山ラジオって一体何? 伊吹山に登ってその正体を確かめた

レビュー

2009/06/05 12:35

 初夏――本格的な山登りシーズンの到来だ。ソニーが発売した山ラジオ「ICF-R100MT」はその名の通り、山で使うための機能や付属品を備えている。そこで、日本百名山の一つ、滋賀県・伊吹山に連れ出して実際に使ってみた。

そもそも「山ラジオ」って何?



 今回お借りしたのは、ソニーの山ラジオ「ICF-R100MT」。山好きの私としては、08年7月の発売当初から密かに気になっていたアイテムだ。このラジオは、山で使うための機能「山エリアコール」を備えている。

ソニーの山ラジオ「ICF-R100MT」

 「山エリアコール」とは、「大雪山」「八ヶ岳」などそれぞれの山がある地域「山エリア」を番号で選択すれば、最大7つの放送局を自動で設定してくれるというもの。例えば、今回選んだ伊吹山なら、地域は「岐阜県西部、石川県、福井県、滋賀県東部」で番号は「15」。伊吹山のほか、白山や荒島岳も同じ地域になる。

 この機能のよいところは、現地に着いて「さぁ登るぞ!」という時に、通常は手動で行うチューニングをしなくてもよい点だ。山登りの最中は、行程のスケジュールを確認したり、地図を見たり、とにかく忙しい。それなら、事前にその山に合った周波数を設定しておけば、現地での時間のロスにならないというわけだ。

 なお、「山エリアコール」では、全国の日本百名山を含む117種類の山から登る山を選択できるが、設定できるのはAMのみで、FMは対応していない。

クレジットカードほどの薄型ボディ、防水機能はなし



 伊吹山は日本百名山の一つで、滋賀県東部に位置する。標高は1377mで初心者でも気軽に登れる。ドライブウェイも通っているので、普段山登りをしない人でも車で頂上まで行けるメジャーな山だ。

日本百名山の一つ、滋賀県の伊吹山(1377m)

 さっそく、ラジオ本体の操作性について見てみよう。目を引くのは、前面上部に並ぶ7つのボタンだ。前述の「山エリアコール」で設定すれば、いまいる山の地域に合った局がプリセットされるので、すぐに選局できる。

 プリセットされた放送局が聴きにくい場合は、右側面のジョグレバーを上下に動かして「中継局」を選択する。中継局とは、異なる周波数で同じ内容を放送している局のこと。したがって、この中継局に手動で合わせれば聴こえやすくなることがある。ただ、山では地形によって受信状況が変化するので、中継局を選んだからといって必ず聴こえるようになるとは限らない。

中継局の一覧(山エリア「15」の場合)

 ボディは幅55×高さ91×奥行き12.3mmとクレジットカードほどのサイズで薄く、重さも単4形乾電池1本を含んで72gなので大変軽い。各種ボタンは小さめで、男性など手の大きい人は少々使いにくいかもしれない。表示はすべて日本語で操作に迷わなかった。背面上部には、巻き取り式ケーブルのモノラルイヤホン付き。

(左)ジャケットケース、ラジオ本体、山エリア一覧カード2枚、キャリングケース (右)ジャケットケースを開いた状態

 ちなみに、本体は防水機能を備えないので、個人的にはこの点を追加してほしかった。突然の雨に降られた時など、山ではやはり防水機能があると助かる。

肩ベルトに取り付ければ片手で操作できる



 同梱品は、ザックの肩ベルトに取り付けられるジャケットケース、本体にフィットするキャリングケース、山エリア一覧カードが2枚。この付属のジャケットケース、ザックの肩ベルトに取り付けて使用するのだが、ケースから出さなくてもラジオを操作できるのが特徴。ワニの口のようにパカッとケースを縦に開くと、ラジオ本体がこちら側に向いて現れ、各種ボタンやイヤホンを片手で操作できる。

 内部の収納スペースも、「ラジオ本体」「予備の電池」「山エリア一覧カード」と、それぞれが決まった場所にしまうことができる。しかもゴム付きネットで固定されるので、中でごちゃごちゃになることがないので便利だ。

ジャケットケースをザックの肩ベルトに付ければ、ラジオを収納したまま選局ボタンを操作できる
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  唯一困ったことといえば、肩ベルトのどの位置にケースを付けるのか迷ったこと。ザックの種類によっては、肩ベルトに胸の前で留める胸ベルトが左右に付いていることがある。その場合、胸ベルトを避けて装着しなければならない。ただ、どこにケースを付けるかは好みの問題なので、邪魔にならない場所に取り付けよう。

 とはいえ、このジャケットケースが同梱されているからこそ、このラジオが「山ラジオ」として活躍できるといっても過言ではない。それほどよくできていると感じた。

4つの放送局は山の標高に関係なく受信OK



 さて、肝心のAMラジオの受信状況を確かめてみた。伊吹山でプリセットされるラジオ局は「NHK第1」「NHK第2」に加え、石川県の「MROラジオ」、福井県の「FBCラジオ」、岐阜県の「AM岐阜ラジオ」、愛知県の「CBCラジオ」「東海ラジオ」の7つ。山の標高によって受信状況を確認するため、一合目、五合目、頂上の3か所で比べてみた。


 「NHK第1」「AM岐阜ラジオ」「CBCラジオ」「東海ラジオ」の4局はどの地点でもきちんと受信できた。また、頂上で「NHK第2」「MROラジオ」「FBCラジオ」の3局を聴いた場合、そのままでは厳しいものの、「ノイズカットボタン」を使えばなんとか聴くことができた。また、登っている最中でもさまざまな局を聴いていたが、場所によっては一時的に聴こえにくくなることがあった。

歩いている時だけでなく、休憩中でも楽しめる

 ちなみに、モノラルイヤホンを使わず、音を外に出しっぱなしにしたところ、顔の近くに音源があるので初めは耳障りだった。ただ、しばらくすると慣れてくるので特に問題はない。また、ラジオを体に身に付けている本人は当然よく聴こえるが、同行者は内容までは聴き取れなかったので、歩きながらみんなでラジオを聴くのは難しいだろう。

“地域らしさ”を味わえる 疲れたときの気分転換に



 このように、山でラジオを初めて試してみたが、普段は友達と話をしながら山を登っているので新鮮だった。番組としては、音楽やトーク番組などが楽しい。たまたま付けたときにその番組しかやっていなかったということもあるが……。また、ラジオは番組によって地域性が出るので、「いま、滋賀県の伊吹山にいるんだなぁ」という感慨に浸れるのもよかった。

伊吹山では初夏の草花や蝶に出会えた

 ちなみに、「山でラジオ」というのは実はよく見かける光景。比較的低めの1000m前後の山に出かけると、ラジオを聴きながら歩くおじいちゃんに頻繁に出会う。単独行動で、大きめのラジオをザックのポケットに入れて聴いていることが多い。また、山らしい使い方と言えば、気象の知識がある人なら、「NHK第2」で毎日3回放送している気象情報を聴くのもよいだろう。

 普段黙々と山を登っていると、疲れて気がめいってくることがある。今回、ラジオを聴きながら歩くことで少し気が紛れた。また、休憩や昼食時なら、同行者とも一緒に聴けるし、気分転換になる。個人的には、「折角山登りをするのだから、緑のざわめきや鳥のさえずりを耳にしたいものだ」と思う。しかし、時にはラジオを聴きながら山を歩く、といういつもと違った過ごし方もよいかもしれない。(BCN・井上真希子)adpds_js('http://ds.advg.jp/adpds_deliver', 'adpds_site=bcnranking&adpds_frame=waku_111380');