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<Top Vision>アクア 日本代表 山口仁史 新生「アクア」の挑戦 足元固め、ラインアップを強化

インタビュー

2016/06/24 18:00

 2016年1月、社名を「ハイアールアジア」から「アクア」に変更。その新生アクアの日本代表の山口仁史氏にインタビューした。
 

 
アクアの山口仁史日本代表

取材/道越一郎 BCNチーフエグゼクティブアナリスト
文/廣瀬秀平
写真/川嶋久人

社名変更で一定効果も 課題は新規顧客への認知拡大

道越 今年1月に「ハイアールアジア」から「アクア」に社名変更しました。効果はいかがですか。

山口 効果を実感しているのは、メディアに取り上げていただくとき、主語が「アクア」になったことに尽きます。これまでは「ハイアールアジア」の社名で「アクア」ブランドを展開していたので、ハイアールとアクアを変換するのにワンクッションが必要でした。そのジレンマが解消され、「アクア」という主語がストレートに伝わるようになった。第一段階としては狙い通りです。

 ただ、一般の消費者への認知についてはまだまだ期待しているレベルに達していません。アクアの起源である旧三洋電機ブランドに好意的なユーザーには、商品を愛用していただいていますが、新規顧客に向けてさらにアプローチする必要があると感じています。

道越 認知度を拡大するために、どのような取り組みをしていますか。

山口 冷蔵庫や洗濯機のような大型家電は、実機を見て、検討したうえで購入するスタイルが主流です。そのため、まずは実機に触れたユーザーに「いいね」と言ってもらえるように店頭での施策を強化しています。また、昨年10月に発表した「R2-D2型移動式冷蔵庫」に代表される有名ブランドとのタイアップ商品も認知拡大策の一環です。家電の普遍的なニーズは「機能」ですが、そのなかに「楽しさ」や「面白さ」があってもいいんじゃないかという価値観に基づき開発した商品です。
 

「消費者目線」を重視 主力の冷蔵庫と洗濯機を徹底強化

道越 アクアというと、水のイメージがわきますが、どういった意味があるのでしょうか。

山口 「Authentic Question Unique Answer(オーセンティック・クエスチョン・ユニーク・アンサー)」の頭文字です。直訳だとすごく難しいですが、私の体制になって大切にしている「消費者目線の家電」と言い換えても問題はないかと思います。

道越 具体的に「消費者目線の家電」とはどういうものを指しますか。

山口 いかに生活を便利に、効率化していくかが家電の本質的な目的だと思います。消費者の「この機能は本当にいるのか」「このサイズが本当にほしいのか」という疑問に真正面から向き合い、生活スタイルに合わせた本当に求められているデザインや機能を備えた家電。それがわれわれが考えている「消費者目線の家電」です。まだ日本市場では強者ではなく、チャレンジャーなので、日本の大手メーカーと同じ戦略では通用しません。自分たちの立ち位置を見たときに、2、3人世帯か単身世帯に適した中・小型の冷蔵庫や洗濯機の商品ラインアップが強く、シェアも確保している。今後5年の短・中期的には、この得意領域を徹底的に強化したいです。

・後半<販路、新製品、IoT―今後の展開は?>に続く
 
■プロフィール
山口仁史
大学院卒業後、「P&G Japan」に入社。「モルソン・クアーズ・ジャパン」のChief Financial Officerとしてマーケティング以外の全部署を統括。2014年12月、「アクア」(旧ハイアールアジア)にファイナンスのVice President(日本・ASEAN諸国担当)として入社。15年7月から執行役員Senior Vice Presidentとして、日本の経営企画・ファイナンス・人事・総務・SCM責任者を経て、16年2月に日本代表に就任(現任)。

・動画インタビュー トップに聞く『事業のきっかけ』
 
  • アクアの沿革
  • 2012年1月 「三洋電機」から「三洋アクア」の事業譲渡により「ハイアールアクアセールス」が発足
  •       「三洋電機」から「ハイアール三洋エレクトリック」の事業譲渡と株式取得により
  •       「ハイアールアジアインターナショナル」が発足
  • 2014年7月 「ハイアールアジアR&D」を設立
  • 2014年10月 「ハイアールアクアセールス」の社名を「ハイアールアジア」に変更
  • 2016年1月 「ハイアールアジア」の社名を「アクア」に変更

“日の丸家電”を世界に発信 研究開発拠点「ハイアールアジアR&D」

 2015年3月に埼玉県熊谷市に開設した研究開発拠点「ハイアールアジアR&D」。主力の冷蔵庫の基礎研究や産学連携に取り組んでいる。規模は世界5か所の研究開発拠点のなかでも最大級。ハイアールグループということで“中国”というイメージが先行しがちだが、「ハイアールアジアR&D」はアクアが日本で日本人に向けて開発した「日の丸家電」のシンボルだ。

 

 
◇取材を終えて  ハイアール傘下のアクアは、基本的には旧三洋の流れをくむジャパンオリエンティッドなグローバル企業……。山口代表は、こうしたメッセージを日本の消費者にどう伝えるか、苦心しているようだった。基本スタンスはプロダクトアウトからマーケットインへ。市場の声にしっかりと耳を傾けようとする姿勢が、本当に求められている製品を生み出す原動力だ。そこに日本から世界に広がる新たなコンセプト誕生の胎動を感じた。(柳)
※購読無料の専門紙『BCN Retail Review』2016年7月号から一部改稿して転載