パナソニック、20年ぶりのオーブントースター 「Bistro」ブランドで登場

 パナソニックは11月25日、20年ぶりのフルモデルチェンジとなるオーブントースターの新製品「Bistro NT-D700」を発表した。ブラックの本体の極太枠が額縁効果を生み、中のヒーターの温かい色とおいしそうな食パンの焼き上がりをくっきりと浮かび上がらせるデザインが特徴的で、2021年2月1日から発売する。価格はオープンで、税別の実勢価格は2万5000円前後。

トースター初号機は1935年

 パナソニックがトースターの初号機を発売したのは1935年(昭和10年)と、実に85年前までさかのぼる。戦前の食パンが希少な食糧のときに焼く「パン焼き器」として登場した。その後、62年にオーブントースターの初号機としてNRT-800Aを発売。一般家庭におけるパン食の浸透とともに、朝の食事に欠かせない製品として普及していった。
 
1935年(昭和10年)のトースター初号機

 時代とともに日本人のパンへの嗜好が変わり、最近ではインスタ映えする厚切りパンや高級生食パンを楽しむユーザーが増えている。パナソニックの調べによると、約5割のユーザーが5枚切り(24%)や4枚切り(27%)の厚切りパンを普段から食べていることが分かった。

 また、高級生食パンで有名な「乃が美」の店舗数は、19年8月に135店だったのが、20年10月に193店舗まで増えており、素材にこだわった高級生食パンのニーズの高さが分かる。
 

「厚切り」と「冷凍保存」が不満の原因に

 一方で、パンを冷凍保存する人は約7割に上り、冷凍保存の頻度として約6割が月に1~3回、冷凍保存していることが分かった。同社では、まとめ買いのタイミングで冷凍しているのではないかと推測する。

 実は、この「厚切り食パンの冷凍保存」の浸透によって、従来のトースターで上手に焼けないという不満が生じていた。焼き具合がいいと思って取り出すと、中がまだ冷たかったり、中までしっかり焼こうとすると、表面が焦げてしまったりと、せっかくのおいしいパンが上手に焼けなくなっていたのだ。

 NT-D700は、「遠近トリプルプリヒーター」というハードの技術と、焼き加減を繊細にプログラムした「インテリジェント制御」というソフトの力を融合することで、厚切りパンの中までしっかり温めながらも、表面を焦がさずにきれいに焼き上げられるようにした。

 遠近トリプルヒーターは、上下2本の遠赤外線ヒーターと、上部に1本の近赤外線ヒーターで構成される。波長の長い遠赤外線ヒーターは、食品成分に熱が吸収されやすいため、表面を素早く加熱することができる。一方の波長の短い近赤外線ヒーターは、食品成分に吸収されにくい特徴があるので、熱が内部まで浸透しやすくなる。この波長の異なる2種類のヒーターを使うことで、厚切りパンの表面はパリっと、中はふっくらと仕上げることができる。

 遠近赤外線ヒーターそのものは、従来の同社製オーブントースターから搭載されている。ポイントは、パンの厚みや温度、庫内温度、電圧などから7200通りの加熱制御ができるインテリジェント制御にある。

インテリジェント制御の実力とは

7200通りの加熱制御ができる「インテリジェント制御」

 庫内には温度の立ち上がりを計測するセンサーしか搭載されていないのだが、インテリジェント制御が3本のヒーターを細かくコントロールすることで、薄切りや厚切り、常温や冷凍などあらゆるパンの状態を把握しながら焼き上げる。

 庫内に重量センサーや湿度センサーなどがなく、これだけ自在に制御できることに驚かされる。例えば、通常なら1枚目を焼いた直後に2枚目を焼いた場合、同じタイマー時間で焼くと2枚目が焦げて失敗してしまうことがあるが、インテリジェント制御は同じ冷凍パンでも1回目と2回目の焼き方を微妙に変えながら失敗することなく焼き上げるという。

 完全オートではないため、最初のダイヤル設定では「うすぎりトースト」「あつぎりトースト」「冷凍うすぎりトースト」「冷凍あつぎりトースト」の四つから選択してスタートボタンを押す必要があるが、操作はそれだけなので難しさを全く感じない。
 
操作はダイヤルを回してスタートボタンを押すだけ

 実際に従来機種とNT-D700で焼き上げた普通の厚切りパンを食べ比べてみたが、中身のふっくらしたもちもち感や外側のサクサクした食感が明らかに違った。噛んだ感触で厚さの違いも分かる。表面の焼きムラがないのも一目瞭然だろう。
 
ピンク色がNT-D700の焼き上がり。
表面の焼きムラがない

 トースト以外のメニューも豊富で、パックの餅やフライ、アレンジトースト、焼きいものあたため直しや加熱ができるほか、予熱なしにピザやグラタン、カップケーキ、グリル野菜などのオーブン調理もできる。アレンジトーストでは、載っている食材がチーズやアボカド、キッシュなどと異なっても、お任せで仕上がってしまうほど。インテリジェント制御の実力のすごさが感じられる。(BCN・細田 立圭志)