富士通、ノートPCで競合に先んじて底打ち──FCCLに見た底力の強さ

特集

2017/03/01 17:06

 富士通クライアントコンピューティング(FCCL)は2月22日、島根県出雲市にある島根富士通で「FCCLの匠」体験会を開いた。語呂合わせで富士通の日でもあるこの日、報道関係者およそ80名が集まった。

 島根富士通は、国内の主要PC生産拠点の一つ。体験会では、PCの生産工程を公開する一方、家庭や職場での新しいPCの活用の姿をデモンストレーション。FCCLの今と未来の姿を明らかにした。レノボとのPC事業の提携を前に、現時点での富士通ブランドのパソコンの神髄を改めて世に問おうとの意気込みが感じられた。
 

PC関連の報道関係者およそ80名が出雲市の島根富士通に大集結

柔軟な混流ライン生産、IoTの活用で徹底的な品質管理も

 FCCLの主要生産拠点、島根富士通は、プリント基板の製造から本体の組み立てまでをこなす。全部で20本のラインを持ち、1日あたりの生産能力は1万台。従業員数は1100名で、うち社員が600名、残り500名が派遣社員だ。平均年齢は39歳で島根県からの採用が98%。離職率は1.9%以下と定着率が高い。
 

合計20本のラインで1日1万台のPC製造が可能

 特徴は、一本のラインで異なる製品を一台ずつ生産できる混流生産だ。1つのラインで4種類の異なった製品を一度に生産することもあるという。10年ほど前までは少人数の担当者がすべての組み立てをこなす「セル生産」方式だったが、より効率的な生産方法をめざし、トヨタのカンバン方式を取り入れ、混流ライン生産に切り替えたという。そのほか、IoTを活用した生産状況の「見える化」や、人と機械の協調生産による自動化なども強みだ。
 

同一ラインで通常のクラムシェルと2in1ノートの2種類を混在させて生産
 

双方の利点を生かし、ロボットと作業員が協働して生産する部分も

 品質へのこだわりは随所にみられるが、IoTを活用した製造過程での徹底的な工程追跡もその一つだ。例えば、要所要所に作業者の手元を写すカメラを設置。流れている製造中の製品の製造番号を自動的に読み取り、作業工程を記録していく。後々生産した製品に予期せぬ不具合が発生した場合、どの工程で問題が生じたか追跡できるような仕組みになっているわけだ。その都度、原因を徹底的に糾明し、製造工程の改善に役立てていく。
 

主要な作業ポイントにカメラを設置し、不具合発生の原因を追跡できるようにしている

競合に先んじて、ノートPCの販売台数が底打ちした富士通

 家電量販店やネットショップなどの実売データを集計する「BCNランキング」によると、富士通は、国内ノートPC市場でNECに次ぐ第2位のシェアを持つ。2016年のシェアは販売台数で19.2%、販売金額では23.0%。平均単価は高めで、昨年は、競合のNECを1万円近く上回った。

 Windows XPの買い替え特需で湧いた2014年春以降、ノートPC市場はふるわない。2016年も販売台数前年比は90.1%と、大幅な前年割れに終わった。しかし、PC事業を分社化しFCCLを設立した富士通は100.8%とわずかながら前年を上回った。1位のNECが前年比78.8%、3位の東芝が86.6%と依然苦戦する中、価格は高くとも、ブランドや品質の高さに対する消費者からの支持は高く、一足先に底打ちしつつある。
 

 ノートPC全体の平均単価はおおよそ10万円程度だが、中国、台湾勢の平均単価はほぼ半額の5万円前後。倍の開きがあっても、日本メーカーの製品が売れている。日本の消費者は、価格以上に品質やサポートを重視するからだ。こうした市場にあって、多くの消費者に支持される富士通のPCは、企画・開発から製造、サポートに至るまで国内でまかない、こだわりをもってPCを生産するFCCLがあってこそだ。

近未来のPCのあり方も提示

 FCCLの齋藤邦彰社長は、体験会にあたり「2月1日で創立1周年を迎えたFCCLだが、富士通のPC、FMシリーズの歴史は35年を数える。この間に培った匠の技術を生かし、PC、タブレットなどをコンピューティングの一部ととらえ、多くの場所、多くのシーン、長い時間、お客様のお役に立つことを目指していく。お客様にベストフィットな商品を提案することに関しては誰にも負けない」と話した。
 

体験会にあたって挨拶したFCCLの齋藤邦彰社長

 体験会では、展示やデモンストレーションを通じて、未来に向けてのコンピューティングのあり方や、ホームコンピューティングの未来像も提示した。

 一例として、出先で使えるワークステーションというコンセプトで制作した、2画面のワークステーションの試作機や、キーボードを上にしても使える省スペースPCなどを紹介。また、鏡と情報表示を共有させるスマートミラーの試作機や、高校生とともにコンピュータの再定義を行った「NextUX」も展示していた。「NextUX」は、コンピューティング作業はスマートフォンで、情報共有や入力などは外付けのデバイスで行うというアイデアだ。
 

ハイパワーのPCを持ち出して、社外でも十分な環境で作業ができる2画面ワークステーションの試作機

 ホームコンピューティングに関しては、IoT時代にあっても、各種のセンサーから直接クラウドに接続するのではなく、いったんPCを経由して接続する「PC中心」のスタイルを提案。リビングでも出先でも、音声で家電をコントロールする際にPCを活用する。さらには、ホームセキュリティシステムが玄関で家族の顔を認識し、自動でドアを開錠したり、入ってくる人物に応じてガスの元栓を開閉したりといった、先進的な試みも披露した。
 

PCを中継して声で家電製品をコントロールするデモンストレーション

 PC市場はコモディティ化が進むなかで、壊れなければ買い替えないものになってきた。しかし、IoTやAI技術などが急速に進展する中、新しいPCの姿は、あちこちで芽生えつつある。出雲からも、人々の心を躍らせる製品が再び次々と生まれることを期待したい。(BCN・道越一郎)