春以降、台数では前年を上回って推移するPC販売だが、価格の下落にともない、金額ベースでは依然厳しい状況が続いている。その一方、PC周辺機器、とくに最も身近な存在であるマウスが堅調な動きをみせている。そこで、「BCNランキング」をもとに、最近のマウス市場の動向についてまとめた。

 春以降、台数では前年を上回って推移するPC販売だが、価格の下落にともない、金額ベースでは依然厳しい状況が続いている。その一方、PC周辺機器、とくに最も身近な存在であるマウスが堅調な動きをみせている。そこで、「BCNランキング」をもとに、最近のマウス市場の動向についてまとめた。

●販売数量は、7月以降2ヵ月連続で前年比プラス



 年初からのマウスの販売動向をみると、春先までは前年割れの水準で推移していたものの、数量ベースでは4月以降に、また金額ベースでは6月以降に前年比でプラスに転じた。直近8月では数量ベースで前年比8.3%増、金額ベースで同5.0%増となっている。ちなみに、PCの販売動向と比べると、マウスの販売動向は、PCの動きにほぼ連動していることがわかる。



 メーカーの別販売数量シェアは、エレコム、マイクロソフト、サンワサプライ、ロジクールの4社で全体の6割以上を占めている。月別の動向では、1月にはエレコム、ロジクール、サンワサプライの3社が5割台半ばを占めていたが、それぞれのシェアは低下基調で推移、8月には5割弱にまで低下した。代わってシェアを伸ばしてきたのがマイクロソフトとアップル。特にマイクロソフトの伸張は顕著だ。



●シグマAPOとアップルの2社が市場を下支え

 市場全体の伸びに貢献したメーカーはどこか? エレコムなど上位4社について具体的にどう寄与しているのか? 数量ベースで前年比プラスに転じた4月以降の動きをみてみた。

 上位4社で一貫してプラスに寄与しているところはなかった。4月から6月にかけては、ロジクールが、7月から8月にかけはマイクロソフトがプラスに寄与。マイクロソフトは前月からの流れの中ではシェアは拡大傾向にあり、その寄与度は高い。7月は7.0%、8月は6.7%となった。



 この間、マイクロソフトで突出していたマウスは「Microsoft Wireless Notebook Optical Mouse Mica Black」。7月が2位、8月が7位であった。また「Microsoft Basic Optical Mouse」なども上位に位置している。しかしいずれの機種も2003年または2004年発売の機種。上位の機種では「Microsoft Basic Optical Mouse USB Black」が唯一2005年6月の発売の製品で、7月が4位、8月が8位だった。

 一方、その他のメーカーにも目を転じると、シグマAPO、アップルの2社の動きが目立つ。いずれもメーカーシェアは2?6%程度ではあるものの一貫してプラスに寄与している。シェアは低いながらも、アップルのマウスはこれまでマックユーザーの強い支持によって安定的なシェアを維持してきた。しかし、ここにきてその状況は変わりつつある。きっかけとなったのは8月に発売された「Mighty Mouse」。360度と全方向にスクロールが可能なほか、MAC OS Xに加え、Windows2000/XPにも対応するなど、ターゲットも幅広い。この機種の投入により、「アップル」の寄与度は、7月の0.6%から8月には2.7%大きく伸びた。

 ここしばらくのマウス市場の堅調な動きの背景には、マイクロソフトの伸びをベースに、アップルやシグマAPOといった上位4社以外のメーカーによる下支えが加わったものであったといえそうだ。

●光学式+有線タイプの増加で、有線タイプの平均販売価格が上昇

 価格の動きはどうだろう。全体でみた平均販売価格は緩やかに下落しており、直近の8月では1月に比べ3.6%の下落幅。平均価格は2700円となった。有線と無線とで分けてみると、有線は2,200円あたりで安定的に推移。しかし7月から8月にかけて、5670円と有線タイプでは比較的高価な「Mighty Mouse」の投入効果などにより平均価格が上昇、2,300円となった。一方、無線は多少の変動はあるものの、下落トレンドに変化はなく、直近の8月は1月に比べ11.1%の下落幅を記録、平均価格は4000円となった。



 現在、マウス市場では、光学式タイプが9割弱、有線タイプが7割台半ばとそれぞれ圧倒的なシェアを占めているが、マウスの軽さや電池の入れ替えの手間がないなどの理由で、光学式+有線タイプが市場での売れ筋だ。この結果、これまで比較的廉価であった有線タイプの価格が上昇している。

 マウスの販売動向は、PC需要とリンクした動きをたどり、PC販売が好調な際には、マウスの販売も上向きになる傾向がある。そのため、マウス販売が数量ベースで4月以降プラスになったが、これは春以降PC販売が数量ベースで堅調に推移していることが背景にある。

●粗利率高く、「うまみ」があるマウス、新規参入企業も

 PC本体に比べればマウスの単価は安い。しかしショップサイドからみると、粗利率が高く旨味のある商品でもある。さらに、息の長い商品が多くデッドストックとなりにくい。一方で、機能の差別化が図りにくく、ブランド名の影響力が小さいことなどから、メーカー側は自社製品の優位性を打ち出しにくいという特性も持ち合わせている。

 決して成長市場とはいえないが、一般世帯へのパソコンの普及率が6割台半ばを占める現在、マウスはパソコンユーザーの必需品。安定した需要は期待できる。この収益源めざして新たに参入を狙う企業もまだありそうだ。

 昨年7月に市場参入したバッファローは、すでにこの8月の販売個数シェアランキングでは8位。7位のアップルに次ぐポジションにまでシェアを押し広げてきた。一見枯れた技術のように見えるマウスだが、まだまだ未知の改良ポイントが数多く隠れているのかもしれない。もっとも身近な入力装置ともいえるマウス。参入企業が増えて機能面での競争が激化することで、これまでにない画期的な製品の誕生にも期待したい。(BCN総研・西尾治親)


*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など18社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで113品目を対象としています。