5月21日、SNS型無料英語学習サイト「iKnow!」を運営するセレゴジャパンは、同サイトのベータバージョンが「1.3」から「2.0」にバージョンアップした。今回のVer 2.0について、エリック・ヤング社長は、「新しいフェーズに突入した」と説明。「iKnow!」にとっての次のフェーズとは何か、今後のビジネス展開について、セレゴジャパンのアンドリュー・スミス・ルイス会長、エリック・ヤング社長、マイケル長谷川営業本部長兼事業開発本部長に話を聴いた。

●そもそも「iKnow!」って何?

 英語学習サイトとSNSがひとつになり、しかもすべて無料で利用できる「iKnow!(アイノウ)」という学習サイトがいま人気を集めている。サービス開始は07年10月。それからわずか8か月が経過した08年5月には会員数が17万人を突破した。アンドリュー・スミス・ルイス会長とエリック・ヤング社長、2人のアメリカ人が日本人用の英語学習サイトを立ち上げた、ということでも注目されている。

 「iKnow!」では、独自開発の学習エンジンを採用したアプリケーションを使って、英語を学習していく。学習エンジンは、1度学習した内容に対して忘れそうなタイミングを解析し、忘れかかったときに再度学習を促するという脳科学に基づいているという。1人ひとり違うとされる記憶の強さや定着度を解析して問題を作成し、進捗度に合わせた学習スケジュールを提供してくれるのが最大の特徴だ。また、孤独で長続きしないとされるオンライン学習の問題点を解決するためにSNS機能も備える。同じ目的を持ったユーザーとの交流や、英語blogを開設したりすることもできる。

 学習コンテンツは、NHKの人気語学番組「100語でスタート英会話」でお馴染みの投野由紀夫・東京外国語大学准教授が監修した「投野コーパスチャンネル」や、「ビジネス英語チャンネル」「留学チャンネル」など8チャンネルで全74コースを用意する。学習方法は至ってシンプルで、単語やフレーズの意味を10択や5択で答えたり、読み上げられる単語や例文をキーボードで打ち込んでいくディクテーションを通じて学習していく。また、「iKnow!」は携帯電話やiPodなどの携帯オーディオ、家庭用ゲーム機「Wii」でも利用可能。PC以外で使用するときも、自分の学習データに基づいて使用できる。


 今回「2.0」にバージョンアップした「iKnow!」。目玉は「マイリスト」機能だ。ユーザーは「iKnow!」内のアイテムをもとに自分にあった内容の学習コンテンツを作成して、それを学習エンジンを利用して学ぶことができる。例えば「自分がなかなか覚えられない苦手なアイテム」や「海外ドラマや映画のセリフ」だけをひとつのリストにまとめ、集中的に学習することができる。


 バージョンアップについてエリック社長は、「エキサイティングな試み。『iKnow!』にとって新たなフェーズに入った」と話す。その新たなフェーズとはどんなものなのか、運営会社セレゴジャパンのアンドリュー会長、エリック社長、マイケル長谷川営業本部長兼事業開発本部長にインタビューした。

●Ver.2.0について ―UGCがもたらす次のフェーズとは―

――今回、バージョンが1.3から2.0に変わりましたが大きな違いは

 私たちは脳科学に基づいた学習エンジンを基に、ユーザーが英語をまじめに、楽しく、効率よく勉強するための学習サイトを提供してきました。そして、今回の「Ver 2.0」では、UGC(user generated content)を組み込んだことで、その性格は大きく変わります。いままで、限られたコンテンツのなかでの英語学習しかできませんでしたが、「マイリスト」機能を使うことで、ユーザーは自分の興味があることを自分本位で学習できるようになるのです。(エリック氏)

――マイリスト機能(UGC)がもたらす効果は

 英語を学習したいと考えるユーザーには、それぞれ英語で得たい情報や目的があると思います。いままでは、私たちが提供したコンテンツをユーザーが脳科学に基づいて勉強するのが目的でした。ですから、医学英語や法律英語など特定分野の英語を学習したいユーザーには、「iKnow!」はコンテンツを提供できていませんでした。しかし、数十万人というユーザーに対して、1人ひとりにあった英語コンテンツを提供するのは不可能といえます。そこで、ユーザーが自分自身で自分にあったコンテンツを作れるようにすることで、最短で必要な英語を習得できるようになるのです。

 ユーザーにとって必要な情報(英語)を、暗記レベルの知識まで上達させることが「iKnow!」の次の役目だと思っています。コンテンツの作成をオープンにしたことで、いままでとは全く違う新しいフェーズに入ったといえます。(アンドリュー氏)

――新しいフェーズに入っての感触は? どういう変化が起きているか

 マイリストを導入して1週間が経過した時点で、すでに約1600ユーザーによって2000以上の「マイリスト」が作成されています。つまり、開始1週間で全ユーザーの約1割が利用し、なおかつ私たちが半年掛けて作ったコンテンツの数を、あっという間に超えてしまいました。いまでも毎日数百というリストが作成され続けています。これがUGCのパワーです。(エリック氏)

――どういったコンテンツが作成されていますか

 スティーブ・ジョブズのスピーチを利用したリストや、ディズニーの作品を利用したリストなどが人気を集めています。そのほか実際の英語教師が生徒向けにリストを作り、進捗を確認しながら学習を進めているケースなども報告されています。

 確かに、2000というコンテンツのなかで優れた作品と呼べるのは、ごく一部です。しかし、1つでも優秀なコンテンツが作成させれれば、それをみんなで共有することができます。そして、少しでも合わない部分があれば、自分用にカスタマイズすることもできる。今後リスト数が増えれば増えるほど、コンテンツの幅は広がり、自分にあったコンテンツを見つけることや簡単に作ることができるようになります。まさに自分のための英語学習を実現することができるといえるのです。(マイケル長谷川氏)


――今後はコンテンツの開発を行わない予定か

 6月、7月に掛けて私たちは、新たな学習コンテンツを提供する予定です。基礎英語やTOEICなど、基本的な英語学習を目的としたコンテンツは我々で作成していきます。ただ私たちは、コンテンツ提供を目的とした会社ではなく、学習プラットフォームを提供する会社だという意識は強く持っています。(エリック氏)

●ビジネスについて ―学びたいという欲求は人類共通―

――現在の利用状況について

 07年10月からサービスを開始して、半年が経った08年04月時点でユーザー数は15万人を突破しました。5月の段階では17万人まで拡大し、今年は50万人を目標にしています。この数字は、日本の代表的なSNSサイトである「mixi」が半年で約8万人、1年で約40万人の会員を集めたことをみても不可能な数字ではないと思います。

 また、学習サイトという性格からページビューという指標をあまり重視していません。そして、「iKnow!」に滞在している時間でもなく、「iKnow!」のアプリケーションを開いている時間、すなわちユーザーが集中して学習している時間を最も重要な指標としてカウントしてます。その学習時間は、4月単月だけで、21万3000時間、学習されたアイテムは2172万3000アイテムです。(エリック氏)

――これだけ受け入れられている理由は

 学習や学びは人間が生きていくために必要なものだと思います。それは人間の欲求としてDNAに存在するものです。昨年、SNSが世界的にヒットした理由も、人間は人とつながりを持ちたいという欲求にテクノロジーが応えたことで成功したと思います。ですから、学びたいという人間が持つ潜在的欲求に「iKnow!」がテクノロジーで応えたということになります。特に日本人にとって、英語は最も学びたいコンテンツのひとつでもありますから。(エリック氏)

――最初から日本人の英語学習をターゲットに

 脳科学に基づく学習エンジンは、語学だけでなくあらゆる学習に応用できるテクノロジーです。日本にビジネスを展開させた理由はいくつかありますが、日本人は学習能力が高いのに英語力がかなり低いこところに着目しました。しかし、日本人は英語学習に対してけっこうなお金を掛けている。たぶん、効率よく学習できていないということだと思います。

それに日本人は、プロダクトに対してのこだわりが強いという傾向があります。日本人に受け入れられるサービスを作れば、世界中で受け入れられるものができると思い、まずは日本でビジネスをスタートさせることに決めました。(エリック氏)



――世界進出も視野に

 私たちは、米国のベンチャーキャピタルなどから出資を受けています。そういう意味では、すでにグローバル企業です。今年中を目処に、日本語学習版「iKnow!」のサービスを開始したいと考えています。日本語は最も難しいとされる語学のひとつです。その日本語を効率よく勉強してもらうお手伝いをしたいと思います。また、英語を学習している日本人と、日本語を学習している外国人とで、「iKnow!」で新たなコミュニティが生まれるようにしたいです。それに、英語を学びたいというニーズは世界中にありますので、英語学習版「iKnow!」の海外展開もありえると思います。(アンドリュー氏)

――今後について、「iKnow! 3.0」の可能性は

 あらゆるものをオープンにしていきたいです。私たちは、人とのつながりの部分「ソーシャル」、PCやモバイルなど学習する場所を制限しない「プラットフォーム」、そして、今回のコンテンツにあたる「ラーニング」の部分をオープンにしました。これは、オープンにしないとユーザーの不満は溜まっていく、飽きられてしまうことを避けるために重要なことです。いつかは、学習エンジンもオープンにしたいと考えています。(エリック氏)

 オープンや共有という概念は、「ウェブ2.0」に代表される考えです。そういう意味も込めて、今回「2.0」という数字を使いました。もし、「iKnow! Ver 3.0」があるとするならば、カタチはわかりませんが、その時代にあった概念に沿って、ユーザーが一番満足してもらえる方法でサービスを提供していることだと思います。(マイケル長谷川氏)

【BCN・津江昭宏】