【エアコンのAIを探る・1】 2018年度上期(4~9月)の国内出荷台数が614万台と過去最高を記録したルームエアコンに、最先端のAI(人工知能)を搭載する機種が増えている。各社とも、部屋を快適にするという最終目的は同じだが、AIのアプローチ方法は微妙に異なる。不定期連載で紹介する「エアコンのAIを探る」の第1回は、三菱電機の「霧ヶ峰 FZ・Zシリーズ」の「おかませA.I.自動」をみていこう。

三菱の「霧ヶ峰 FZ・Zシリーズ」が採用するAI技術搭載の赤外線センサー「ムーブアイ mirA.I.」

360度回転する赤外線センサー「ムーブアイ mirA.I.」

 三菱の場合、AI技術搭載の赤外線センサー「ムーブアイ mirA.I.(ミライ)」で、部屋をセンシングして状況を把握し、少し先の温度と湿度の変化、人の体感温度などを予測しながら最適な気流や運転モードに切り替える。

 この一連の運転モードを「おまかせA.I.自動」と名付けて、世界初の技術としてアピールする。インターネットを通じたクラウドで機械学習するのではなく、あくまでも本体のエッジ側にAI技術を搭載しているのも、三菱ならではの大きな特徴だ。

 リモコンの運転ボタンを押すと本体から「ムーブアイ mirA.I.」が出てきて、部屋中をセンシングする。360度回転するので、これまで検知できなかったエアコン設置面の壁や窓の温度変化までとらえることができる。三菱の調べでは、リビングの7割はエアコンの設置壁面に窓があるという。

 「ムーブアイ mirA.I.」で使われている赤外線センサーは、人の手先や足先の温度が検知できるほど高精細で高精度。なぜそこまで高感度なセンサーを使うのだろうか。

 人間は大切な臓器を守るために、例えば寒い時は体の中心に血液を集めるため、手先の表面温度が下がる。逆に、暑いときは手先の温度が高くなる。そのため「ムーブアイ mirA.I.」は、手先や足先の変化を細かくセンシングして、人が寒いと感じているか、暑いと感じているかをとらえているのだ。
 
一般的な赤外線センサーと「ムーブアイ mirA.I.」の比較。人の指先の温度までセンシングできる

 「ムーブアイ mirA.I.」が検知するのは人の温度だけではない。室温に影響を及ぼす住宅性能や朝、昼、夕、夜などの日射熱の影響などから人の体感温度を予測する。データを繰り返し取得することで、部屋の暖まりやすさや、冷えやすさを学習していくわけだ。さらに、少し先の未来の体感温度の変化まで予測できるのが、ポイントである。

 一般的なエアコンは、冬の場合、部屋の温度が下がってから温度を上げて暖かくする。そのため、人は一瞬ではあるものの寒いと不快に感じる。しかし、「おまかせA.I.自動」は少し先の未来の体感温度を予測するため、人が不快に感じる前に、先回りして温度や湿度、気流などを制御するのだ。

 「おまかせA.I.自動」を使う際は、リモコンの「A.I自動」ボタンを押すだけ。あとはAIが快適にコントロールする。しかし、いつも快適なだけに微妙な気流の変化や温度変化は感じにくくなり、「本当にAIが働いているのか?」と疑いたくなるユーザーも少なくないだろう。

 そこでリモコンに「A.I.ナビ」ボタンを搭載。ボタンを押すと、リモコンの画面に少し先の部屋の未来が表示される。エアコンの稼働状況を、あえて「見える化」しているのだ。例えば、「少し先の温度と湿度のバランスを予測し、除湿に切り替えました」といった文字がイラスト付きで表示される。
 
「おまかせA.I.自動」はリモコンの大きな「A.I自動」ボタンを押すだけ
 
「A.I.ナビ」でエアコンの未来予測や稼働状況を「見える化」

 三菱がエアコンに赤外線センサー「人感ムーブアイ」を初めて搭載したのは2006年。それから12年の間にさまざまなセンサー技術を開発しながら、ついにAI技術を搭載するまでに発展した。「おまかせA.I.自動」が今後どのように進化していくのか注目していきたい。(BCN・細田 立圭志)