コマツが掲げるスマートコンストラクション2.0は、人の働き方や生き方そのものまでも変える、きわめて大きなポテンシャルを秘めている。AIとロボット技術を応用した究極の建設現場を目指すもので、実現すれば土木の現場から作業員が消える。幕張メッセで開かれた「CEATEC 2018」でその一部が紹介された。会場には自律運転ができる本物の油圧ショベルとクローラーダンプが持ち込まれ「現物」が持つ圧倒的な存在感が周囲のブース制圧しているかに見えた。さらに、土木工事というリアルそのものの世界を根底から変えてしまうコンセプトがひときわ異彩を放っていた。

遠隔操作にも対応する自律運転油圧ショベル PC200i(右)と自律運転区ローラーダンプ CF-1

 土木工事を行う建設機械(建機)は、互いに強調しながら自律的に動き、設計図面に従って粛々と作業を進める。人間は遠く離れた場所にある管理センターで複数の現場を同時に監視しながら、必要に応じて指示を出すだけ。建機で行う複雑な作業は、専門技術を身につけた作業員が行う場合もあるが、遠隔で操作できるため現場に行く必要はない。作業員は海外のオフィスにいても自宅にいても、モニターと操作環境が整っていればどこにいてもいい。必要に応じて世界中から作業員をオンラインで招集し、作業に参加してもらう、ということもできる。工事現場に人は誰も居ない。そんなイメージだ。

 実際は、現在の自動化が進んだ工場でも何かと人の作業が必要であるように、建機の運搬やメンテナンス、現場での細かな事前準備や調整で、人間は必要だろう。当面は。しかし、そうしたことをこなす運搬ロボットやメンテナンスロボット、事前調整用のロボットなども開発されるとなると、人がやっていた作業もゆくゆくは自動化され、本当に誰も居ない現場が実現することになる。この動きは建設現場にとどまらず、人の存在が不可欠と思われていたあらゆる「現場」にも広がりそうだ。農業も医療も教育も物流も介護も、人がそこにいなくても成り立つ可能性が出てくる。労働形態の革命そのものだ。
 
自律運転油圧ショベル「PC200i」を実際に遠隔操作するコックピット。
5G回線で現場と結ぶことで遅延のない操作が可能

 コマツは日本ではダントツの建機メーカー。世界市場でもトップシェアのキャタピラーに迫る2位のポジションを誇る。ここまで成長した原動力はICT技術だ。GPSを活用し建機の位置情報などを集約する「KOMTRAX」というシステムが流れを変えた。それまで課題だった建機の盗難を減らすことに成功し、効率的な建機の配置にも応用することで、一時は赤字だった業績を急回復させた。現場の自動化を目指す端緒だ。そもそもの自動化の目的は建設技能労働者不足への対応だ。

 2026年には日本で必要とされる労働者の3分の1、実に128万人が不足するともいわれている。そこで、自動化による生産性向上でカバーしようというわけだ。

 人手のかかる典型的な労働集約型の建設現場が激変するインパクトは計り知れない。もちろん、すぐにあちこちの建設現場が無人になって、道や橋が自動的にどんどんできていくようになるわけではない。しかし、ある種SF的とも言えるこうした光景が見られるのも、そう遠い将来のことでもなさそうだ。仕事や生活あり方が劇的な変化を遂げる時が刻々と近付いている。(BCN・道越一郎)