規制強化でスマートフォン市場は鈍化、ただしSIMフリーは4分の1に拡大

アナリストPOSデータ分析

2017/05/18 12:31

 3キャリアの契約者数の伸びは緩やかに鈍化。また、家電量販店でも「0円販売」禁止の規制強化により売り上げが伸び悩み、前年割れとなる量販店も多い ――。家電量販店・ネットショップの実売データを集計する「BCNランキング」でスマートフォン市場の動きをみると、キャリア主導であった市場は様変りし、SIMフリー端末が4分の1を占めるまでに成長していることが分かった。


 消費増税により落ち込んだ2014年4月のスマートフォンの販売台数を「1.00」として台数指数を算出したところ、16年1月までは回復傾向をみせていた(図1上)。その後、「0円販売」禁止の規制強化により一時的に市場は冷え込んだものの、16年6月以降市場は動き出し、17年3月はここ3年で最大となる「3.44」を記録した。これはY!mobileやUQ mobileといった大手キャリアのサブブランド契約者の増加や、MVNO(格安SIM)事業者の躍進が主な要因として挙げられる。そこで、スマートフォン市場におけるSIMフリー端末の台数比率を算出してみると、14年は1ケタ台で推移していたが、15年の春ごろから2ケタに達する月も出始め、16年に入ると10%台半ばを維持。17年4月現在では約4分の1にあたる23.0%と徐々に規模が拡大していることが分かった(図1下)。MVNOの認知とともにSIMフリー端末の台数比率が高まったことを示している。
 

 SIMフリー端末のメーカー別台数シェアを算出すると、Huawei Technologiesの成長は著しく、この一年間で17.7%から37.4%へと20ポイントもシェアを高めていることが分かる(図2)。Huaweiは「P9シリーズ」の販売が好調に推移しており、シェアの拡大に貢献している。一方、昨年は2位以下を引き離していたASUSは、Huaweiの台頭をきっかけに10ポイント程シェアを落とし、首位の座を明け渡した。ASUSは「ZenFone 3シリーズ」で巻き返しを図るものの、Huaweiの勢いには及ばない状況だ。いずれにしろ、中国と台湾メーカー2社が市場をけん引、シェアは6割にも達しているのだ。一時期、2位争いを演じてきたプラスワンマーケティングは、2社の勢いに押される一方で、Motorola Mobilityの追い上げも受けており、厳しい状況に立たされている。

 独自の進化を遂げ、フィーチャーフォンからスマートフォンへの移行が遅れた国内メーカーは、いまだに海外勢の後塵を拝している。市場は刻々と変化し、SIMフリー端末が台数を伸ばしているが、ここでも国内メーカーは主導権を握れず、中台メーカーに後れをとっている。現状では、国内メーカーは新規開発を断念したこともあり、今後も海外勢が市場を先導していくだろう。

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。