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暮らしにゆとりと気づき 「スマートホーム」は実用化目前―ドコモ「未来の家」レポート

 NTTドコモは、AIクラウドプラットフォームの研究開発に力を入れている。6月には、横浜市、and factoryと共同で、横浜市が立ち上げた「I・TOP横浜」内のプロジェクトとして人工知能(AI)や既存のIoT機器を活用した「未来の家プロジェクト」を開始した。この「未来の家」は移動式のトレーラーハウスで、IoTスマートホームとして、一人暮らしに必要な最低限の家電製品や住宅設備を凝縮。コンセプトは、居住者の生活状態などをクラウド上に収集し、自動化によるゆとりのある生活、データの可視化による「気づき」だ。

 現在、2歳半になる子を育てながら、どうすれば仕事や家事など、日々の行動の効率化を図り、少しでも多くの自由時間を捻出できるか考えていたところ、「未来の家」を知り、求めているものはこれだ! と感じた。そこで現在、トレーラーハウスが置かれている横須賀市の「NTTドコモ R&Dセンタ」を訪れ、担当のNTTドコモのR&Dイノベーション本部 サービス部 第2サービス開発担当の山下 顕氏にお話をうかがった。
 

「未来の家プロジェクト」のコンセプトを説明した
NTTドコモのR&Dイノベーション本部 サービス部 第2サービス開発担当の山下 顕氏
 

ドコモが主体となって開発 実用化に向け、実証実験をスタート

 「未来の家プロジェクト」として3者が実証実験を行う「未来の家」は、いわゆるスマートホームだ。生活動線に合わせて設置したIoTセンサなどで、居住者の生活状態などをクラウド上に収集し、居住者は一つの管理画面で生活状態を把握できる。
 

「未来の家」の外観

 事前の予想に違わず、訪れた「未来の家」では、「香りデバイス」など、インテリアに違和感なくマッチするオシャレなIoT機器を活用した”理想の暮らし”がすでに提示されていた。
 

最新のIoT機器が勢揃い
(左から、アプリを通じて香りを放出する香りデバイス、冷蔵庫の扉の開閉回数をカウントする開閉センサ)

 

アプリで照度や色をコントロールできる照明や、朝になると自動的に開くカーテンで、良質な睡眠をサポートする

 「未来の家プロジェクト」の実証実験では約2年間にわたり、実際の生活ログを蓄積、解析することで、居住者の生活状態や快適さについて評価・検討を行う予定。現状は、専用アプリをインストールしたスマホが司令塔の役割を果たしているが、将来的には、AIを活用することで家が居住者の生活状態を理解し、室内環境を快適で健康的な状態に自動調節して意識なく利用できる仕組みを目指す。
 

IoTスマートホーム「未来の家」のシステム構成

 さまざまなIoT機器がシームレスに連携する「スマートホーム」ならではのメリットとして、従来はデバイス・サービスごとに必要だったアプリをわずか2つに集約。制御アプリでは、学習リモコンのように、エアコンやカーテン、空気清浄機など、連携するIoT家電を手軽に操作できる。玄関扉や窓に取り付けたスマートロックで、防犯対策もバッチリだ。
 

連携するIoT家電などを一括制御できるアプリ(左)と、敷布団の下に引く睡眠計。
ウェアラブル端末とは違い、睡眠時に装着する必要がないので、続けやすく、寝相が悪くても大丈夫

 

出かける際に忘れ物があると、照明の色が変化して居住者に通知する(イメージビデオより)。
アプリを通じて照度や色を調整できるスマート照明、紛失防止タグなどは市販されており、
実用化はさほど難しくはないという

「良質な睡眠」や「健康的な食生活」をアシスト

 食べ過ぎや睡眠不足などに悩み、今の暮らしは健康的ではない、既存の住宅施設・家電は不便と感じているなら、「毎日、乗るだけで自動的にデータを記録する体重計」や「家任せの快適な空調」「香りの癒やし」などに否応なく期待が高まるはずだ。
 

床に埋め込まれた体重計(左)で計測した前日の体重や睡眠解析データ、天気などを表示する鏡(右)。
従来のスマホに代わる、開かれた情報ウインドウだ

 いや、ちっとも必要性を感じない、大きなお世話だ、と感じるようなら、すでに健康でゆとりのある生活スタイルになっているので、現状の生活を継続すれば十分だろう。

 個人的に最も気になったのは、食卓の上の専用スペースにスマホを置き、食事の写真を撮るだけで、メニューに応じた摂取カロリーを推定して記録する「食事解析カメラ」。画像解析によって自動で、手間をかけずに、レコーディングダイエットに必要な情報を取得でき、食生活をコントロールできる。

料理全体を上から撮影する必要があるため、食卓の上の棚板に穴を開けて、撮りやすいよう工夫した。
食事のたびに写真を撮るだけで摂取カロリーを記録でき、アプリで簡単に振り返ることができる

 家全体を一元管理して丸ごと制御する「スマートホーム」は、対象範囲が広いだけに、なかなか普及は難しいと思われるが、一部分だけならそれほど難しくないだろう。特に「食事解析カメラ」は、体重を気にしている多くの女性が切望している機能だ。技術的なブレイクスルーが起こり、さまざまな機器が連携して、暮らしのストレスを軽くする「未来の家」の実用化も、そう遠くはないかもしれない。(BCN・嵯峨野 芙美)