HDDムービーカメラ「gigashot V10」。東芝が9月28日に発表した新しいコンセプトのムービーカメラだ。しかし現在はネット直販のみでまだ店頭には並んでいないため、直接手にとって実機を試せる「タッチ&トライ」イベントが開かれた。会場で明らかになったのは意外にも高いHDDムービーカメラの認知度だった。そこでイベントの模様を紹介しながら、これから広がりを見せそうなHDDムービーカメラのふたつの将来性について、企画担当者のインタビューを交えてまとめてみた。

 HDDムービーカメラ「gigashot V10」。東芝が9月28日に発表した新しいコンセプトのムービーカメラだ。しかし現在はネット直販のみでまだ店頭には並んでいないため、直接手にとって実機を試せる「タッチ&トライ」イベントが開かれた。会場で明らかになったのは意外にも高いHDDムービーカメラの認知度だった。そこでイベントの模様を紹介しながら、これから広がりを見せそうなHDDムービーカメラのふたつの将来性について、企画担当者のインタビューを交えてまとめてみた。


学生風、勤め人風からお年寄りまで幅広い層が訪れた埼玉会場


●告知はネットだけ……それでも小さな4会場に1000人近い来場者

 イベントは福岡、大阪、名古屋、埼玉の4会場で開催された。HDDムービーカメラ「gigashot V10」は、現在のところ東芝の直販サイト「Shop 1048(Toshiba)」だけでネット販売されている商品。一般の家電量販店では注文はおろか、デモ機すらも展示されていない。「カメラやビデオといった光学機器商品は単にスペックだけでなく、実際に手にとって感触を確かめ、自分のフィーリングに合うかどうかを確認してから購入したい、というお客さまからの要望が多く寄せられた。そこで、実際に商品に触れていただける場、とくに地方のお客さまにも手に取っていただける場を設けようということになった」と、東芝 デジタルメディアネットワーク社 経営企画部 戦略マーケティング部Web戦略担当の中村光明グループ長はイベントの狙いを語る。


中村光明グループ長


 今回、イベントの開催と事前参加申込みは、すべてネット上だけで行われた。4会場合わせた全来場者のうち、約1/3が事前登録者だったそうだ。「gigashot V10」の商品サイト内だけで告知されていたイベント情報を見て参加したわけだから、発売前からかなり注目を集めている商品であることがうかがえる。もちろん、事前登録なしでも参加は可能で、全体の約2/3がそうした来場者だったという。

 来場者数は、各会場とも土日2日間の開催で「福岡が約200名、大阪が約250名、名古屋が約150名、そして埼玉が約330名。合計すると4会場で約930名のお客さまにご来場いただいた」(中村グループ長)という。埼玉会場以外は、オフィスビルの中やイベントホールの小会議室といったクローズドな会場で、通りを歩いていてふらりと立ち寄るといった環境ではなかったようだから、それを考えるとかなりの盛況ぶりだったと言えるだろう。

●意外にも認知度が高いHDDムービーカメラ

 各会場では、「gigashot V10」本体のほか、世界最小の0.85型HDDも直接さわれるように展示されていた。「gigashot V10」は専用クレードルを介して東芝のパソコン「Qosmio」とつながっており、撮影した動画をドラッグ&ドロップでパソコンに取り込める手軽さを実際に体感することができるようになっている。また、パソコンに取り込んだ静止画を携帯オーディオ「gigabeat」に転送して、写真を持ち歩くスタイルも提案していた。


ギネスブックにも掲載された世界最小の0.85型HDD


 来場者からは、「HDDムービーカメラとは何?」といった極めて根本的な質問はほとんど聞かれなかったという。中村氏の話では、「HDDムービーカメラがどういうものなのかを知らない、というお客さまはほとんどいなかった。これは、先行するビクターさんの商品である程度認知されているからだと思う」ということだ。むしろ実際に手にとってみた時の率直な感想として「こんなに軽いんだ」「小さいねえ」「クレードルが付いてるの?」「パソコンへの転送が楽だねえ」といった声が多く聞かれたという。そこで、埼玉会場で2人の来場者にお話をうかがってみた。

 「ギネスブックにも載った0.85型HDDを搭載したムービーカメラに、実際にさわれる機会があるというので、このイベントをチェックしてました。いや、ホントに小さくて軽いですよね。驚きました。おまけに500万画素あるので、これ1台でビデオもカメラも両方OKじゃないですか。もう別々に持ち歩く必要もなくなりますよね。価格もデジカメなみだし。うーん、ほしくなりましたね」(東京都練馬区・竹内さん)

「ビデオカメラは、2年くらい前に買ったものを持ってるんです。主に娘を撮ってるんですが、これまでは編集なんてしたことなくて。せいぜいカメラ本体に付いている機能でタイトルを打ち込むことくらい。HDDムービーカメラならパソコンに映像を取り込んで編集するのも簡単みたいだぞ、と友人に誘われたので見に来ました。これならDVDに保存しておくのも楽そうですね。値段も手ごろですけど、いまのビデオもあるしなあ。こう次々と新製品が出てくると困りものですね(笑)」(埼玉県大宮市・花俣さん)

 たしかに、HDDムービーカメラとは何かをすでに知っていて、さらに使い勝手などを確認したくて会場を訪れた、という来場者が多かったようだ。

●1台のHDDだからこそ一覧性がある、あえてHDD交換には対応しなかった

 それでは来場者全体での質問の傾向としてははどんなものが多かったのか? 「gigashot V10」の開発に携わり、埼玉会場でも来場者の質問に熱心に答えていた東芝 デジタルメディアネットワーク社 モバイルギガ事業部 企画担当の内田高弘参事に尋ねた。「やはり、ビクターの商品との違いを気にされる質問が多かった」という。記録媒体がHDDということで、耐衝撃性能を気にする人が多いのではないかと思ったのだが、それに関する質問はほとんどなかったようだ。


熱心に質問する来場者も数多く見受けられた


 「ビクターのHDDムービー Everio との一番の違いは、HDDが交換可能かどうか、というところ。gigashot V10 は交換できない。それはなぜかというと、HDDを交換するのはテープを交換するのと同じで、一覧性に欠けると考えたから。弊社のHDD-DVDレコーダー、RDシリーズの使われ方を見ても、HDDに録画できるだけ録画する、という人が圧倒的に多く、こまめにDVDに焼いている人は意外に少ないという調査結果が出ている。すべてを1つのHDDに取り込んでおいて、必要に応じて見たい番組を呼び出す。あの映像はどのHDDに記録していたっけ? ということになっては意味がない。一覧性があることがHDDの強みだと考えたから、あえて交換できるようにはしなかった。『gigashot V10』のHDDは4GBと限られているが、その分、パソコンのHDDに簡単に取り込めるように専用クレードルを付属している」と内田氏は説明してくれた。


専用のグレードルを介して簡単にパソコンと接続できる


 実は、耐衝撃性能という点でも、「gigashot V10」と「Everio」は違うアプローチをしている。撮影中にカメラを落とすなどして衝撃を受けた場合、「Everio」はHDDの破損を防ぐことを最優先にしてディスクに書き込む磁気ヘッドを退避させる。そのため、撮影途中だった映像は記録・保存されない。つまり、カメラを落とす直前の映像は残らないのである。対して「gigashot V10」は、いったん磁気ヘッドを退避させた後、すぐに元の状態に復帰させることを優先して開発されている。それにより、撮影途中だった映像はもちろん、落下直後からの映像も記録し続けるという違いがある。「こうした違いは、先行するビクターという存在があったからこそ開発に取り組めたもの。HDDムービーは、まだまだ市場に出始めたばかり。両社で協力できるところは協力し合い、またお互いに切磋琢磨して、HDDムービーを世の中に広めていきたい」と内田氏は語る。

 さて、今回の「タッチ&トライ」イベントでは、会場から直接「Shop 1048」にアクセスして、その場で「gigashot V10」を購入予約できるカウンターも用意されていた。4会場でトータル90台近くの予約があったという。来場者のおよそ10人に1人は予約した勘定になる。


その場で「gigashot V10」の購入予約ができるコーナーも


 「予約」としたが、実際にはすでに10月21日から出荷がスタートしている。中村氏によれば、「10月22日現在で受注数は2,000台を超えており、すでに初期ロットは完売が近い」という。どうやら好調な滑り出しのようだ。また、内田氏からは「初期ロットは直販サイトのみでしか取り扱っていないため、この価格を実現できている。ただ、今回のイベントを通じて、こうした商品はやはりお客さまに手にとって見ていただくことが必要だということがよくわかったので、次のロットからは、販路についても検討していく必要があるだろうと考えている。販路を広げるとなると、流通経費の問題などから若干、価格が上がることになるかもしれない」との話もあった。

●小型軽量の携帯電話路線か大容量のムービー継承路線か

 最後に、HDDムービーカメラの今後について、内田氏は次のように分析してくれた。「HDDムービーカメラの将来には、2つの選択肢があると思う。ひとつは、さらなる小型軽量化を目指す方向。0.85型を超える超小型HDDの開発やバッテリ技術の改善で、携帯電話よりも小型軽量のムービーカメラをつくり出すこと。この方向は、現在テープメディアを使っているビデオカメラユーザーに、HDDムービーカメラへの乗り換えを促すというよりも、むしろ、携帯電話で写真を撮ったりムービーを撮ったりしている層に、違和感なくビデオカメラを使ってもらえるようになるという可能性を秘めていると考えている」


内田高弘参事


 「もう一方の方向性は、カメラ自体の大型化を伴っても、とにかく大容量で高速アクセスのHDDを搭載していくという流れだろう。0.85型HDDではいくら容量アップしても限界がある。それに対して、パソコンやHD-DVDレコーダーなどに使われる3.5型HDDの容量は、まもなくテラバイト(1TB=1,024GB)に達しようとしている。いちいちパソコンに取り込んだりDVDに焼いたりせずに、撮った映像をすべてビデオカメラ本体に保存して一覧できるようにしておきたい、というニーズが高まれば、大容量HDDが必須だ。HDDムービーカメラは、そうした使い方ができる可能性も秘めている。もちろん、デジタルハイビジョンで映像をたっぷり撮影・録画するとなると、これも高速アクセス可能な大容量HDDのほうが有利だろう。小型軽量化か、大容量化か、どちらのニーズが今後高まっていくのか、市場の動向に注目していきたい」

 どうやら、HDDムービーカメラの可能性は今後ますます広がっていきそうだ。 HDDムービーを販売する2社のうち、ビクターの「Everio」は店頭で手に取ることができるが、ネット販売のみの東芝「gigashot V10」は店頭では見ることができない。実機にさわって、さまざまな疑問を開発者に直接聞くことのできる「タッチ&トライ」イベント。次の開催予定は、10月26日から東京ビッグサイトで開催されている「WPCエキスポ」会場内とのこと。興味のある方は、ぜひ出かけてみてはいかがだろうか。(フリーライター・中村光宏)