フリッカーフリーのディスプレイ「GL2460HM」、“目にやさしい”が新トレンドに

特集

2014/05/30 11:10

 三菱電機が撤退してから、勢力図が塗り替えられつつある液晶ディスプレイ市場。新たに参入したメーカーもあり、今後の展開を予想するのは難しくなっている。家電量販店の実売データを集計する「BCNランキング」をもとに、部門別に最も販売数量が多いメーカーを表彰する「BCN AWARD」の2013年液晶ディスプレイ部門は、LGエレクトロニクスが制した。しかし、14年は様相が異なる。

 三菱の勢いに衰えがみえはじめた13年夏頃から、メーカーシェアを伸ばしているのがLGエレクトロニクスだ。13年8月にメーカー別販売台数シェア1位に躍り出ると、10月には「BCNランキング」で24.0%という高いシェアを獲得した。しかし、新たなメーカーの参入や既存メーカーの活躍などによってこのシェアは長続きせず、14年2月にはトップから転落。一気に4位まで落ちた。
 


 代わりにトップに立ったのが、ベンキューだ。14年に入ってからシェアを伸ばしはじめ、2月にシェア18.0%で1位に立った。その後も右肩上がりで推移し、3月に20.0%、4月に20.4%のシェアを獲得している。

 ベンキューのシェアを押し上げている要因は何だろうか。機種別の売れ筋推移を「BCNランキング」で追った。ベンキューがメーカーシェア1位になった14年2月に、液晶ディスプレイ市場で最も売れた機種は、シェア5.4%のベンキューの24型モデル「GL2460HM」だった。
 


 液晶ディスプレイ市場は、月に1000種類以上のモデルが売れていく。その市場で販売台数シェア5%以上を占めるということは、かなりのできごとだ。「GL2460HM」は、その後も3月に5.8%、4月に6.7%とシェアを伸ばしながら、3か月連続で1位をキープした。
 

変わるディスプレイの用途 PC用からゲーム、AV機器用へ



 ディスプレイは、一般的にはPCのモニタとして使われる。ところが最近は、デスクトップPCでも液晶とPC部分が一体になったモデルが多く、ディスプレイはデスクトップPCのメインモニタというより、サブモニタとして使われることが多い。

 PCの代わりに用途として増えているのがゲーム機やチューナー、レコーダーなどを接続するAV用途だ。これは、ディスプレイの約7割がHDMI端子を装備し、AV機器と接続しやすくなっていることが大きい。また、チューナーを内蔵していないので、同サイズの液晶テレビよりも安く手に入るのも理由の一つだろう。

 デスクトップPC市場と液晶ディスプレイ市場の前年同月比推移をみると、デスクトップPCは前年比60~80%と前年実績を大きく下回って推移していたが、ディスプレイはほぼ前年並みで推移。これは、ディスプレイがデスクトップPCに依存しない新たな道を開拓したことを示している。
 


 ディスプレイをAV機器として使うようになると、PC用モニタとして使っていた頃よりも、画面を見る時間が長くなる。ただでさえ、スマートフォンやタブレット端末が普及したことで、人々は液晶画面を見る時間が長くなっている。これに加えてディスプレイを見ていれば、目に疲れを感じるのは当然だろう。

 目を疲れさせる犯人は、ブルーライト。LEDバックライトつきの液晶ディスプレイやスマートフォンの画面、テレビ画面などではブルーライトが強く発生し、長時間見ていると視界のチラつきやまぶしさを感じることがある。ブルーライトを軽減するメガネが人気商品になっているくらいだ。

 さらに、目の疲れの要因はブルーライトだけではない。LEDが細かく点滅するちらつき、すなわちフリッカーも、目に負担をかけている。フラッシュのように点滅する光を長時間見ていると目が疲れてくるが、ディスプレイのバックライトはオン/オフを繰り返すことで画面の明るさを調整しているので、この明滅が目に負担をかけるのだ。
 

「GL2460HM」が売れている理由 それは目にやさしいフリッカーフリー機能



 ゲームや映像などを長時間、集中して見続けると、このフリッカーの影響を受けて、目の疲れを感じやすくなる。この負担を軽減する「フリッカーフリー」性能を備えたディスプレイが、カラーバリエーションを別々に集計した機種別で1位を取ったベンキューの「GL2460HM」だ。
 

フリッカーフリーの「GL2460HM」

フリッカーフリーの「GL2460HM」

 「GL2460HM」は、フリッカーの原因となるバックライトのオン/オフをせずに明るさをコントロールするDC(直流)調光方式を採用している。バックライトへの電流を制御することで明るさをコントロールしているので、常にバックライトが点灯し、原理上フリッカーが発生しない。

 フリッカー問題を解決してくれるDC制御だが、回路設計が複雑で、これまでは導入が難しかった。また、暗い輝度レベルで色を調整することが難しいという問題点もあった。しかし、ベンキューは独自の技術でこれらの問題をクリアし、長時間ディスプレイを使用する人にとってうれしいフリッカーフリーを実現した。

 フリッカーフリー効果は、肉眼で見てもわかりにくい。だが、ディスプレイの前にファンを置き、ファン越しに見ると、フリッカーが発生するディスプレイはフリッカーがモアレになって見える。また、スマートフォンなどのカメラ機能を使って撮影しても、このモアレは確認できる。
 

左が通常のディスプレイ、右はフリッカーフリーのディスプレイ

左が通常のディスプレイ、右はフリッカーフリーのディスプレイ

 「GL2460HM」の目への配慮は、フリッカーフリーだけではない。ブルーライトの低減機能も備えている。ディスプレイの設定を「閲覧モード」に切り替えると、ブルーライトに該当する光を低減。色味はやや黄色がかり、輝度が下がるので、色の判別が重要な写真・動画の編集のような作業には向かないが、書類の作成やウェブページの閲覧など、文字を扱う作業にはまったく問題ない。

 今後、ベンキューはフリッカーフリーパネルやブルーライト低減モードを搭載したモデルを増やし、“目にやさしいディスプレイ”としてアピールしていくという。まずは、このからだにやさしい性能で、2014年上半期でNo.1を獲得できるか、注目したい。(BCN・山下彰子)


*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベース(パソコンの場合)で、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。