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08年ケータイ冬商戦、新機能・サービスで需要喚起を狙う各社の戦略は

特集

2008/11/20 19:00

 KDDIau)、ソフトバンクモバイル、NTTドコモなど携帯各社が携帯電話の新製品を発表し、08年冬商戦モデルが出そろった。市場が飽和し、端末代金を分割で支払う割賦制度の導入などで、販売が落ち込むなか、各社はどんな戦略で臨むのか。その動向をまとめた。


auは「究極美」、ソフトバンクは「タッチパネル」を目玉に端末を展開



 KDDIは10月27日に08年冬商戦モデル7機種を発表、先陣を切った。同社は「究極美」をコンセプトに高画質を売り物にした大型で高精細な画面の端末を投入する。ワンセグの視聴に加え、映像配信サービスと連携し、映画などに多い16:9のコンテンツも楽しめるようにした。

KDDIの発表会にはミスユニバースジャパンの森利世さん、知花くららさん、
美馬寛子さんが映像美を追求した端末を持って登場。新製品をアピールした

 映像美を追求した端末は3機種。「Wooo(ウー)ケータイ W63H」(日立製作所製)、「EXILIM(エクシリム)ケータイ W63CA」(カシオ計算機製)、「AQUOS(アクオス)ケータイ W64SH」(シャープ製)を販売する。

3.1型ワイドVGA対応の有機ELパネルを採用した
「Woooケータイ W63H」(日立製作所製)

 「W63H」「W63CA」は世界初の3.1型ワイドVGA対応の有機ELディスプレイを採用。「W64SH」もauで最大の3.5型液晶を搭載した。「W63CA」は有効809万画素のカメラ機能も備える。

有効809万画素のカメラ機能を搭載した「EXILIMケータイ W63CA」(カシオ計算機製)

 そのほか、持ち歩くだけで消費カロリーなどを自動的に測定する機能を搭載した「W65T」(東芝製)、薄さ12.9mmの「W62P」(パナソニック モバイルコミュニケーションズ製)など4機種をそろえた。「他社よりも高画質なケータイ。非常に期待が持てる端末がそろった」と、高橋誠・取締役執行役員常務は発表会で自信をみせた。

 一方、ソフトバンクモバイルのメインテーマは「タッチ」(孫正義社長)。指で触れて操作するタッチパネル式の端末を冬商戦の主力に据える。同社では販売する「iPhone(アイフォーン) 3G」で、タッチパネルの認知度が高まったとみて端末を拡充した。

ソフトバンクモバイルは冬商戦でタッチパネル式の端末4機種を主力に据える

 タッチパネル端末は4機種を発売する。目玉は「AQUOSケータイ FULLTOUCH(フルタッチ)」(シャープ製)。3.8型のハーフXGA液晶を搭載し、ウェブ閲覧のスクロールや拡大・縮小、ワンセグ、カメラなどを画面に指を触れることで操作できる。

3.8型のハーフXGA液晶を搭載したスライド式端末「AQUOSケータイ FULLTOUCH」


「iPhone 3G」向けに充電池機能を備えたワンセグチューナーも発売
 ほかにも「930SC OMNIA(オムニア)」(サムスン電子製)、「Touch Diamond(タッチダイヤモンド) X04HT」、「Touch Pro(タッチプロ)」(HTC製)といった海外メーカーの端末も用意した。また、「iPhone 3G」は充電池機能を備えたワンセグチューナーを発売し、絵文字にも対応させることで、販売のテコ入れを図る。

 08年の夏商戦で打ち出した女性をターゲットにする端末も増やした。肌をきれいにしたり、目の大きさを少し大きくするといった微修正ができるカメラ機能を搭載した「830CA」(カシオ計算機製)などを発売する。「ソフトバンクは攻めの一辺倒。新しい端末・機能でユーザーのワクワク感、ドキドキ感を広めていく」と、孫社長は意気込む。



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「一人ひとりの顧客に合ったケータイ」をテーマに22機種を投入するドコモ



 「機能ありきではなくお客様の嗜好にあわせたケータイを提案する」――NTTドコモの山田隆持社長は08年冬モデルの発表会で、こう強調した。

 ドコモは今回から高機能機「90Xi」と普及機「70Xi」のシリーズを廃止。2-30代の女性向けでファッション性を重視した「スタイル」、20代をターゲットに映像や音楽などの機能を充実させた「プライム」、3-40代の男性が対象の「スマート」、ITやデジタル機器に強い2-30代男性向け「プロ」の4シリーズに端末の区分を刷新した。冬モデルは22機種を投入する。

ドコモは08年冬モデルから「スタイル」(写真左上)、「プロ」(右上)、
「プライム」(左下)、「スマート」(右下)の4つにシリーズを刷新した

 「スタイル」では有名パティシエ、ピエール・エルメとコラボレーションした「N-03A」(NEC製)、クリスタルカットデザインを採用し、ジュエリーブランド、4℃とのコラボモデルも用意した「F02A」(富士通製)など6機種をラインアップした。

有名パティシエ、ピエール・エルメとコラボレーションした
スタイルシリーズの端末「N-03A」(NEC製)

 「プライム」は800万画素カメラ搭載の「AQUOSケータイ SH-01A」(シャープ製)、縦・横画面での操作が可能で、画面の開き方に合わせてキーの表示と配列が変わる「P-01A」(パナソニック モバイルコミュニケーションズ製)など7機種を発売する。

 「スマート」はデザイン家電ブランド「アマダナ」とコラボした薄型端末「New amadanaケータイ N-04A」など4機種、「プロ」ではスマートフォン「Nokia E71」(ノキア製)など3機種を用意した。

 ドコモもタッチパネル端末を発売する。画面を3通りに変えることができる「N-01A」(NEC製「プライム」)、3.5型液晶QWERTキーボードを採用した「SH-04A」(シャープ製「プロ」)、スマートフォン「HT-01A」(HTC製「プロ」)など8機種をそろえた。「豊富なラインアップを売りにしていく。22という数は多いとは思わない」と、山田社長は説明する。

プライムシリーズで発売する画面を3通りに変えることができる
タッチパネル端末「N-01A」(NEC製)

 イー・モバイルはデータ通信カード端末に力を入れる。同社では上りの最大通信速度が毎秒1.4Mbps(メガビット/秒)のHSUPAサービスを国内で初めて11月20日から開始。対応するUSBスティック型やPCカード型の通信カードを販売する。また、通話機能も備えたUSBスティック型端末「H11LC」(中国ロングチアー・テクノロジー製)も12月に発売する。

イー・モバイルが発売する上りの最大通信速度が毎秒1.4Mbpsの
HSUPA対応データ通信カード端末3機種

 同社はミニノートPCメーカーや大手家電量販店と組み、イー・モバイルの契約者が100円でPCを購入できるキャンペーンを実施。今回のカード端末でも「100円PCを続ける」(阿部基成副社長)ことで、販売を伸ばす狙いだ。

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機能の差異化が難しくなるなか、新サービスで買い替え需要を喚起



 携帯大手3社は新端末に合わせた情報配信などの新サービスも発表した。ドコモは利用者が住んでいる地域や趣味にそった情報を配信し画面上のキャラクターが知らせるサービス「iコンシェル」を11月中旬から開始。KDDIも季節や時間をベースにキャラクターが教える「エージェントインターフェース」を09年1月から試験サービスで始める。

ユーザーの趣味などに合わせた情報を配信するドコモの新サービス
「iコンシェル」のサービス概要

 ソフトバンクは待受け画面上のアイコンを指で触れたり、選択することで情報を入手できる携帯電話向けソフト「モバイルウィジェット」を11月下旬から提供する。PCのショートカットのような機能で、知りたい情報にすばやくアクセスできる。ウィジェットは画面上で自由に配置が可能だ。ドコモも同様のサービス「iウィジェット」を発表した。

ソフトバンクモバイルの「モバイルウィジェット」の利用イメージ。
灰色の枠で囲んであるアイコン部分をクリックすると詳細情報にアクセスする


 これまで各社はワンセグを軸に機能を競うことで、端末の買い替えを促進してきた。しかし、「ワンセグが一巡し、機能的に新しいニーズを呼び起こすものがなくなっている」(石井圭介・パナソニック モバイルコミュニケーションズ取締役商品企画担当)状況にある。

 新サービスは携帯の画面をユーザーの好みにカスタマイズできるため、各社は“自分だけのケータイを作ることができる”という点をアピールすることで、買い替え需要の刺激や新規ユーザー獲得を図る狙いだ。

端末販売増に向け異なる大手3社の戦略



 新製品やサービスで端末の販売減少に歯止めをかけたい携帯各社だが、その戦略は異なる。ドコモは現状の約5400万人ユーザーの囲い込みを基本に買い替えを促進する。施策の1つとして挙げるのが、約750万人いる2.5Gサービス利用者の3Gサービスへの移行だ。「PDC(2.5G)の巻き取り(移行)を積極的に行い、09年3月期の下期は端末の販売減を10%(前年同期比)に収めたい」と、山田社長は強調する。

 KDDIは「『商品とサービスの連携』や『多様なユーザーインターフェイス』といった点をアピールして、端末の買い替え促進や新規のユーザーを獲得していく」(高橋常務)方針。同社では09年3月までに1440万台の端末販売を計画しており、冬モデルを核に目標をクリアしたい考えだ。

 新規契約数から解約数を引いた純増数で18か月連続首位のソフトバンクは「年末商戦での販売数はやってみないとわからないが、新しいスタイルのケータイを提供して、ケータイで楽しく過ごしてもらうことを推進していく」(孫社長)ことで、純増数首位の維持と、端末の買い替えを促す。

 ソフトバンクは他社に先駆けて06年に端末の割賦販売を導入。2年前に24回払いを選んだ利用者が満期を迎える。「2年縛りが解けるのはチャンス」(小野寺正・KDDI社長)と、他社はそのユーザーの獲得を狙うが、「家族以外でも無料で通話できる他社にはないサービスがあり、割賦が終わった後も満足して使い続けてくれるお客さんが大半」と孫社長は自信をみせる。

(左から)山田隆持・NTTドコモ社長、高橋誠・取締役執行役員常務、孫正義・ソフトバンクモバイル社長

 ただ、景気が減速するなか、冬モデルで買換え需要をどれだけ喚起できるかは未知数。消費者の選択眼も厳しくなっている。新端末やサービスの魅力をいかに訴えることができるかが、各社の端末販売の拡大とシェア獲得のポイントになりそうだ。