室の木尾修文室長

 スマホの販売をめぐっては、総務省が4月から、端末の価格を通信料金から大幅に割り引く大手キャリアの「実質0円販売」を是正するよう指導してきた。しかし大手キャリアは、ガイドラインの抜け道を狙ってキャンペーンを展開。両者のいたちごっこが続いていた。
 

「Smart Labo新宿東口店」の店頭に並ぶMVNOの端末

 公取委の報告書は、総務省のガイドラインより踏み込んだ内容なのが特徴。違反が認められた場合は「厳正に対処する」と、排除措置命令や課徴金納付命令といった独禁法に基づく厳しい処分をちらつかせる文言を盛り込んだ。MVNO(仮想移動体通信事業者)などの新規参入事業者へ、スマホ販売の門戸拡大を目指す国の本気度を示した格好だ。
 

通信、端末、アプリの各市場で競争を

 報告書の作成に当たり公取委は、大手キャリアやMVNO、販売代理店など数10社を対象に聞き取り調査を実施。その結果を基に「通信役務市場の競争」と「端末市場の競争」「アプリ市場の競争」の3項目について競争政策上の課題をまとめた。
 

 「通信役務市場の競争」では、「実質0円販売」をすることで「大手キャリアがMVNOよりも競争上、優位な地位を獲得することになる」として、見直しを要求した。さらに、SIMロックの撤廃や契約解除料の必要最小限化も求めた。

 また「端末市場の競争」では、大手キャリアが端末の分割払い総額を決めていることについて「独禁法(再販売価格の拘束)」に抵触する恐れがあると指摘。大手キャリアが下取りした中古端末の国内での再流通を、端末メーカーが禁止することも独禁法違反に当たる可能生があるとした。

 一方、「アプリ市場の競争」では、圧倒的なシェアがあるOS事業者が、大手キャリアや端末メーカーに自社アプリのデフォルト設定やホーム画面への配置を義務付け、新規参入や技術革新を阻害することなどを違反行為として例示した。

 報告書をまとめた公取委経済取引局経済調査室の木尾修文室長は「IoTやサイバーの世界の発達を支える基盤として、電波資源を有効活用するという観点から、通信や端末、アプリの市場で、競争原理を確立していくことは非常に重要だ」と述べた。(BCN・廣瀬 秀平)

・<公取委 報告書の狙い>に続く
 
※『BCN RETAIL REVIEW』2016年9月号から転載