高齢化が進む日本ではこれから多くの加齢に伴う健康問題が社会全体の課題となってくるが、その代表格といえるのが「難聴」だ。有効な対策として補聴器の装用があげられるが、医療機器である補聴器の販路は限られており、どのようにしてフィッティング(調整)するのかはあまり知られていない。今回、補聴器メーカーとして110年以上の歴史を誇るオーティコン補聴器の協力を得て、記者自ら補聴器のフィッティングを体験してみた。

オーティコン補聴器の協力を得て、記者自ら補聴器の調整を体験した

細かく周波数帯ごとの聴力を測定

 はじめに断っておくと、記者は特に聞こえに不便を感じているわけではない。だが、補聴器のフィッティングを担当してくれたオーティコン補聴器 ソリューション・マーケティング部の高橋礼美 教育研修担当シニアトレーナーによると、補聴器は周波数帯ごとに強調する帯域を調整する装置なので、健聴者であっても機器による音の違いを体感できるそうだ。

 通常、補聴器をフィッティングする場合、医師の診断、取扱店で聞き取りに不便を感じる場面などのカウンセリングを経て聴力測定に移るが、今回は最初のフローを省き、聴力測定から体験した。健康診断などで、防音室でヘッドホンから「ピー」という音がしたら手元のボタンを押すという検査があるが、補聴器をフィッティングするときの測定も形式は同じだ。異なるのは、測定する帯域がより細分化されていることだ。
 
より細かく周波数帯ごとの聴力を測っていく

 測定するのは、125~8000Hzの間の7帯域。それぞれの聞こえのレベルをオージオグラムという表に記入し、全体の聴力を調べる。グラフは、0が健聴者が聞くことのできる最も小さい音量の平均値で、これより値が上だと「よく聞こえている」、下だと「聞こえが悪い」ことを示す。記者は7帯域でいずれも聴力レベル-10~10の範囲内だった。一般的に加齢に伴う難聴では、高域の音ほど聞こえにくくなる傾向があるので、その場合は右肩下がりの折れ線が形成されることになる。
 
左は記者の聴力を示したオージオグラム、右は難聴者のオージオグラム

聴力測定の結果をもとに補聴器をカスタマイズ

 聴力測定が完了したら、次は作成したオージオグラムをもとに補聴器の選択・調整をしていく。PCソフトにユーザーの年齢や装用経験などを登録し、聞こえが悪い周波数帯の音を増幅するように補聴器がプログラムされる。

 補聴器には耳穴にすっぽりと入れる「耳穴型」、耳にかけて使う「耳かけ型」などがあるが、今回はオーティコンの最新器種であり、スピーカーを耳穴に入れるタイプの「Oticon Opn ミニRITE(オーティコン オープン ミニライト)」を選択した。OpnはBluetoothに対応しており、調整用のPCとも無線で接続して、補聴器をプログラムすることができる。
 
オーティコンの最新補聴器「Oticon Opn(オープン)」はBluetooth対応なのでプログラムも無線で可能

 情報の入力が完了した後は、いよいよ耳に補聴器を入れてフィッティングの作業に移る。補聴器のイヤピースはサイズはもちろん、形状にもさまざまな種類がある。難聴の度合や耳のサイズによって、最適なものが選択される。
 
イヤピースはサイズも形状もさまざまな種類がある

 オーティコンでは調整に「Genie」というソフトを用いているが、ユニークなのは音の聞こえ方に個人の好みも反映できることだ。補聴器を調整する過程で、例えば、騒がしい環境下で人の声に集中したいか、周囲の音も自然に聞きたいかなどの質問に答えるとその結果が調整に反映される。実際に試してみると、選択によって音の聞こえ方の印象はかなり異なる。日常的に使用するものだからこそ、ユーザーへの影響は大きいと思われる。
 
「Genie」の独自機能として音の聞こえ方に個人の好みを反映できる

 健聴者の記者であっても、フィッティングをしていると、周波数帯ごとに音を増幅すると聞こえ方が大きく変化するのがわかる。これまで「聞こえにくい」とは感じていなかった音も、意識していなかっただけで実はよく聞こえていなかったのだと気づいた。

「Opn」ならスマホ連携機能も設定可能

 オーティコン最新の補聴器であるOpnはスマートフォンと連携した設定も可能で、より便利に使用することができる。今回は「汎用」「騒音下の会話」「音楽」「講演」など、シーンに最適化したプログラムを設定。専用のスマホアプリからプログラムごとに音量レベルを調整して、そのときどきでベストな聞こえ方を選ぶことができる。
 
シーンに最適化したプログラムを設定、各プログラムはスマホアプリからいつでも切り替え可能

 聴力測定からフィッティングまで1時間弱で、自分仕様に調整された補聴器が完成した。補聴器は大きくて目立つものというイメージをもっていたが、Opnは装用感が自然で、外から見てほとんど目立たない。「補聴器を装用していると思われるのは恥ずかしい」と感じている人もこれなら許容できるのではないだろうか。髪が長ければほとんど見えず、短くても正面から見たときにほとんど意識させない設計になっている。
 
Opnの装用イメージ。存在を主張せず、ほとんど目立たない

 調整中も補聴器がどのように聞こえ方を変えるかを実感できたが、次回は日常生活の中での使い心地をレビューする。Opnには聞こえがよくなる以外の便利な機能が多数あるので、そちらも合わせて紹介していきたい。(BCN・大蔵 大輔)