「バリアフリー」という言葉が一般に浸透してだいぶ経つ。一昔前に比べると、街には段差のないスロープが増え、オールジェンダーのLGBTトイレも見かけるようになった。しかし、障がい者や高齢者、LGBT、外国人などの少数派にとって、日本社会はいまだ寛容とはいえない。

 今年で4年目を迎える「2020年、渋谷。超福祉の日常を体験しよう展」、略称「超福祉展」は、マイノリティや福祉そのものに対する「意識のバリア」を取り除こうという企画。毎年、東京の渋谷ヒカリエで、さまざまなアイデアやデザイン、テクノロジーによって誕生したプロダクトを展示している。

 開催期間は11月7日~11月13日の1週間。11月9日には、オーティコンの木下聡プレジデントと、NPO法人ピープルデザイン研究所の須藤シンジ代表理事による対談が開催された。テーマは「未来のライフスタイルを実現する先進デジタル補聴器」だ。
 
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渋谷ヒカリエで開催されている「2020年、渋谷。超福祉の日常を体験しよう展(超福祉展)」

 オーティコンはデンマークに拠点を置く補聴器や人工内耳を製造する「聴こえ」に関する総合メーカー。1904年の創業で100年以上の歴史をもっている。メーカー名の由来は「Oti(耳)+con(ともに)」。同社は補聴器を「みみとも」と呼称して、身近な存在に感じてもらえるよう、さまざまな場で啓蒙活動を行っている。

 セッションの前半では、木下プレジデントが補聴器の現状とオーティコンの次世代補聴器「opn」について説明。「カッコ悪い」「活発でない」「疎外されている」といったネガティブなイメージが先行して、本当は試したいが、まわりの目を気にして装着していないという人は多いという補聴器だが、実は最新のテクノロジーで従来の印象が払拭されつつあるという。
 
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オーティコンの木下聡プレジデント

脳にやさしい? 「Opn」が快適な本当の理由

 2016年に発売された「Oticon Opn」はまさにその先鋒となる補聴器だ。小さなきょう体内に高性能チップを搭載し、毎秒100回以上周囲の音環境を分析、毎秒12億回以上の演算処理をすることが可能。これまで一方向からしか集音できなかった補聴器を、全方位の音を自然に聴き分けることができるレベルに引き上げた。
 
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360°の音を自然に聴き分けることができ、インターネットとも接続する革新的補聴器「Oticon Opn」

 360°の音を自然に聴きとれることは、実生活が快適になるだけでなく、脳にやさしいということでもある。木下プレジデントは“ブレインヒアリング”という用語と「音は耳から入ってくるが理解するのは脳」という科学的に検証されたデータを紹介した。

 「例えば、外国人の方と会話をしていると普段より疲れやすい。それは脳で外国語を理解した上で返答しているから」。Opnは全方位に指向性をもたせることで、脳の疲れやすさを20%軽減、会話の覚えやすさを20%、会話の理解度を30%向上させているそうだ。この事実は交感神経の変化に反応する目の瞳孔の開き具合を測定した実験で検証されている。
 
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交感神経の変化で目の瞳孔は大きくなる。聴こえによって脳に負荷が生じることがこの実験で検証された

IoTの最先端を行く「Opn」 未来の生活のキーデバイスに

 「Opn」のもう一つの大きな特徴は、インターネットにつながるということだ。その肝になっているのが、「IFTTT(イフト)」というWebサービス。「If This Then That(これをしたら、あれをする)」の頭文字で、その言葉通り、あるアクションがインターネットを経由して、異なるアクションに連携するという仕組みだ。
 
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「IFTTT」は「If This Then That」の頭文字

 例えば、起床して補聴器の電源を入れる。そのアクションに連動して、家中の電気が点灯、さらにはコーヒーメーカーが起動する。別の例だと、誰かがインターホンを押す。すると、その信号が補聴器に伝達され「インターホンが押されました」という音声に変換される。
 
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補聴器の電源に連動して、家中の電気が点灯
 
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インターホンに連動して、補聴器に音声が流れる

 旬な話題としてスマートスピーカーにも言及したが、「Opn」は最先端のテクノロジーが実現する未来の生活のキーデバイスになりうる。木下プレジデントは「補聴器を装着することは負い目ではなく、未来の生活とつながるかっこいいことなんだという意識に変わってほしい」と、「Opn」の可能性への期待を語った。

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