ホームボタンの代わりに「下からスワイプ」で戻る操作を「iPhone X」の実機で試してみた第一印象は、「わかりやすい」だった。新たに取り入れた顔認証機能「Face ID」も、「画面ロック」や「ログイン」といった概念を理解しづらい高齢者にとっては、シンプルで親しみやすいと思った。

最新モデルのはずなのに……「iPhone X」に感じる「シニア向け」の要素

 「iPhone X」は「次の10年を見据えた次世代スマートフォン」を標榜しつつ、若年層よりもむしろ、まだスマートフォンを使った経験がなく、操作に不安をもつシニアユーザーを想定して開発したのではないだろうか? 特に日本の場合、65歳以上の高齢者の割合はすでに総人口の3割弱を占め、しかも今後、75歳以上の高齢者の割合が増えていく。いまなお従来型ケータイを使い続ける、こうした層にiPhoneを選んでもらわなければ、さらなるシェア拡大は難しい。

 しかし、「iPhone X」は、本体価格が10万円以上のため、分割払いする場合は、本格的な与信審査が必要となり、料金滞納などの履歴があると審査が通らず、一括払いで購入せざるを得なくなる。審査が通って分割払いで購入可能だとしても、年金のみで生活する高齢者や支出の多い学生にとっては躊躇する金額だろう。そうなると、候補に上がるのが、iPhoneシリーズ最安の「iPhone SE」だ。
 
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iPhoneの主な現行ラインアップ
(左から、5.8インチのiPhone X、4インチのiPhone SE、4.7インチのiPhone 8のシルバー)

<比較ポイント>

(1)価格

 最安モデルのAppleのオンラインストアでの価格を比較すると、「iPhone X」は64GBで税別11万2800円、「iPhone SE」は32GBで税別3万9800円。実質負担額は、例えばドコモの場合、「iPhone X」は6万8472円、「iPhone SE」は1万5552円となり、ストレージ容量が異なるとはいえ、差は約5万3000円だ。ソフトバンクグループのY!mobileだと、「iPhone SE」の実質負担額はもっと安い。
 
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「iPhone X」を取り扱う3社のトップページ

 また「iPhone SE」は、MVNOのUQ mobile、BIGLOBEモバイルも取り扱っている。楽天モバイルなど他の多くのMVNOも、SIMカードとのセット端末として、1年間のメーカー保証がついたメーカー認定整備済品を取り扱っており、国内で販売されている正規品とほぼ同じ製品がより安く手に入る。
 
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Y!mobile、BIGLOBEモバイルの「iPhone SE」紹介ページ。どちらも2世代前の「iPhone 6s」も取り扱っている

(2)カラーと仕上げ

 「iPhone SE」は、そもそも4インチサイズを好む既存のiPhoneユーザーの買い替えの受け皿だ。全面ディスプレイの「iPhone X」は高さ143.6×幅70.9×厚さ7.7mm、重さ174g。対して「iPhone SE」は、高さ123.8×幅58.6×厚さ7.6mm、重さ113g。「iPhone SE」より「iPhone X」のほうが12.3mmも横幅が大きく、サイズ感はまったく異なる。

 「iPhone X」のカラーは、「ブラック」に相当するスペースグレイと、明るいシルバーの2色のみ。ディスプレイ周辺のベゼル部分のカラーはブラックで、ホワイトにこだわるなら「iPhone X」は検討外となる。
 
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iPhone Xのベゼルのカラーは原点回帰の黒

 問題は、ケースを装着すると隠れる背面のカラーよりも頑丈さ。「iPhone X」の外観は確かに美しいが、以前より割れやすく、実際に割ってしまったというユーザーの報告事例もある。耐衝撃タイプのケースや保護フィルムは必須だろう。その点、「iPhone SE」なら若干、手荒く扱っても安心だ。

無理せず、お財布事情に合った端末、プランを

 コストを重視するなら、本体価格が安く、デザインによっては同じ画面サイズの「iPhone 5s」用のケースや保護フィルムも使用できる「iPhone SE」のほうが無難といえる。ただ今後、「X系」が主流になると予想すると、シニアにはジェスチャー操作の「iPhone X」のほうがおすすめかもしれない。最初から新しい操作体系で覚えたほうが、次に買い替える際にスムーズだからだ。
 
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 「iPhone X」の「Face ID」はシニア層を意識した新機能とみなすと、スマホゲームに不向きな変則的な縦横比のディスプレイは、ターゲット層にあわせて、あえてシリーズ間の整合性を切り捨てた部分だと納得できる。(BCN・嵯峨野 芙美)


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