昨年の夏に入門機「α100」でデジタル一眼レフカメラ市場に“カメラメーカー”として本格参入したソニー。そのソニーが第2弾として11月9日に発売したのが中級機「α700」だ。有効1220万画素のCOMSの採用。ボディ内蔵の手ブレ補正機能など「α100」に搭載した機能に磨きをかけた。ソニーは「α700」でデジタル一眼レフ市場でどう戦うのか。担当者を直撃した。


●高画素CMOSを搭載し、徹底的なノイズ対策を施す

 「α100」はコニカミノルタのユーザーをはじめとする一定層から支持を集めた。しかし、ライバルメーカーが入門機をはじめとする幅広い機種を揃える中、「α100」1台だけでは市場の開拓に限界があったのは確か。“カメラメーカーのソニー”にとってラインアップ拡充はユーザー獲得のために焦眉の急だった。

 「α700」の商品企画を担当したソニー デジタルイメージング事業本部AMC事業部商品企画部の竹倉千保氏は「『α』を幅広いお客さんに買ってもらうためにもラインアップの充実は不可欠。そのため、『α700』はできるだけ早く開発を進めた」と話す。

 「α700」について竹倉氏は「センサー」「画像処理回路」「ボディ内手ブレ補正」が特徴だと話す。撮像素子は「α100」はCCDだったが、「α700」では新開発の有効1224万画素CMOSセンサー「Exmor(エクスモア)」を搭載した。

 Exmorは高画素だけではなく、ノイズ低減にも力が注がれている。アナログ信号をデジタル信号に変換する回路をセンサーに搭載。信号をセンサー上で全てデジタル化することでセンサーから画像処理回路に送る画像データの劣化を防いだ。



 さらに専用回路を使って信号の変換の前後でもノイズを抑える対策をとっている。信号変換はセンサーのカラム(列)ごとに行うことで、処理速度を高速化した。

 竹倉氏は「当社はCCDをはじめとするイメージセンサーのメーカー。他社にはない技術的な強みがある。『Exmor』は信号がキレイなうえ、電力消費も少ない」と自信を見せる。



 画像処理回路の「BIONZ(ビオンズ)」は、CMOSから送られてくるデジタル信号のクオリティを落とすことなく、速いスピードで処理できるのが持ち味。センサー、画像処理回路で低ノイズを追求したことで、最高ISO6400までの高感度撮影が可能になった。

●ボディ内手ブレ補正も向上、シャッター音にもこだわる

 「ユーザーからの評価が高い」(竹倉氏)という、ボディ内手ブレ補正は新開発の補正ユニットを搭載し、最大4段分と補正効果を向上させた。交換レンズに手ブレ補正機能を搭載するメーカーもあるが、竹倉氏は「レンズ補正では余計な機構がレンズに必要になる。レンズの性能を最大限に生かすためには構造はシンプルなほうが良い」とカメラに搭載するメリットを強調する。

 「α700」ではシャッター音にもこだわった。目指したのは「使って高級感のある音」(同)。竹倉氏ら開発チームはオーディオ事業部で音を分析する専門部署に依頼し、「心地いい」「キレがいい」「重い・軽い」などの項目でモニター調査を実施した。

 調査の結果、「心地よくて重さと軽さの中間」という音をユーザーが求めていることがわかった。「α700」ではミラーの上下する動きなどを調整することで、見つけ出したシャッター音を実現した。竹倉氏は「音のためにカメラを作ったわけではないが、『α700』の音は今後、ソニーのシャッター音の方向性を示すものになった」と話す。



●最大の特徴は690gの“軽さ”

 「センサー」「画像処理回路」「ボディ内手ブレ補正」を踏まえた上で、竹倉氏が最大のポイントと言うのが「カメラ本体の軽さ」だ。竹倉氏は「ユーザーにとって持ち歩いて使うカメラは軽いほうがいい。重いことは決して良いと思わない」と強調する。「α700」はカメラ本体の重量が700gを切ることを目標に開発を進めた。



 軽量化には軽い素材を使用することが必要だが、それでは耐久性が犠牲になる。そこで、「α700」では外装に軽量で強度に優れたマグネシウム合金、内部シャーシにジュラルミン並の強度をもつアルミ合金を組み合わせた。その結果、690gの軽さを実現。一方で高い堅牢性も両立させた。
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●テレビとの連携で新しい写真の楽しみ方を訴求

 「α700」がターゲットにするユーザーは明確だ。販売を担当するソニーマーケティング デジタルイメージングマーケティング部パーソナルイメージングMK課の松田時彦シニアマーケティングマネージャーは「既存のαユーザーはもちろん、『大きい』『重い』と、デジタル一眼レフを使いたいが尻込みしていた人を獲得していきたい」と話す。

 「高画質」「軽量」に加え、もう1つの柱が、「α700」と液晶テレビ「BRAVIA(ブラビア)」との連携。カメラメーカーにはない、「テレビ」という表示機器を持つ“電機メーカー”としてのソニーの強みを生かす戦略だ。

 「α700」は「HDMI端子」を搭載するため、ケーブル1本で簡単に高画質な写真を大型テレビに表示することができる。一方、最新のBRVIAにはα700の写真を最適な画質モードで表示する機能を搭載した。

 ただ、デジカメで撮影した写真はパソコンに取り込んで見たり、プリントするのが一般的。テレビで写真を楽しむことに魅力を感じるユーザーがどれだけいるか疑問は残る。しかし、松田マネージャーは「手応えはある」と自信を見せる。

 ソニーでは9-11月にかけて東京、大阪、名古屋など全国8か所で体験会を開催。会場では写真がケーブル1本ですぐに見ることとの利便性や、「大画面テレビで見ると、写真のボケ味やブレが一発で確認できますよ」というメリットをユーザーにアピールした。松田マネージャーは「実際にテレビを使って写真を見せるとお客さんの反応はよく、テレビで写真を見る人は増えてくる」と意気込む。

 



 さらに、α700とBRAVIAを搭載した大型トラックで全国の量販店を回る説明会「“α700”トラックキャラバン」も実施。カメラとテレビを連動する良さを量販店の店員に理解してもらうことで、その良さを薦めてもらい、ユーザーのすそ野を広げていく狙いだ。

●「α700」は腰を据えて売っていく

 松田マネージャーはα700の販売について「地味だがきめ細かく地に足がついた形でじわじわとやっていく」と話す。その言葉の裏には「α100」から得た教訓がある。

 「α100」は発売した06年7月のデジタル一眼レフのみを対象にした「BCNランキング」(カラーバリエーションは合算)の月次データでは、販売台数シェアが19.4%で2位を獲得。好調なスタートを切った。しかし、その勢いは続かなかった。

 『α100』はスタートダッシュが予想よりも良すぎた」と松田マネージャーは分析する。また、「カメラ単体では最初はユーザーが飛びつくが、販売が長続きしない。『α700』ではテレビなどと連携し、写真を楽しむシステムとしてお客さんに訴求することで息の長い製品にしていきたい」と話す。同時に、サポート体制やサービスセンターの拡充にも力を入れていく考えだ。



 松田マネージャーは「カメラメーカーとして戦うためにはラインアップだけでなく、アフターサービスも重要。それがお客さんの信頼感につながる。当社はそれが中途半端でお客さんに不満を抱かせていた。これからは少しずつだがサービス体制も充実させていく」と話す。

 ソニーでは「『α』のラインアップとアフターサービスの構築を3年かけて行う」(松田マネージャー)計画だ。カメラの品揃えでは今後、プロ向けのフラッグシップ機の発売も予定する。

 ただ、デジタル一眼レフ市場でソニーの挑戦は始まったばかり。「α700」で、安定した支持を獲得し、カメラメーカーとしての存在感を示すことができるかどうかが、ソニーのデジタル一眼レフ戦略の今後を占う試金石になりそうだ。(BCN・米山淳)


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