ロボホンがルンバを踊る日

 生活の中でロボットが本格的に活躍する時代が到来しつつある。先週、2つの大きな発表があった。1つはシャープが展開する「ロボホン」の第2世代モデル。初代と同じく形状は小さなロボットそのものだが、実態はスマホを内蔵したコミュニケーション機器。新世代モデルでは声や画像のやり取りで留守番をしたり受付をしたりできるようになり、よりコミュニケーション能力が高まった。手足を多少動かすこともできる。しかし、物理的に役に立つことは何もできない。

話しかけやすい形というのは、人間とのインターフェースではとても重要。
ロボホンは子どもにとっても違和感なく接することができる

 もう1つはアイロボットの新しい掃除ロボット「ルンバi7」だ。家庭内でさまざまな自動化を実現するためには、場所の把握が極めて重要だとして、「部屋」の概念が新たに加わった。掃除を繰り返すことで家の間取りを学習し、指定した部屋毎に掃除することもできる。汚れている場所だけを部分的に掃除をする機能も備えた。ゴミを取り除くという物理的な機能を提供しつつ、家庭内空間を把握することで、掃除を超えたホームオートメーション分野にも活用できる新たな武器を手に入れたわけだ。しかし、形状は無骨で鉄腕アトムにはほど遠い。
 
最新モデル「i7」で実用一辺倒の無骨な形をしたルンバ。
「部屋」という概念が加わり、より使いやすくなった。税別価格は9万9880円

 人間のような形をして親しみやすく、つい話しかけてみたくなるロボホンと、ただの分厚い円盤だが実際に掃除をしてくれるルンバ。方向性が全く異なるこれら2つのロボットがそれぞれに歩み寄り、1つの形に融合して機能するとき、汎用の人型家事ロボットが誕生する。しかし、実現にはまだまだ時間がかかる。最も高い壁はコストだ。片手で持てるサイズのロボホンだが、座ったままの廉価版でも税別価格(以下同)7万9000円。2足歩行ができるWi-Fiモデルでは12万円と決して安くない。廉価版はモーター7個、2足歩行モデルはモーターを13個搭載している。モーター1個1万円というホビーロボットの相場は、なぜかここでも健在。ちなみに本体は19万8000円だが、別途3年間で9万円の利用料を支払わなければならないソニーのアイボは、23個のモーターを搭載している。
 
ルンバの生みの親、アイロボットの創業者でもあるコリン・アングル CEO。「ルンバi7で採用したマッピング技術によって、将来的にいろいろなロボットが協働的に機能することができるようになるだろう」と話す

 ホンダの2足歩行ロボットの「アシモ」は、レンタル料でも年間2000万円だった。仮に人型の汎用家事ロボットが開発できても、価格は少なくとも数千万円から数億円というレベルになりそうだ。しかし、家庭のスマート化をロボットで実現するとき、本当に1体でまかなう必要があるのか。答えはノーだ。掃除以外にも、洗濯、窓ふき、調理、食器洗い、モノの運搬と、それぞれ専用機は登場し始めている。これらを連携して動かせればいい。部屋の状況を把握しつつ掃除をするルンバと人間とのインターフェースを担うロボホンは、いわば司令塔の役割。こんな形なら高度に自動化が進んだスマートホームは意外に早く実現できそうだ。ロボホンがルンバを踊る日は近い。(BCN・道越一郎)
 
第2世代のロボホン。新しく着座タイプ(左)がラインアップに加わった