新型コロナウイルス感染症に伴う緊急事態宣言が5月14日、39県で解除された。4月7日の宣言発出から1カ月あまり。国民が外出を控えるなどして努力した成果が感染爆発を防いだ。東京をはじめ8都道府県で宣言は継続中だが、新規感染者が減少に転じ終息も徐々に見えてきた。しかし、依然として感染の有無を判定するPCR検査の数が、諸外国と比べ少なすぎると声高に主張し続けるメディアもある。日本の検査数は本当に少ないのか。日本式の戦い方は間違っていたのか。コロナと戦った結果の一側面を示す死者数もあわせて集計し、改めて国際比較を行った。

国民が素直に手洗いを励行していることも感染拡大阻止の一因

 Our World in Dataのデータをもとに、EUを除くG20の19カ国で、人口100万人あたりの累計検査数と死者数を比較した。事実として、日本の検査数はとても少ない。5月10日時点までの累計で、100万人あたり1676人。14番目の少なさだ。検査数4万1584人でトップのイタリアと比べると25分の1、2万6313人のアメリカの16分の1、3万7335人のロシアの22分の1しか実施できていない。

 同時に累計の死者数を集計したところ、日本は4.9人でやはり14番目に少なかった。数の少なさを一つの成果と考えれば、G20各国中で極めてうまくいっているグループに入る。505.4人のイタリアの100分の1、240.3人のアメリカの50分の1、13.1人のロシアの3分の1程度だ。もちろん、日本よりもさらに少ない国は5つ存在するが、欧米諸国と比べればわずかな差だ。症状があり重症化する患者が多ければ多いほど、検査数が増えるのは当然。ロシアやオーストラリアなど、死者数に比べて極端に検査数が多い国を除けば、発症する患者が多いから結果的に検査数が多くなるということに過ぎない。悲惨な結果に終わっている欧米各国を、検査数で日本が見習う必要はまったくない。

 日本での死者数がなぜ少ないのか。要因はまだ明らかではない。BCGの接種なのか、手洗いの励行なのか、マスクなのか、靴を脱ぐ文化なのか、握手やハグをほとんどしない文化なのかは、分からない。しかし、結果として、死者が極めて少ないのは事実だ。
 

 一部には、全国民にPCR検査を実施すべきとする意見もあるようだが、全く無意味だ。PCR検査は、症状があり、所見から新型コロナ陽性の疑いがある患者に対し、感染を確定するときのみに実施する検査だ。疑わしい症状がある患者に関しては、速やかに制限なくPCR検査が行えるよう、検査態勢を整備すべきだ。しかし、無症状で感染している人を発見するために大規模な調査を行うことは、リソースの無駄だ。

 感染状況は日々変化する。今日陰性の結果が出ても、明日感染し陽性になるかもしれない。仮に一斉に全国民を対象に実施し、陽性者を全員隔離したところで、次の瞬間からまた、新たな陽性者が生まれる可能性がある。PCR検査で陰性だったとしても、ずっと陰性である保証はどこにもない。検査の時点で陰性になった、というだけの話だ。モグラ叩きのような検査を繰り返してもほとんど意味をなさない。

 当面、感染の恐れがない抗体があるかどうかを調べる抗体検査には意味がある。新型コロナウイルスの抗体については、まだ解明されていない部分も多いが、一般的なコロナウイルスの場合、抗体が作用する期間はおよそ6カ月といわれている。有効な抗体が確定すれば、少なくとも数カ月はうつしもしないし、うつされもしないことが分かる。進めるべきは抗体検査の充実だ。

 14日の記者会見で安倍首相は「わが国の人口当たりの感染者数や死亡者数は、G7、主要先進国の中で圧倒的に少なく抑え込むことができている」と発言した。分かりやすくするために、死者はイタリアの100分の1、アメリカの50分の1など具体的な数値を語ってほしかった。それだけ「圧倒的な差がある」からだ。今後日本がイタリアにならないという保証はないが、これまでの戦いでは大いに健闘し大いに成果を生んだ。胸を張って日本式でコロナ戦に打ち勝とう。(BCN・道越一郎)