<Sensation>進まないキャッシュレス化を問う

オピニオン

2017/02/28 17:28

 現在、日本では、現金決済が主流だ。同時に、おおむね1ポイント1円相当として買い物できる「ポイント」が広く使われている。ポイントは一種の仮想通貨。現金での支払いにこだわる人でも、貯まったポイントでの支払いには抵抗がなく、キャッシュレス化進展の鍵は、共通ポイントを中心とした、ポイント経済圏の拡大にかかっている。


<POINT>

(1) 世界は現金レスに向かう
(2) 今やほぼ現金相当 広がるポイント経済圏
(3) 「スマホをサイフに」 モバイル決済は普及するか

「使わずに眠るお札」が積み上がる日本 2016年末には過去最高の約102兆円に

 日銀の発表によると、2016年末の時点で個人の財布や企業の金庫、銀行のATMなどにあり、そのまま年を越すお札(銀行券)は過去最高の102兆4612億円となり、初めて100兆円を超えた。年末は、買い物などのため、ATMから現金が多く引き出される傾向にあり、加えて、最近はタンス貯金が増えているという。

 一方、世界で最もキャッシュレス化が進んだ国といわれる北欧のノルウェーでは、クレジットカードや電子マネーなどによる決済が主流で、現金決済の比率はわずか6%。また、インドでは高額紙幣を廃止するなど、国をあげてキャッシュレス化を推進している。韓国も2020年までに硬貨を廃止する方針と報じられた。

 訪日観光客向けにクレジットカードや電子マネーを利用しやすい環境を整備するなど、日本でも、キャッシュレス化の取り組みは皆無ではない。しかし、消費者の意識が変わらないままでは、世界の流れから取り残されてしまう懸念がある。

新規発行や相互交換も活発 ますます広がるポイント経済圏

 クレジットカードなど、非現金決済サービスを利用すると、店舗独自のポイントまたは共通ポイントサービスのポイントに加え、決済したカードやサービスのポイントが貯まり、ポイントの3重取り、4重取りも可能だ。

 小売業でポイントカードの仕組みを初めて導入したのはヨドバシカメラ。以降、NTTドコモやKDDIなど通信事業者をはじめ、国内の多くの企業が追随した。
 

ユーザーの囲い込みから始まったポイントは、今や現金とほぼ同じ重みをもつ

 現在、ポイントサービスは、Tポイントなど、リアル店舗、オンラインサービス問わず、多くの店で利用できる共通ポイント、個々の店舗や企業グループ単位で使える独自のポイントの2つの方向性で広がっている。貯まったポイントは、他のポイントとの交換も可能で、ほぼ現金と同じ扱いだ。

 ポイントの消費をトリガーに、自社や提携先サービスの継続的な利用をうながす「ポイント経済圏」は、共通化や乗り入れによって複雑化しつつ、今後、ますます拡大すると予想する。
 

キャッシュレス化の本命 モバイル決済、普及の鍵はポイント

 昨年10月のAppleのモバイル決済サービス「Apple Pay」に続き、12月には、一部の機能のみながら、FeliCa対応Android端末で利用できるGoogleのモバイル決済サービス「Android Pay」が日本でもスタート。それらと並んで、ポイント還元率の高さから、LINEのモバイル送金・決済サービス「LINE Pay」が話題になっている。
 

「Apple Pay」同様、サイフ代わりを目指した「おサイフケータイ」の開始は2004年7月。
コンセプトに端末の性能や通信環境が追いつかず、早すぎたスタートだった

 キャッシュレス化の本命、スマートフォンやウェアラブル端末を使ったモバイル決済サービスの普及も、「おトク感」で広がるポイント経済圏の拡大が鍵を握るのではないだろうか。(BCN・嵯峨野 芙美)