「家業の哲学」を経営に生かす――第26回

千人回峰(対談連載)

2008/08/04 00:00

山田哲也

山田哲也

サンワサプライ 代表取締役社長

 業務内容は時代の移り変わりとともに変化してきたものの、実はサンワサプライの山田社長は3代目経営者である。優れた経営者は、それぞれがひとつのカテゴリー、つまり固有の哲学をもっていると常々感じていたが、彼には「家業の哲学」があるのではないかと私は思っている。いま「サンワ2.0」を標榜し、次世代の方向性を探るなか、その過去・現在・未来について語っていただいた。【取材:2008年6月19日、フォーシーズンホテル丸の内 東京にて】

 「千人回峰」は、比叡山の峰々を千日かけて歩き回り、悟りを開く天台宗の荒行「千日回峰」から拝借しました。千人の方々とお会いして、その哲学・行動の深淵に触れることで悟りを開きたいと願い、この連載を始めました。

 「人ありて我あり」は、私の座右の銘です。人は夢と希望がある限り、前に進むことができると考えています。中学生の頃から私を捕らえて放さないテーマ「人とはなんぞや」を掲げながら「千人回峰」に臨み、千通りの「人とはなんぞや」がみえたとき、「人ありて我あり」の「人」が私のなかでさらに昇華されるのではないか、と考えています。
株式会社BCN 社長 奥田喜久男
 
<1000分の第26回>

※編注:文中に登場する企業名は敬称を省略しました。
 

流行と本物の流れを見きわめるために

 奥田 山田さんはいつも世界中を飛び回っておられますが、なぜ、そんなにいろいろな国に行くのですか。

 山田 私どもは、コンピュータサプライやアクセサリを扱っていますが、なるべく早く、タイムリーに商品を提供したいという思いがあります。だから、より早く新しい情報に触れ、キャッチアップする必要があるんです。情報を得てから製品化まで何か月かかかりますから、情報も「芽」の段階でつかむということですね。

 世の中の傾向をつかむためには、定点観測もすれば、別の地点を見る必要もあります。たとえば「iPhoneの波がくるだろう」といっても、いわゆる「流行」と「本物の流れ」というのは別物です。しかし、両方とも同じ波としてやってくる。それを見分けるためには、奥田さんの貴重な(笑)話を聞いたり、世界を見る必要があるということです。

 奥田 世界の中での「定点」というと、どこになりますか。

 山田 米国のシリコンバレーには年に2-3回行きます。あと、秋のコムデックス(かつての世界最大規模のコンピュータ展示会)が行なわれていたラスベガスには、第1回から最終回まで皆勤賞で行っていました。かつてWCCF(西海岸コンピューター見本市)で、西和彦さんが破れた靴を履いてきていた頃からずっと行ってるんですよ。

 奥田 それはすばらしいですね。すごい!

 山田 そのほか、定点としては、セビット(ドイツ・ハノーバー、3月)、コンピューテックス(台北、6月)、そのほか香港ではいろいろな展示会が行なわれていますので、よく足を運んでいます。
 

オフコンを導入したことがIT業界との接点に

 奥田 ところで、山田さんがIT業界に関わるようになったきっかけは、どんなことだったのでしょうか。

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