実は日本生まれ「モスバーガー」の“モス”って?

経営戦略

2021/08/29 17:30

 【なぐもんGO・82】 カタカナ表記だといかにも“海外”という雰囲気だが、実は日本生まれの「モスバーガー」。創業者の名前でもなければ、商品の特徴というわけでもないこの名称にどのような由来があるのか。モスフードサービスに聞いてみた。予想していた「Moss」とは違うようだ。

モスバーガーの成増店

1号店はわずか2.8坪からスタート

 モスバーガーは1972年3月12日に東京・板橋に誕生したバーガーショップ。1号店はわずか2.8坪で、カウンター席が五つあるのみだった。日本人の舌にもあうハンバーガーが特徴だが、ミートソースは100回以上も試作して開発したという。それから時が経ち、現在の店舗数は約1250店。海外展開も進み、世界規模のバーガーショップに成長している。
 
創業期の成増店

 モスバーガーを生み出したのは、元証券マンの櫻田慧氏(慧は旧字体)。「どうせ仕事をするなら感謝される仕事をしよう」「仲間とともに同じ目標に向かって成長できる組織を作りたい」という想いから脱サラして独立。「マーチャンダイジング・オーガナイズ・システム」という企業を立ち上げ、さまざまな商品を扱った。最終的にハンバーガーにたどり着いたのは、証券マンとしてアメリカに駐在していた頃に出会ったハンバーガーショップ「Tommy's」との出会いがきっかけだ。

 Tommy'sは決して好立地とは言えない場所にあったが、材料と味のよさ、思わず見とれる料理の腕で大繁盛していたという。同店を思い出した櫻田氏は、岩手県大船渡市の料亭に10人兄弟の末っ子として育ったこともあり、「本当においしいものを提供すれば、一等地でなくともお客さまは来てくれる」と、ハンバーガーの道へ進んだ。
 
創業者・櫻田慧氏

「MOS」に込められた意味

 その後はTommy'sで無償の修行などを経て、ついに新たなハンバーガーショップを立ち上げるにいたった。社名を決める際、櫻田氏は前身である会社の頭文字「M」「O」「S」を活かそうと考えた。そしてハンバーガーショップに合わせて考案されたのが、「MOUNTAIN(山のように気高く堂々と)」「OCEAN(海のように深く広い心で)」「SUN(太陽のように燃え尽きることのない情熱を持って)」という意味だ。

 モスフードサービスの広報担当者は、「創業者・櫻田慧が、大学時代にワンダーフォーゲル部に所属しており、登山などを通じて自然を愛していたことが大きいです。人間・自然への限りない愛情と、このような理想の人間集団でありたい、という願いを込めて名づけました」と、自然を代表する三つのキーワードを選んだ理由について説明する。
 
モスバーガーのロゴにある「MOS BURGER」は手書きの文字

 ちなみに、モスフードサービスの「M」をかたどったロゴは、食材であるパンの豊かなイメージから生まれたもの。MOS BURGERの部分は手書きの文字が特徴で、手作り感、暖かさを表現している。これは、同社が顧客の注文を受けてから作るアフターオーダー方式を採用することで、おいしさ、健康にこだわった手作りの味わいを特徴としていることを表現している。

 また、赤い色は情熱、真心、燃える太陽、力強さなどを表しているとのこと。ロゴは「M」だけに見えるが、“MOS”の全てが詰まっているようだ。(BCN・南雲 亮平)