“change”こそが原動力だ――第29回

千人回峰(対談連載)

2008/10/27 00:00

古河建純

古河建純

ニフティ 常任顧問

最高のインフラを活用できていない日本

 奥田 この時期、インターネットのインフラ整備も急速に進みました。

 古河 ええ。2000年頃は、日本のインターネット料金は世界一高いといわれていました。ISP(プロバイダ)の料金が高いのではなく、従量制の電話料金が高かったからです。ところが、ADSL、そして光ファイバーが普及したことによって、2005年には日本のインターネット料金は世界一安くなりました。これは、ソフトバンクの孫正義さんの功績もあるでしょう。NTTがソフトバンクに負けじと、光ファイバーの敷設を急いだからです。アメリカでは、ようやく光ファイバーを導入したばかりで、インフラ整備については日本がずっとリードしているといえるでしょう。

 ただ、インフラは整備されたものの、インターネットを使って事業を起こしたり既存の産業をどう変えるのかという点がまだ足りません。これは私が思っているだけのことかもしれませんが、たとえば少子高齢化に対応するために、インターネットを活用することができるのではないかと思います。インフラ面では日本が先頭を走っているのですから。

 それから、私が注目しているのは、政治活動におけるインターネット活用です。米大統領の予備選で、民主党のオバマ候補は、今年2月の1か月間で55億円の寄付をネット経由で集めました。73万人が寄付し、うち50%の人は25ドル以下、90%の人は100ドル以下だったそうです。つまり、ネットを使って少額の献金を積み上げたわけです。

 当初はクリントン候補のほうがお金を持っているとみんな思っていたのですが、このインターネット献金でまったく立場が逆転してしまいました。まさに、“change”です。もちろん、25ドル献金した人が別の候補に投票することはありえません。つまり、選挙制度そのものが変わったといえるのです。ところが日本の公職選挙法では、選挙のときにインターネットを使ってはいけないことになっています。それがおかしいと誰も言わないことが不思議でしかたがない。

 もちろん、インターネットそのものが何かを変えるわけではありません。変化を助長するインフラとしてうまく使うことができれば、いままでできなかったことができるようになるということです。そういう意味では、先ほどのCCと同じですね。

 奥田 このあいだ、東大の坂村健先生が「日本は決めてからそれに従う大陸法であり、アメリカは事例の積み重ねによって決まる英米法だ。つまり、アメリカは社会が認めればOKというスタイルをとっているが、少なくともインターネット関連の規定は英米法によるべきだ」という趣旨のことを書いておられました。

 古河 まさにその通りですね。私もそう思います。

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