アドビがこの4月に発売したPDF作成ソフト「Adobe Acrobat 7.0 Elements」が売れている。PDF作成ソフトのニーズが高まる中、実勢価格5000円前後と、アドビにしては珍しい個人ユーザーでも手が届く価格、というのが効いているようだ。PDF作成ソフトといえば低価格戦略で突っ走るソースネクストが先鞭をつけた市場。そこへアドビが「参入」した形で、市場は活況を帯びてきた。低価格化で拡大するPDF関連ソフト市場の動向をまとめた。<br />


 アドビがこの4月に発売したPDF作成ソフト「Adobe Acrobat 7.0 Elements」が売れている。PDF作成ソフトのニーズが高まる中、実勢価格5000円前後と、アドビにしては珍しい個人ユーザーでも手が届く価格、というのが効いているようだ。PDF作成ソフトといえば低価格戦略で突っ走るソースネクストが先鞭をつけた市場。そこへアドビが「参入」した形で、市場は活況を帯びてきた。低価格化で拡大するPDF関連ソフト市場の動向をまとめた。

 アドビ製品といえば「Photoshop」や「Illustrator」といったプロのデザイナー御用達ソフトが有名。高機能で高価という「高級品」のイメージが強い。しかし「Elements」はPDF作成に機能を絞り込んだ低価格のソフト。一般ユーザーも気軽に買える価格だ。この戦略で、同社のユーザー層は一気に広がりそうだ。

 低価格PDFソフトで先行するソースネクストも、これまでどおりPDFソフトに力を入れていく構えで、ソースネクスト、アドビの2社を中心に、PDFソフトの普及がさらに進んでいきそうな状況だ。



 具体的な販売状況を見てみよう。図は、PDFソフトの本数シェア推移。販売上位3ソフトすべてが4月の発売とともに売り上げを伸ばし、そのままの勢いを維持している。ソースネクストでは「最近は発売直後から一気に売れるソフトが少なくなっており、久しぶりに手ごたえのあるソフト」(川竹一マネージャー)と受け取っている。また、1位と3位のソースネクスト製品に割り込む形となったアドビの「Elements」も同様に、発売直後の勢いのまま推移している。

●マーケットリーダーとしてPDFソフト市場に力を入れるアドビ

 これまでアドビでは「Acrobat Standard」や「同 Professional」など高機能のPDFソフトしかラインアップしておらず、手軽なPDF作成というニーズに応える製品はなかった。「Acrobat 7.0 Elements」は、そのニーズに応えた製品。ファイルを「Elements」のアイコンにドラッグ&ドロップしたり、Word、Excel、Power PointからPDF作成ボタンをワンクリックするだけでPDFを作成できる。また、PDFにパスワードを設定することも可能だ。

 実は、「Elements」パッケージ版の販売は日本だけ。同社・市川孝マーケティング本部長は、「もともと顧客からの要望は強かった。さらにビジネス目的でも日本では店頭で直接購入する顧客が多いという購買行動を考慮した結果、パッケージ化に踏み切った」という。ライセンス販売でも旧バージョン「6.0」では1000ライセンスだった販売単位を、昨年12月に100ライセンス単位まで引き下げていた。そしてこの4月「Acrobat 7.0 Elements」の発売を機にパッケージ販売をはじめ、小口ユースにも対応したわけだ。

 店頭販売とはいえ、ターゲットはあくまでビジネスユーザー。「『Elements』でPDF利用者の裾野を広げ、PDF作成だけでなく、増えたPDFファイルの一元管理など、企業にPDFの活用をもっと浸透させていきたい」(同)。そのため、「Elements」のユーザーには、「Acrobat Standard」へのアップグレードサービスを提供、「Standard」そして「Professional」へのスムーズなシフトを促進していく考えだ。

 「Acrobat 7.0」製品の販売実績が順調に拡大していることや、ここにきて個人情報保護法の法施行、セキュリティ問題に関する一般的な意識の高まりなどの追い風が吹いており、同社では今後も需要は増えていくと予測している。

 また、PDFフォーマットの普及にソースネクストの果たした役割については「93年のバージョン1.0からPDF技術仕様を公開しているが、PDFを作成したいといった需要をここまで広げたのはソースネクストのおかげ。仕様をオープンにした甲斐があった」と、高く評価している。一方「PDF仕様開発元」というアドビのアドバンテージが“信頼性”として顧客に高く評価されていると分析している。「Elements」を発売したことで、個人やSOHOのユーザーも取り込みながらPDFソフト市場の拡大に一層力を入れていく方針だ。

●ソースネクストは痒いところに手が届く機能で差別化か

 こうしたアドビの動きに対し、ソースネクスト側は「びっくりした、しかもパッケージ販売が日本だけとは」(川竹マネージャー)、というのが率直な感想のようだ。とはいえ、PDFソフトを広く安く販売して普及させたいという考え方は、まさに両社共通。「PDF市場はこれから伸びていく市場」という認識でも一致しており、「Elements」の発売を歓迎している。

 ソースネクストは04年にPDFソフト分野に参入。それまで高価だったPDF製品を「1980円戦略」で個人でも気軽に買えるソフトへと変身させた。販売本数では04年、アドビの全PDF製品の2倍近くの販売本数を記録し、店頭では「PDFコーナー」もできあがった。川竹マネージャーは、「個人のちょっとしたPDFを作成したいという要望がアドビ製品では実現できていなかった。そうした個人需要を開拓した。PDF市場は今後も伸びる分野。アドビとのユーザーの食い合いはないだろう」と、見通しも明るい。

 ランキング1位の「いきなりPDF to Data」は、PDFをドラック&ドロップでWordやExcel、JPEGなどに変換するソフト。PDF作成ではなく、PDFを別のファイル形式に逆変換する機能で、「PDFファイルをわざわざスキャナで取り込まなくても、オフィスの会計資料などが一度にエクセルに変換できる」といった点が好評のようだ。

 同社のアンケートによれば、個人の仕事用途での購入が多いとのことで、個人ユーザーとはいえ、法人ユーザーの側面もあわせもつ。今後は、ほぼ同機能・同価格帯となるソースネクスト「いきなりPDF Professional」とアドビ「Acrobat 7.0 Elements」が、ビジネスユーザーにどう評価、購入されていくかが注目されるところだ。

 ソースネクスト製品のメリットは、価格が安いためオフィスの大量購入に適していることや、製品ラインアップが多く細かなニーズに対応できること、アドビ製品にない独自機能を搭載していることなどが挙げられる。また、部署単位、個人単位なら、それぞれのニーズにあわせて気軽に買えるというのもメリットだろう。

 6月24日には、PDF作成ソフトの最新版「いきなりPDF Professional 2」を発売する。PDF出力の際に、ある程度画質を犠牲にしてファイルサイズを最小にする「サイズ最小」、PDFを開いた時、メニューバーなどを省いて全画面表示する「プレゼンテーション用」、社外秘の透かしが入る「社外秘用」、書籍のように2ページごとの「見開き用」――といったいくつかの出力形式を選択できるようになる。こうした痒いところに手が届く機能で、ユーザーにアドビ製品との違いをアピールしている。同社が法人市場を切り開いていけるかどうかはこうした差別化にかかっていそうで、「いきなりPDF Professional 2」はその試金石となりそうだ。