VAIOが米国アマゾンで販売、15年度の売上高は2倍以上に

特集

2015/09/15 14:01

 VAIOは、年内にも米国アマゾンで「VAIO Z Canvas」の販売を開始する。BCNランキングの取材に大田義実社長が明らかにした。米国アマゾンにVAIOの仮想店舗を出店する形で販売する。同社 の2016年5月期の売上高については、前年度比で2倍以上になる見通しを示し、「スマートフォンやタブレットも出していこうと考えている」と国内モデル のラインアップも増やしていく方針を語った。


米国アマゾンでのVAIOの販売を明らかにした大田義実社長

「VAIO Z Canvas」に絞った戦略が奏功

 昨年7月にソニーのPC事業を引き継ぐ形で独立したVAIO。今年6月に社長に就任した大田氏は、8月の就任会見で海外参入の第一弾として米国とブラジルで販売することを発表した。

 米国では10月5日から、販売パートナー契約を結んでいるトランスコスモスの米国子会社transcosmos America Inc.のECサイトやマイクロソフトのECやリアルストアなどを通じて販売を開始する。米国はクリエイターが多いことから、機種はタブレットの 「VAIO Z Canvas」に絞る。米国アマゾンでの販売も同じだ。

 大田社長は「(米国アマゾンで)どのくらいの規模で売れるのか知るため」と語り、すでに日本国内と米国での販売台数は1:1の割合に迫る勢いであること を明らかにした。いたずらにモデル数を増やすのではなく、「VAIO Z Canvas」に絞った当初の販売戦略が早くも成果に表れているようだ。
 


「『VAIO Z Canvas』は日本国内と同じ1:1の割合で米国でも売れている」

国内モデルはラインアップを強化

 ソニー時代にVAIO事業に携わっていた社員は約1100人。新生VAIOではわずか約240人からのスタートだった。現在は営業を中心に253人まで人員を増強している。

 「規模が小さいので、われわれが自前で海外拠点を作っていくわけにはいかない。必ずどこか提携先が必要になる」と大田社長が語るように、海外ではパートナー企業による販売や販売拠点のコストを抑えられるアマゾンなどを活用した戦略をとる。

 2015年5月期の初年度は、株主であるソニーからの事業譲渡などの特別利益で当期純利益は黒字を確保したものの、本業の儲けを示す営業損益は赤字だっ たという。「商品のラインアップが少なく売上高が足りず、コストをカバーできなかった」と語る大田社長は、売り上げを増やすためにラインアップを強化する 方針を示し、B to Bの受託案件も順調に増えていることから2016年5月期は売上高が2倍以上になる見通しを明らかにした。もっとも「昨年は営業をしていなかったに等しい ので売り上げが少なかった」という理由もある。
 


「今年度(2016年5月期)は売上高が2倍以上になる見通し」

 ラインアップの強化といっても「規模を追うのではなく、既存モデルの軸から派生する1ケタ台のモデル数」として、競合メーカーのように10~20機種も 出すことはない。現在は、ハイエンドユーザー向け「VAIO Z」とクリエイター向け「VAIO Z Canvas」によるZシリーズと、ビジネスユース向けPro 13 | mk2、エントリーモデルのFit 15E | mk2の3シリーズ。それぞれで数機種程度ラインアップに加えていくとみられる。

 スマートフォンやタブレットへの進出について大田社長はあまり多くを語らなかったが「製造も販売も、自分たちがしっかり関与していく」という言葉からは、過去の反省も垣間みられる。

 「私が就任時に示した『自立』という言葉に込めたように、今年はラインアップを増やして、市場も開拓し、営業もして営業利益を出して、法人も個人も含め たお客様からの信頼と信用を獲得する」とVAIOブランドの復活に向けてまい進していく考えだ。(BCNランキング 細田 立圭志)

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