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ファッションアイテムを目指せ! ソニー初の“女性向け”コンパクトデジカメ開発の舞台裏

インタビュー

2010/04/21 10:54

 ソニーは、コンパクトデジタルカメラ「Cyber-shot(サイバーショット) DSC-W350D」を4月23日に発売する。サイバーショットとして初めて女性をターゲットにしたモデルで、ソニーの女性社員が中心となって企画した。「DSC-W350D」はどうやって生まれたのか。開発の狙いを担当者に聞いた。

「W350D」の開発メンバー。(左から)ソニーマーケティング デジタルイメージグマーケティング部パーソナルイメージングMK課の森愛氏、ソニー DIプロダクツデザイングループ DIデザインチーム2の秋田実穂デザイナー、ソニー パーソナルイメージング事業本部商品企画部商品企画課の和泉美紀氏

パネルデザインとレンズリングで透明感や高級感を演出



 「DSC-W350D」のラインアップは「ジュエルピンク」と「プレシャスホワイト」の2モデル。ともに独特なデザインとラインストーンを採用したのが特徴だ。

Cyber-shot(サイバーショット) DSC-W350D

 「ジュエルピンク」は、本体カラーにサテンのように輝く淡いピンクを採用。前面には模様は見る角度で現れたり消えたりするボタニカルパターン(唐草模様)とラインストーンを施した。レンズリングは透明素材をクリスタルカットして何層もコーティングをすることで、見る角度で色が変わるようにしている。リング裏面はミラー処理で光が繰り返し反射するようにして透明感と輝きを表現した。

「ジュエルピンク」のミラー処理したレンズリングとボタニカルパターン(唐草模様)とラインストーンのデザイン

 「プレシャスホワイト」は、前面パネルにドットパターンとラインストーンを組み合わせたデザインを採用。2種類のインクを使ってプリントしたパターンは、見る角度で変わる。レンズリングは時計のベゼルをイメージしており、裏面をミラー処理することで、透明感と金属の質感、リングの印字が輝く高級感も醸し出す仕上げにした。

「プレシャスホワイト」のミラー処理したレンズリングとドットパターンとラインストーンのデザイン

 ソニーが女性を対象にしたコンパクトデジカメを投入した背景には女性ユーザーの広がりがある。ソニーの調査によれば、コンパクトデジカメ全体に女性が占める割合は、06年8月の29%から、09年8月には41%まで上昇しているという。

パーソナルイメージング事業本部商品企画部商品企画課の和泉美紀氏

 「女性にとってデジカメは、アクセサリーなどのファッションアイテムと同じ身近なものになってきている。そして購入で重視しているのはデザイン。そうしたニーズに応えたカメラを作ろうと思った」と、商品企画を担当したデジタルイメージング事業本部パーソナルイメージング事業部商品企画部の和泉美紀氏は説明する。
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ファッションアイテムのカメラを目指し女性社員が集結



 「DSC-W350D」はターゲットは20代後半-30代前半で、服やアイテムに自分らしさを求める女性だ。約1年前にスタートしたという開発プロジェクトでは、「女性向けというと色などを単純に考えがちだが、まず、どんな女性をターゲットにするのかを明確にすることから始めた」と、デザインを担当したクリエイティブセンターDIプロダクツデザイングループDIデザインチーム2の秋田実穂デザイナーは話す。

DIプロダクツデザイングループ DIデザインチーム2の秋田実穂デザイナー

 プロジェクトには、商品企画やデザイナー、マーケティングなど、ターゲット層と同じ世代の10名を超える女性社員が参加。「調査から比率が低いとわかった20代女性コンパクトデジカメユーザーの需要喚起」(マーケティングを担当したソニーマーケティング コンスーマーAVマーケティング部門デジタルイメージイングマーケティング部パーソナルイメージングMK課の森愛氏)と、そのなかで自分らしいファッションアイテムを楽しむ人をターゲットに据えた。

 プロジェクトでは、ファッションやライフスタイルの雑誌などを参考に、ターゲット女性が好むような質感やアイテムについて意見を出し合った。彼女たちが実際に使うと思われる化粧品や時計などの写真を組み合わせたビジュアルボードを作成。そのなかから「布のような柔らかで上品な素材感」「清潔感」「透明感」「輝き感」というキーワードを抽出し、「ノーブルビューティ」というデザインコンセプトを打ち出した。

プロジェクトメンバーの打ち合わせ風景(ソニー提供)

 出来上がったコンセプトから、20パターン以上のデザインを検討。最終的には「上品で主張が強くない」(秋田デザイナー)というボタニカルパターンとドットパターンを前面パネルのデザインに採用。幅広い層を取り込むために、女性らしさをイメージする「ピンク」と透明感を表現する「ホワイト」をボディカラーに採用した。また、「キラッと光る輝き感を出すためにレンズリングのミラー処理やラインストーンを使うことも決めた。ここは一番こだわった」(和泉氏)という。
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専用パッケージやケースも作り世界観にこだわる



 商品化に向けては「レンズリングやラインストーンのキラキラ感と本体カラーやパターンとのトータルバランスが大変だった」と秋田デザイナーは振り返る。

 これ以外にも、角度でパターンが見え隠れするようにするために特殊な印刷方法を導入。キラキラ感を出すレンズリングが透明で、リング部を固定するネジが見えてしまうためにネジ穴の位置を変えたり、「プレシャスホワイト」では白に青のパール色を少し入れることで高級感と清涼感のある白になるように工夫したりなど、苦労した。

 「DSC-W350D」は「カメラのトータルイメージに徹底的にこだわった」(和泉氏)という。商品パッケージにはカメラと同じデザインパターンを印刷し、各カラーの専用ケースまで開発した。専用ケースではカメラと同じ色、同じ模様と、ラインストーンを付けたロゴプレートを採用。ケースの裏地にもカメラと同じデザインパターンを型押しすることで、高級感やカメラ本体との統一感を持たせた。

カメラとの統一イメージでデザインした「ジュエルピンク」用(左)と「プレシャスホワイト」用の専用ケース。
各モデル合わせたクリスタル形状のチャーム付き専用ストラップが付属する

 多くの女性が開発に携わった「DSC-W350D」の真価が問われるのはこれからだ。「ソニーでここまでピンポイントにターゲットを絞った初めての挑戦したカメラで、ライフスタイルをイメージできるわかりやすいものができた。必ず女性に受け入れてもらえる」と秋田デザイナーは自信をみせる。和泉氏は「デジカメユーザーを広げていくという意味でも継続してやっていきたい」と意欲を燃やしている。(BCN・米山淳)