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使いやすさとクリアな画質が魅力、デジタル一眼「α700」試用レポート

特集

2008/01/17 16:45

 ソニーが07年11月に発売した「α700」は、デジタル一眼レフカメラ「α」シリーズの中核を担う待望の新機種だ。同社が06年7月、「α100」で市場に参入して1年あまり、満を持して発売された中級モデルに注目が集まっている。そこで、評判のカールツァイスの交換レンズ「Planar T* 85mm F1.4 ZA」とともに、「α700」をお借りして使ってみた。その試用感リポートをお届けしよう。


●深みがあるのにクリアでヌケがいい、素直な色と操作性

 「α700」のボディを手にとって、まず「おやっ?」と思うのは、「α100」ではカメラ上部の左右に1つずつ、計2つあったダイヤルが、左手側のモードダイヤル1つのみになったこと。また、背面のボタン類の配置などは、コニカミノルタの「α-7 Digital」を踏襲してはいるが、ボディ全体のフォルムはスクエア感が強調されている。そして、「α」のロゴやレンズマウント部に配色されたオレンジ色が、よりいっそう印象的なデザインになった。


 手にした限りでは、やや大ぶりなボディで、キヤノンニコンの中級機にはあるカメラ上部の液晶表示がないため「操作しにくいのではないか」というのが第一印象だった。しかし、いざ使い始めてみると意外に素直なカメラで使いやすいことがわかった。例えば背面液晶モニタの「クイックナビゲーション」と、適度な間隔で配置されたボタン類との操作感が非常にバランスがとれている。おかげでリズムを崩すことなく、素早く設定を変えながら撮影を続けることができた。コニカミノルタの資産とソニーの先進性がうまく融合し始めた表れ、と見ることもできそうだ。

 「α700」が搭載する撮像素子は、有効画素数1224万画素のCMOSセンサー「Exmor(エクスモア)」。一般的に映像信号は、センサーが受光するとセンサーチップからアナログ信号のまま出力され、それが別のチップ、または画像処理エンジンでAD変換(アナログからデジタルへ変換)されてから、デジタル信号として画像処理される。一方、ソニーが独自に開発した「Exmor」は、受光後にセンサーチップ内部でこのAD変換を行い、デジタル信号として出力する仕組みになっている。アナログ信号のままの部分が極めて短いため、モアレや偽色などのノイズが少ない、高精細でクリアな画質が得られるのだという。

 実際に撮影した画像を見てみると、確かにとてもクリアで、余計な色のりのない自然な色合いに感じられた。これは、画像処理エンジン「BIONZ(ビオンズ)」の効果もあるのかもしれないが、しっかりと深みのある色を表現しながらも、ヌケが良く、透明感が高い。


 他のデジタル一眼レフカメラであれば、例えばキヤノン色やニコンD2Xカラーといったような、メーカーや機種が描き出す色とでもいうべきものがあるが、「α700」の場合は、被写体によりそった素直な発色をする、とでもいえばいいだろうか。風景撮影などでは、ややもの足りなく感じるかもしれないが、ポートレート、とりわけ女性の肌の描写ではかなり期待できそうだ。

●「Dレンジオプティマイザー」は使い方に注意が必要かも

 「α」シリーズでとくに注目の機能といえば、やはり「Dレンジオプティマイザー機能」だろう。これは、明暗差が大きいシーンで、被写体が黒くつぶれたり、背景が白く飛んでしまったりした場合に、最適な露出と階調表現に自動補正してくれる機能だ。ニコンの「アクティブD-ライティング」や、キヤノンの「高輝度側・階調優先機能」などとも近い自動補正機能である。

___page___ 「α700」のDレンジオプティマイザー機能には、画面全体を均一に補正する「スタンダード」と、画面を細かな領域に分けて黒つぶれ・白飛びを補正する「アドバンスオート」に加えて、補正効果を1?5段階で選べるアドバンスレベル設定機能が新たに追加されている。

 おすすめは「アドバンスモード」。屋外での撮影などほとんどのシーンで、Dレンジオプティマイザーをアドバンスモード(D-R+)に設定した状態で撮るほうが、黒つぶれや白飛びの少ない良好な露出・階調の画像を得ることができる。


 ただし、Dレンジオプティマイザー機能がすべてのシーンに有効かというと、そこには注意も必要。明暗差が極端に激しいシーンや、あえて暗部を落として表現したいシーンなどでは、不自然に暗部が明るくなってしまう場合があった。また、高ISO感度での撮影では、かなり盛大にノイズが目立ってくる傾向も見られた。むしろ、Dレンジオプティマイザー機能をオフにして撮影するほうが、高ISO感度ではノイズを抑えることができる。ISO800以上での撮影や夜景撮影では、Dレンジオプティマイザー機能は使わないほうがいいかもしれない。


___page___●「クックナビゲーション」で抜群に扱いやすい操作性が秀逸

 そうした機能のオン・オフや各種設定を変更するために、メニュー項目を延々と辿っていかなければならないデジタルカメラもあるが、「α700」の場合は、操作はとても直感的でスピーディーに行える。それを可能にしているのが、前述した「クックナビゲーション」だ。

 3.0型で約92.1万ドットの大型背面液晶モニタは、高精細で明るく、日中屋外でもとても良く見える。撮影画像を確認するときも、視認性良好ですこぶる気持ちがいい。


 その大型液晶モニタに、撮影情報やカメラの設定情報を見やすい文字やアイコンで集中表示するのが、「ナビゲーションディスプレイ」である。この「ナビゲーションディスプレイ」の状態でファンクションボタンを押すと、「クックナビゲーション」での操作が可能となる。あとはマルチセレクターで設定したい項目を選択し、前/後ダイヤルで設定値を変更するだけだ。Dレンジオプティマイザー機能はもちろん、撮影に関わるほとんどの設定変更は、メニューを辿らなくても、「クックナビゲーション」から直接操作することができるのである。

 他のデジタル一眼レフカメラでも、背面液晶モニタに情報を表示したり、そこから設定変更ができたりする機種はあるが、操作の容易さや素早い操作性、操作に対するレスポンスの良さ・速さといった点では、「α700」の「クックナビゲーション」は群を抜いている。とにかく、使っていてまったくストレスを感じることがなかった。あれこれ設定を変えながら、リズム良く撮影が楽しめた。これは、期待以上の好感触であった。

 今回、縦位置グリップは試用する機会がなかったが、「α700」の縦位置グリップは、横位置とほぼ同じホールディング性と操作性を実現しているという。カメラ雑誌などでの評価も高いようだ。装着するとボディサイズが大きく重くはなるのだが、ポートレートなど縦位置での撮影機会が多い場合は、縦位置グリップはぜひそろえておきたいオプションといえそうだ。

●期待以上の完成度だけに、もっと頑張ってほしいところも

 とてもクリアで自然で、深みがありつつ素直な色を再現する高精細な画質。直感的にスピーディーに扱える抜群の操作性。ハイアマチュア向けデジタル一眼レフカメラとして、期待以上の完成度が実感できた「α700」だが、それだからこそ、あえて苦言を呈したい部分もある。

 1つは、AF性能。「α700」は11点のAFセンサーを搭載するが、そのうちの中央1点のみがデュアルクロスセンサーで、他はすべてラインセンサーである。他の中級機では複数のクロスセンサーを搭載して、中央以外でも縦横線を検知して合焦精度を高めているのに対して、「α700」のAFはやや見劣りがする。実際、試用していて、中央の1点でさえ思うようにピントが合ってくれないことが何度かあった。同時に同じ被写体を狙ったニコン(D200)ではドンピシャでピントが合うので、なおさら「α700」のAFには、もうちょっと頑張ってほしかった。

 もう1つは、クイックリターンミラーの動作制御である。「α700」の高速連写性能は、最高約5コマ/秒。ハイアマチュア向けとしても決して遅い連写性能ではないのだが、それにしてもミラーの動きが緩慢に思えた。シャッターボタンを押すと、クイックリターンミラーが跳ね上がり、設定したシャッター速度の瞬間だけ撮像素子に露光させ、再びミラーが下りてくる。その間、ファインダー像はブラックアウトして何も見えなくなるのだが、このファインダーの像消失時間が、キヤノンやニコンの中級機に比べるとやや長いように感じられたのである。もちろん、シャッター速度が設定値より遅くなるわけではないので、露出には影響はないはずなのだが、ミラーの上下動がほんのわずかもっさりしているのではないだろうか。

___page___ また、バッテリーの最大撮影可能枚数ももう少しほしいところ。カタログ上は約650枚となっているが、試用したケースでは、満充電から280枚ほどでバッテリー残量は20%を切っていた。付属していたバッテリーの劣化度や、手ブレ補正機能の動作状態などの使用状況によっても違ってくるのはわかるが、それにしても、もう少し撮影枚数が伸びてほしいところである。1日フルに撮影して回ろうと思うなら、予備のバッテリーを用意しておいたほうがいいだろう。

 「α」シリーズの大きな強みは、本体に内蔵する手ブレ補正機能だ。シャッタースピード換算で約2.5?4段分の補正効果がある。「α100」では約2?3.5段分だったので、さらに強力になった。一方、最近ではライブビュー撮影機能の搭載が標準化しつつある。「α」シリーズでも、ぜひ対応してほしい。

●名レンズ「プラナー」の描写がデジタル+AFで味わえる

 ところで、「α700」には、同時に発売されたデジタル「α」シリーズ専用のレンズ「DT 16-105mm F3.5-5.6」をセットにしたレンズキットが用意されている。BCNが1月16日に集計したボディ単体の市場推定価格は16万4400円。レンズキットは同20万7000円。レンズ単体のメーカー希望小売価格は7万3500円だから、ボディだけでなくレンズも必要なら、当然ながらレンズキットのほうがお買い得だ。


 「DT 16-105mm F3.5-5.6」は、35mmフィルムカメラ換算で広角24mmから望遠157.5mm相当までをカバーする高倍率ズームレンズ。これ1本で、多くの撮影に対応できる万能レンズだ。とくに、広角側が24mmまであるので使い勝手がいい。デジタル専用設計なので、コントラストが高く、周辺部まで解像感のある描写をしてくれる。サイズや重さも、「α700」に装着するとちょうどバランスが良く、ズームリングの操作感もなかなか良好だ。

 さて、期待のカールツァイスレンズ「Planar T* 85mm F1.4 ZA」のほうはどうかというと、これはもう、期待以上の写りをしてくれる。美しいボケ味、極上のなめらかさを持った描写だ。収差を徹底的に除去したデジタル専用の高性能レンズは、解像度が高いのはいいのだが、逆にシャープ過ぎて、どこか人工的な絵を感じることがある。それに比べると「Planar T* 85mm F1.4 ZA」は、シャープでありながらも、ふわりとした柔らかさのある絶妙の写りが味わえる。まさに、ドイツ・ツァイス社の往年の名レンズ「プラナー」が誇った描写の味わいを、デジタルのさじ加減で現代に蘇らせた感じなのである。これは、間違いなく最高のポートレートレンズの1つと断言して間違いないだろう。


 「α」レンズには現在、3本のカールツァイスレンズがラインアップされている。ソニーが発表したレンズロードマップでは、今後もさらにツァイスレンズの充実が図られていく計画だ。ツァイスレンズをAFで使うことができるデジタル一眼レフカメラは、現在のところ、ソニー「α」シリーズを置いてほかにない。「Planar T* 85mm F1.4 ZA」が使いたいから「α700」を選ぶ、という選択基準も、扱く真っ当なことなのである。「α700」のクリアで素直な画質と合わせると、極上のポートレート撮影が楽しめるはずだ。


●2008年登場予定のフラッグシップ機へと期待も高まる

 ただ85mmレンズは、「α700」に装着すると焦点距離が35mmフィルムカメラ換算で127.5mm相当。けっこうな望遠になってしまうのが残念だ。そこで期待が高まるのが、すでにモックアップが発表され、08年の発売が噂されている「α」シリーズのフラッグシップ機である。これには、35mmフルサイズの撮像素子が搭載される可能性が高いとも噂されている。もしフルサイズなら、85mmレンズを、そのものどおり85mmの焦点距離で使用することができるわけだ。画角、パース、ボケ味など、「Planar T* 85mm F1.4 ZA」の持つ味わいを余すところなく堪能できることになる。

 「α700」の完成度が予想以上に高く、使いやすくて、しかも使っていて気持ちのいいカメラに仕上がっているので、フラッグシップ機のほうも、いまから登場が楽しみになってきた。(フリーカメラマン・榎木秋彦)

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